第15回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

[O1] 優秀演題

2019年6月15日(土) 10:40 〜 11:50 第5会場 (B2F リハーサル室)

座長:江川 幸二(神戸市看護大学),佐々木 吉子(東京医科歯科大学),榑松 久美子(北里大学病院),冨岡 小百合(大阪府立中河内救命救急センター)

10:40 〜 10:50

[O1-1] 急性期領域における専門看護師に求められるコンピテンシーに関する検討

○藤野 智子1、清村 紀子2、河合 桃代3 (1. 聖マリアンナ医科大学病院、2. 大分大学医学部看護学科、3. 帝京平成大学ヒューマンケア学部看護学科)

キーワード:専門看護師、コンピテンシー、急性期領域

【目的】
急性期領域の専門看護師のコンピテンシーを形成する要素を探求し、それぞれのコンピテンシー概念モデルを構築する。
【方法】
日本看護協会のホームページ上に氏名を公表し、関東圏内勤務の急性・重症患者看護専門看護師(以下CNS)をランダムに抽出し50名へ研究協力を求める往復はがきを送付した。CNSへのプレテスト後、研究の同意が得られたCNS10名に対して、研究者1名がMaclleland & Dailey(1972)による行動結果面接(Behavioral Event Interview,BEI)を参考に成功例と失敗例を各々1つ以上物語として語ってもらう半構成的面接を行った。面接内容を逐語録にし、CNSにどのようなコンピテンシーが備わっているかに着目して、コンピテンシー・ディクショナリー(Maclleland & Dailey1972/2016)を参考に分析した。
コンピテンシー・ディクショナリーは、21の代表的なコンピテンシーの群(以下クラスター)に分類され、一つのクラスターは-1~9 の尺度化されたコンピテンシー・レベルで構成される。クラスターの数(頻度)やコンピテンシー・レベルが仕事をするすぐれたパフォーマーにとっての重要さの程度を表すことを前提とする。
CNSの逐語録より、①コンピテンシーのクラスターを抽出、②コンピテンシー・レベルを見出し頻度として数え、分析した。分析結果の信憑性・真実性・信用性を担保するために、急性期分野が専門の共同研究者間で分析結果を相互に確認し精錬させた。
【倫理的配慮及び利益相反】
本研究への参加は自由意思であり中断も可能であること等を研究者が口頭と文書で説明し同意を得た。また、帝京平成大学研究倫理審査委員会の審査を経て「承認」を得て実施した(承認番号26-083)。本研究は、一般社団法人日本クリティカルケア看護学会から供与された奨学金(研究費)で行われ、利害関係について帝京平成大学利益相反委員会の審査と判定を受けている(番号26-162)。
【結果・考察】
面接は一人1回、平均時間は64.9分だった。研究に同意が得られたCNS10名のCNS取得後の平均年数は4.1年(0.5~11年)で、看護師としての臨床経験平均年数は16.4年(10~26年)であった。
語った事例は、CNSの6つの役割の中で「調整」が多く、次いで「実践」、「倫理調整」と「教育」が同数で、患者・家族のニーズを充足するために組織風土やシステムを段階的に変革した事例を成功例、他職種とのコミュニケーションに悩んだ事例を失敗事例と捉えていた。
コンピテンシー・レベルは、0が中間ポイントで平均的人材として位置づけられるが、0やマイナスはいなかった。CNS経験年数にかかわらず、コンピテンシーのレベルが高い人は、抽出されたレベルは全体的に高かった。
クラスターの抽出傾向は類似しており、21のクラスターの中でも「対人関係理解(IU)」「顧客サービス重視(CSO)」「インパクトと影響力(IMP)」がほとんどのCNSに認められた。
語られた事例の背景を考慮しながら、抽出されたクラスターの意味内容に従って構造について検討した結果、CNSは患者や看護師などチームとのラポールを築きながら、患者の心身の訴えという根底の問題に向き合っていた。また、患者の状態をよりよくするため、個別のケースに留めることなく、組織的な介入へと段階的に拡大していた。そこには「分析的思考(AT)」が働いており、「チームワークと協調(TW)」を基盤として現状を変革するなどの成果に結びつけていた。