3:10 PM - 3:20 PM
[O2-6] O2-6
Keywords:家族介入、家族看護、集中治療室
【目的】
集中治療室(以下、CICUとする)において患者の意思が確認出来ない場合、家族が代理意思決定を行うことが多い。病状が急性に変化していく患者家族は患者の病状理解をするとともに治療方針の選択に迫られる。今回、入院時より患者と家族への介入が十分に行えず後悔した症例を体験した。患者家族の言動を振り返り、行われるべきであった家族への介入について明らかにする。
【方法】
研究デザイン:質的事例研究
患者がCICUに入室していた期間のカルテから経過とIC内容を振り返った。医療者からの説明に対する家族の反応から家族がどのように理解していたのか抽出しカテゴリー化し、家族の心理を分析した。
研究対象:A氏、70歳台男性、妻と二人暮らし、長男は近所に在住 本人の意向:延命の希望なし、妻も同意
用語の定義:家族は、妻と長男のこと
経過:予定外来にて受診時、VTの診断にてCICU入院。入院当日、妻が面会に来た際には会話も可能な状態であった。長男には妻より「すぐに退院できるから」との連絡のみであった。3病日目にCICU退室し、カテーテルアブレーション治療・ICD植込み実施。10病日目、状態悪化しCICU再入室。IABP、PCPS、人工呼吸器管理するが状態改善せず死亡退院となった。
【倫理的配慮】
本研究で得られたデータは、個人が特定されないよう配慮し、院内研究倫理審査委員会の承認を得た。
【実際】
医療者からの説明に対する家族の反応を4つのカテゴリーに分類できた。①集中治療が家族に与えた影響:「もう治療を止めてもらうわけにはいきませんか?次から次ですもんね。もう治療は出来ないってはっきり言ってもらってもいいんです。」妻からは混乱している発言があった。②家族が医療者の説明をどう理解していたか:「本人はいつもの外来のつもりで来たら入院になっちゃったんですよね。こんなことになってしまって。」治療が必要であったことが理解されていなかった。③サポートシステム(家族、医療者)の把握、活用が出来ていたか:入院時、医師からの説明を聞いていたのは患者と妻のみであり、ICの時の妻の反応や理解度を看護師が直接的にアセスメントすることができなかった。しかし、面会時の妻の様子やコミュニケーションから、患者の病状理解に問題ないと判断し、長男への協力依頼や介入を行っていなかった。④不足していた関わり:妻から長男への説明内容の確認が行われていなかった。また、重症化するまでのICの場に看護師の立ち会いはなく、ベッドサイドで本人と妻のみにICが行われていた。
【考察】
平原氏はコンセンサス・ベースド・アプローチの重要性を述べている。しかし今回の症例において、入院初期から家族への介入が行えていなかったことにより、家族は患者の病状把握をできず、十分な説明を聞くことがないまま治療が優先された。入院初期から家族を含めたICの場を設け、情報提供、病状理解の確認、理解内容の修正が必要だったと考えられる。また、山勢1)氏は、効果的な家族援助を行うためには、家族の抱くニードに注目することが多いと述べている。家族は患者になされたことについて知りたいと思っているが、今回それは満たすことができていなかった。患者・家族が納得できる意思決定支援が行えるよう、入院時よりコンセンサス・ベースド・アプローチを積極的に行っていくことが課題である。
【引用文献】
1)山勢博彰.(2010).救急・重症患者と家族のための心のケア メディカ出版
集中治療室(以下、CICUとする)において患者の意思が確認出来ない場合、家族が代理意思決定を行うことが多い。病状が急性に変化していく患者家族は患者の病状理解をするとともに治療方針の選択に迫られる。今回、入院時より患者と家族への介入が十分に行えず後悔した症例を体験した。患者家族の言動を振り返り、行われるべきであった家族への介入について明らかにする。
【方法】
研究デザイン:質的事例研究
患者がCICUに入室していた期間のカルテから経過とIC内容を振り返った。医療者からの説明に対する家族の反応から家族がどのように理解していたのか抽出しカテゴリー化し、家族の心理を分析した。
研究対象:A氏、70歳台男性、妻と二人暮らし、長男は近所に在住 本人の意向:延命の希望なし、妻も同意
用語の定義:家族は、妻と長男のこと
経過:予定外来にて受診時、VTの診断にてCICU入院。入院当日、妻が面会に来た際には会話も可能な状態であった。長男には妻より「すぐに退院できるから」との連絡のみであった。3病日目にCICU退室し、カテーテルアブレーション治療・ICD植込み実施。10病日目、状態悪化しCICU再入室。IABP、PCPS、人工呼吸器管理するが状態改善せず死亡退院となった。
【倫理的配慮】
本研究で得られたデータは、個人が特定されないよう配慮し、院内研究倫理審査委員会の承認を得た。
【実際】
医療者からの説明に対する家族の反応を4つのカテゴリーに分類できた。①集中治療が家族に与えた影響:「もう治療を止めてもらうわけにはいきませんか?次から次ですもんね。もう治療は出来ないってはっきり言ってもらってもいいんです。」妻からは混乱している発言があった。②家族が医療者の説明をどう理解していたか:「本人はいつもの外来のつもりで来たら入院になっちゃったんですよね。こんなことになってしまって。」治療が必要であったことが理解されていなかった。③サポートシステム(家族、医療者)の把握、活用が出来ていたか:入院時、医師からの説明を聞いていたのは患者と妻のみであり、ICの時の妻の反応や理解度を看護師が直接的にアセスメントすることができなかった。しかし、面会時の妻の様子やコミュニケーションから、患者の病状理解に問題ないと判断し、長男への協力依頼や介入を行っていなかった。④不足していた関わり:妻から長男への説明内容の確認が行われていなかった。また、重症化するまでのICの場に看護師の立ち会いはなく、ベッドサイドで本人と妻のみにICが行われていた。
【考察】
平原氏はコンセンサス・ベースド・アプローチの重要性を述べている。しかし今回の症例において、入院初期から家族への介入が行えていなかったことにより、家族は患者の病状把握をできず、十分な説明を聞くことがないまま治療が優先された。入院初期から家族を含めたICの場を設け、情報提供、病状理解の確認、理解内容の修正が必要だったと考えられる。また、山勢1)氏は、効果的な家族援助を行うためには、家族の抱くニードに注目することが多いと述べている。家族は患者になされたことについて知りたいと思っているが、今回それは満たすことができていなかった。患者・家族が納得できる意思決定支援が行えるよう、入院時よりコンセンサス・ベースド・アプローチを積極的に行っていくことが課題である。
【引用文献】
1)山勢博彰.(2010).救急・重症患者と家族のための心のケア メディカ出版