第15回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

[O10] 早期リハビリテーション

2019年6月16日(日) 14:30 〜 15:30 第5会場 (B2F リハーサル室)

座長:山口 典子(長崎大学病院)

14:50 〜 15:00

[O10-3] 消化器外科手術を受けた高齢者に対する術後3日間の就寝前看護援助

○内山 真由美1、中村 惠子2 (1. 札幌医科大学附属病院 看護部、2. 札幌市立大学大学院 看護学研究科)

キーワード:高齢患者、就寝前、看護援助、術後せん妄

【目的】
 近年,医学・医療技術の進歩により,治療選択の幅は広がり,高齢者も侵襲の高い手術を選択できるようになった.術後早期の合併症には,後出血,無気肺,術後せん妄等がある.術後せん妄は高齢者に多くみられ,加齢とせん妄の発症には関連性がある.睡眠-覚醒周期のリズムを整え,回復を促すためには,昼から夜へ移行する時間帯で,巧みな就寝前の看護援助が必要となる.しかし,就寝前看護援助に関する先行研究は殆どなく,詳細は明らかにされていない.本研究は,高齢者の術後3日間の看護援助から,術後早期の合併症の予防に着目し,術後3日間の就寝前看護援助を明らかにすることを目的とした.
【方法】
 研究デザインは,手段的事例研究である.75歳以上の術前患者のうち,術後せん妄の3因子の各項目に1つ以上該当した者に対し,術当日~術後2日目までの期間,就寝前の時間帯に看護援助を行う者のうち,研究協力の同意を得た看護師を研究対象者とした.事例は,3事例とした.非介入型の参加観察法によりデータ収集をし,1事例毎にデータを時系列に整理し,その後に3事例を統合し,質的帰納的に分析をした.本研究は,A大学院看護学研究科倫理審査会の承認を得て実施した.
【結果】
 研究期間は2017年6月~2018年9月,データ収集期間は2017年8月~12月,該当患者3名,研究対象看護師22名であった.3事例を統合した結果,412コード,118サブカテゴリー,69カテゴリー,11コアカテゴリー,ニーズを満たすための看護援助,回復を促すための看護援助,であった.術当日は様々な苦痛を生じ,最も多くの看護援助を必要としていた.
 ニーズを満たすための看護援助は,≪呼吸を助ける≫≪排泄を助ける≫≪体位や身体の移動を助ける≫≪休息と睡眠を助ける≫≪体温が正常範囲内に保つのを助ける≫≪身体を清潔に保ち,身だしなみよく,また皮膚を保護するのを助ける≫≪環境の危険を避けるのを助け,また感染などの危険から守る≫≪意思を伝達し,欲求や気持ちを表現するのを助ける≫の8コアカテゴリーより構成された.
 また,回復を促すための看護援助は,ニーズを満たすための看護援助とは異なる性質をもち,≪苦痛を緩和する≫≪患者の安全を守る≫≪認知機能を助ける≫の3コアカテゴリーより構成された.
【考察】
 ニーズを満たすための看護援助は,Virginia Henderson(1960)の基本的看護の構成要素14項目のうち,身体的・精神的ニーズの看護援助8項目に相当した.全身状態の観察,輸液管理におけるモニタリングは高度な看護実践であり,術後の重症度や高齢患者の特性に応じ,細かい時間間隔で,濃厚に観察を行い,経時的変化を捉えるものであった.また,高齢患者に対する丁寧なコミュニケーションは,意思伝達を助け,異常の早期発見に役立つことや,認知機能の回復を図り,術後せん妄の発症を予防するためにも重要であった.コミュニケーションによる脳活性化や,活動量の増加に伴い,睡眠-覚醒リズムは整い,睡眠を得ることにより,術後の回復を促すことに繋がっていたことが示唆された.