2:20 PM - 2:30 PM
[O2-1] O2-1
Keywords:脳死下臓器移植、人工呼吸器の中止、看護師の思い、ドナー看護、家族看護
【目的】
看護師から得られたインタビューデータをもとに、法的脳死判定実施後、脳死下臓器提供に至らず人工呼吸器を中止した患者とその家族をケアした、一事例における看護師の思いについて明らかにする。
【方法】
本事例を経験した看護師で、①ドナー看護の実践に関わった者、②院内認定移植コーディネーター、③本事例の経験及び複数回の臓器移植患者の看護経験者、④プライマリー看護師、⑤担当看護師、⑥法的脳死判定時に介入を行った看護師、⑦家族ケアを実践した看護師のいずれか1つ以上を満たす者を研究対象者とし、2017年12月~2018年3月に半構成的インタビューによる調査を実施した。インタビューでは、1.対象者の基本属性、2.本事例を経験して、思い出されることや忘れられないこと、3.本事例を経験して、学んだこと、気づいたこと、4.本事例を経験して、困ったこと、辛かったこと、5.本事例を経験して、今後に反映させたいこと、6.その他、という内容を基本とし、データ収集を行った。さらに得られたデータはKrippendorffの内容分析を参考に分析を行った。なお、本研究は所属施設による倫理審査で承認を得るとともに、協力者には研究の目的と趣旨及びプライバシーの保護について具体的に書面と口頭にて説明し、同意を得たのちに実施した。
【結果】
1.研究対象者の概要:対象者は条件を満たした看護師4名であり、内1名は男性であった。臨床経験年数は7~34年(平均17.8年)、ICU経験年数は6~13年(平均8.8年)、臓器移植患者の看護経験回数は1~3例(平均2.3例)であった。
2.患者とその家族をケアした看護師の思いについては、157コード、37サブカテゴリー、【家族ケアの重要性を認識し、自身と置き換え、家族が希望する最期が迎えられることを望む】【人為的に人工呼吸器を止めるという忘れられない初めての死の経験をする】【自身の役割を認識した調整を図る】【法的脳死判定を臓器移植のひと過程と認識する一方で、臓器別提供者(ドナー)適応基準を疑問視する】【臓器移植に関わる看護師に対してのシステムの構築や精神的なサポート支援を希望する】【臓器移植を肯定的に捉え、臓器移植に対する考え方や死生観に変化が生じる】の6カテゴリーが抽出された。
【考察】
本研究の看護師が抱いた思いは、人工呼吸器を中止するという通常の看護ケアでは経験し得ない事例を経験しているため、人工呼吸器を中止した事に対して特別な思いを抱いていることが予測されたが、家族ケアや役割を認識した調整といった通常の終末期ケアと変わらない思いを抱いている事が考えられた。また、法的脳死判定実施後に臓器提供者(ドナー)適応基準に該当し人工呼吸器を中止しなければならないという臓器提供システムに疑問を抱く一方で、今後同様の事例が起きる事が懸念されるため、心理的サポート体制における取組みの検討が必要であると考える。
看護師から得られたインタビューデータをもとに、法的脳死判定実施後、脳死下臓器提供に至らず人工呼吸器を中止した患者とその家族をケアした、一事例における看護師の思いについて明らかにする。
【方法】
本事例を経験した看護師で、①ドナー看護の実践に関わった者、②院内認定移植コーディネーター、③本事例の経験及び複数回の臓器移植患者の看護経験者、④プライマリー看護師、⑤担当看護師、⑥法的脳死判定時に介入を行った看護師、⑦家族ケアを実践した看護師のいずれか1つ以上を満たす者を研究対象者とし、2017年12月~2018年3月に半構成的インタビューによる調査を実施した。インタビューでは、1.対象者の基本属性、2.本事例を経験して、思い出されることや忘れられないこと、3.本事例を経験して、学んだこと、気づいたこと、4.本事例を経験して、困ったこと、辛かったこと、5.本事例を経験して、今後に反映させたいこと、6.その他、という内容を基本とし、データ収集を行った。さらに得られたデータはKrippendorffの内容分析を参考に分析を行った。なお、本研究は所属施設による倫理審査で承認を得るとともに、協力者には研究の目的と趣旨及びプライバシーの保護について具体的に書面と口頭にて説明し、同意を得たのちに実施した。
【結果】
1.研究対象者の概要:対象者は条件を満たした看護師4名であり、内1名は男性であった。臨床経験年数は7~34年(平均17.8年)、ICU経験年数は6~13年(平均8.8年)、臓器移植患者の看護経験回数は1~3例(平均2.3例)であった。
2.患者とその家族をケアした看護師の思いについては、157コード、37サブカテゴリー、【家族ケアの重要性を認識し、自身と置き換え、家族が希望する最期が迎えられることを望む】【人為的に人工呼吸器を止めるという忘れられない初めての死の経験をする】【自身の役割を認識した調整を図る】【法的脳死判定を臓器移植のひと過程と認識する一方で、臓器別提供者(ドナー)適応基準を疑問視する】【臓器移植に関わる看護師に対してのシステムの構築や精神的なサポート支援を希望する】【臓器移植を肯定的に捉え、臓器移植に対する考え方や死生観に変化が生じる】の6カテゴリーが抽出された。
【考察】
本研究の看護師が抱いた思いは、人工呼吸器を中止するという通常の看護ケアでは経験し得ない事例を経験しているため、人工呼吸器を中止した事に対して特別な思いを抱いていることが予測されたが、家族ケアや役割を認識した調整といった通常の終末期ケアと変わらない思いを抱いている事が考えられた。また、法的脳死判定実施後に臓器提供者(ドナー)適応基準に該当し人工呼吸器を中止しなければならないという臓器提供システムに疑問を抱く一方で、今後同様の事例が起きる事が懸念されるため、心理的サポート体制における取組みの検討が必要であると考える。