第15回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

教育講演

[EL3] Post Acute Care Syndromeの概念を科学する、そして実践する

2019年6月16日(日) 10:40 〜 11:50 第2会場 (3F 国際会議室)

演者:中村 謙介(日立総合病院救急集中治療科)
座長:藤野 智子(聖マリアンナ医科大学病院)

10:40 〜 11:50

[EL3] Post Acute Care Syndromeの概念を科学する、そして実践する

○中村 謙介1 (1. 日立総合病院 救急集中治療科)

キーワード:PICS、ICU-AW、PACS

 昨今、集中治療の進歩とともに救命率が向上し集中治療後の後遺症に目が向けられるようになり、身体能力の低下をICU-acquired weakness ICU-AWとし、認知機能低下や家族を含めたメンタルヘルスまでを包括してPost intensive care syndrome PICSとして捉える考え方が全世界的に普及し、ICU-AW/PICSを最小限にするため急性期から様々な介入や対策が各施設で行われるようになった。このICU-AW/PICSは年齢が強い危険因子になることがわかっており、高齢化社会日本では特に遭遇しやすく我々の問題意識も高かったといえるが、このような機能低下や障害がICU内でだけ発生しているわけではないことを皆様も痛感しているのではないだろうか。すなわち集中治療室に入らない救急患者でも(特に高齢者の場合)後遺症により転帰に難渋することがよくみられ、全国的に高次機能病院の運営をも圧迫している。PICS集中治療後症候群という形でICUでだけ対策するのではなく、今日本でこそ、救急医療全般による障害をPost-Acute Care Syndrome PACSとして捉え検討していくことが必要なのではないだろうか。実際にICU-AW/PICSとの戦いは救急医療の段階(ICU入室前)から始まっており、入院前の評価や救急医療介入の影響も検討しなくてはならない。現在はPICS提唱以前から考案されてきたABCDEバンドルに加えFGHまで拡大されたバンドル戦略が推奨されるようになっているが、このようなアプローチはICU外入院やICU退室後も考慮すべきであり、その実現と質の確保のためにはリハビリ科や栄養科などを含めた多職種連携は必須事項となる。さらに患者の評価はQOLや機能面など多岐にかつ長期に及ぶべきであり、ICU退室時だけでなく退院時、退院後180日あるいはそれ以上後日の評価も必要となり、間違いなく集中治療医やICU看護師だけで実現することはできない。このようにICU-AW/PICSの対策や研究のためにもPACSという概念をもって臨むことが重要であることをこの講演にて提案し、日立総合病院救命救急センターにおけるPACSに対する取り組み、RCTを含む積極的な研究活動について紹介したいと考える。