第15回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

[O10] 早期リハビリテーション

2019年6月16日(日) 14:30 〜 15:30 第5会場 (B2F リハーサル室)

座長:山口 典子(長崎大学病院)

15:00 〜 15:10

[O10-4] A病院ICUの人工呼吸器装着患者への早期離床に対する看護師の思いや考え

○塩月 祐輝1、黒木 茂雄1、井野 朋美1 (1. 熊本赤十字病院)

キーワード:早期離床、人工呼吸器装着患者、ICU看護師

【はじめに】
 近年、入院早期から原疾患に対する治療と並行し、積極的に離床を促進することが推奨されている。A病院ICUにおいても2018年1月より独自に作成した人工呼吸装着患者の早期離床プロトコールを導入した。導入後の調査では、約7割の看護師がプロトコールを使用していると回答していたが、早期離床ができていると感じている看護師は約3割という結果であった。先行研究では早期離床による患者への効果は数多く報告されているが、人工呼吸装着患者の早期離床に対する看護師の思いや考えを明らかにしている研究は見当たらなかった。
【目的】
 A病院ICUの人工呼吸器装着患者の早期離床に対する看護師の思いや考えを明らかにすること。
【方法】
 研究デザイン:質的記述的研究
 研究対象:A病院ICUにおいて、看護実践ラダーⅢ以上取得しており、リーダー業務を行っている看護師
 データ収集期間:2018年8月~9月 
 データ収集方法および分析:研究同意が得られた9名を3グループに分け、半構成的グループインタビューを実施した。インタビュー内容は、対象者の許可を得て録音した。録音データから逐語録を作成、逐語録を繰り返し読み返し、研究目的に関連した文章を抽出しコード化した。意味内容の類似性に基づいてサブカテゴリーを抽出し、さらにカテゴリーを抽出した。
【倫理的配慮】
 研究対象者には研究目的・意義及びプライバシーの保護の保障、研究参加は自由意思であること、データ研究以外に使用しないことを口頭と書面で説明し、研究者所属施設の研究倫理審査委員会の承認を得た。
【結果】
 インタビュー時間は平均60分であった。分析から、28個のコード、13個のサブカテゴリーが抽出され、以下の4個のカテゴリーが抽出された。【早期離床の捉え方は看護師によって違う】のカテゴリーは、≪早期離床は、端座位や、立位などのベッドから離れることだと思う≫≪早期離床は、端坐位や立位になるプロセスも含まれると思う≫の他2個のサブカテゴリーで構成された。【早期離床に対して負の思いがある】は、≪早期離床に対して、自信がない≫他2個で構成された。【早期離床より優先させたいケアがある】は、≪早期離床より循環の安定が優先≫他3個で構成された。【ICUでは早期離床の困難さを感じている】は、≪患者の状態で早期離床に対しての困難さを感じている≫他1個で構成された。
【考察】
 【早期離床の捉え方は看護師によって違う】では、早期離床が出来ている、出来ていないかの看護師個々の認識の違いが生じていることが考えられ、早期離床の捉え方を統一することが重要と考えた。【早期離床に対して負の思いがある】は、ICUでの離床の実施は、患者の状態変化のリスクが伴うため躊躇すること、また端坐位からを離床と捉えているならば、安全性への不安が生じ、離床に対しての負の思いを助長することにつながると考えた。そのため、ヘッドアップや体位変換などの日常生活動作を離床として付与することで、離床に対する負の思いの軽減につながると考える。【早期離床より優先させたいケアがある】は、患者の状態によって求められるケアは変わってくる。優先度についてはその時の状況によって判断されるため、カンファレンスなどでケアについて議論することが必要である。【ICUでは早期離床の困難さを感じている】は、その要因として看護師のスキル不足が考えられ、またそれを補う教育やサポート体制が不足していることが関係していると考えられた。