3:30 PM - 3:40 PM
[O4-1] O4-1
Keywords:腹臥位、人工呼吸、体位変換
【目的】
近年、重症呼吸不全患者において腹臥位療法の有効性が報告されており、長時間腹臥位を適応することが生命予後を改善すると報告されている。腹臥位への体位変換には多数の人員を必要とし、チューブトラブルや褥瘡発生など有害事象のリスクを伴う。A病院では、2017年度集中治療室に入室した患者のうち30名、延88回の腹臥位療法を実施した。腹臥位への体位変換は医療者5〜6名で患者を持ち上げて実施していた。そのうち9%に皮膚トラブルが発生し、1%にチューブトラブルが発生した。そこで、皿田ら(2017)の報告を参考に、安全かつ簡便な腹臥位への体位変換方法としてスライドシートを用いた方法を手順化し導入したため、その結果を報告する。
【方法】
1)皿田ら(2017)の報告を参考に、スライドシート(トレイージー、東レ®️)を用いた腹臥位への体位変換の手順を作成した。
2)ICU看護師全員を対象に、スライドシートの使用方法について体験型学習会を実施した。
3)2018年12月より、作成した手順を用いて腹臥位への体位変換を開始した。
【倫理的配慮】
データ活用について所属施設の倫理審査委員会からの承認を受け実施した(承認番号1555)。また、対象者にはオプトアウトの機会を保障し対象施設集中治療部ホームページに公開した。
【結果】
1)スライドシート、バスタオル、防水シーツ、除圧用枕を用いて、最低必要人数3名(医師1名、看護師2名)以上での腹臥位への体位変換の手順を作成した。1回の腹臥位時間を約4時間とし、必要に応じて反復して実施すること、腹臥位中の除圧方法を腹臥位実施手順に加えてICU専任医師、看護師に周知した。
2)スライドシートを用いた体位変換の体験型学習会を実施し、ICU看護師全員が患者、援助者を体験した。
3)作成した手順導入後、腹臥位療法を実施した1事例を示す。
70代男性。腹部大動脈瘤術後、肺炎のため再挿管し、人工呼吸管理、持続的血液濾過透析(CHDF)が施行された。再挿管翌日から腹臥位療法を開始した。挿入ルートは、挿管チューブ、中心静脈カテーテル、動脈ライン、CHDF用ブラッドアクセスカテーテル、経鼻胃管チューブ、末梢静脈ルート、尿道カテーテルが留置されていた。医師、看護師、臨床工学技師の計4名での腹臥位への体位変換を実施した。人工呼吸管理6日間のうち4日間、合計4回、平均4.6時間/日の腹臥位を実施した。体位変換の所要時間は約5分であった。腹臥位療法実施に伴う皮膚トラブル、チューブトラブルの発生はなかった。患者は5日目に抜管し、人工呼吸器離脱に至った。
【考察】
スライドシートを用いた手順により、少ない人員で腹臥位への体位変換が可能となった。事例において有害事象はなく、多職種が協力し安全に腹臥位療法を実施できる手順であると考えられる。今回の事例では長時間の腹臥位療法には至っていない。今後は、患者状態に応じて多職種で協議し、反復して体位変換を取り入れ腹臥位時間の延長につなげ、腹臥位療法の安全性、有効性についてさらなるデータ蓄積を行っていくことが課題である。
近年、重症呼吸不全患者において腹臥位療法の有効性が報告されており、長時間腹臥位を適応することが生命予後を改善すると報告されている。腹臥位への体位変換には多数の人員を必要とし、チューブトラブルや褥瘡発生など有害事象のリスクを伴う。A病院では、2017年度集中治療室に入室した患者のうち30名、延88回の腹臥位療法を実施した。腹臥位への体位変換は医療者5〜6名で患者を持ち上げて実施していた。そのうち9%に皮膚トラブルが発生し、1%にチューブトラブルが発生した。そこで、皿田ら(2017)の報告を参考に、安全かつ簡便な腹臥位への体位変換方法としてスライドシートを用いた方法を手順化し導入したため、その結果を報告する。
【方法】
1)皿田ら(2017)の報告を参考に、スライドシート(トレイージー、東レ®️)を用いた腹臥位への体位変換の手順を作成した。
2)ICU看護師全員を対象に、スライドシートの使用方法について体験型学習会を実施した。
3)2018年12月より、作成した手順を用いて腹臥位への体位変換を開始した。
【倫理的配慮】
データ活用について所属施設の倫理審査委員会からの承認を受け実施した(承認番号1555)。また、対象者にはオプトアウトの機会を保障し対象施設集中治療部ホームページに公開した。
【結果】
1)スライドシート、バスタオル、防水シーツ、除圧用枕を用いて、最低必要人数3名(医師1名、看護師2名)以上での腹臥位への体位変換の手順を作成した。1回の腹臥位時間を約4時間とし、必要に応じて反復して実施すること、腹臥位中の除圧方法を腹臥位実施手順に加えてICU専任医師、看護師に周知した。
2)スライドシートを用いた体位変換の体験型学習会を実施し、ICU看護師全員が患者、援助者を体験した。
3)作成した手順導入後、腹臥位療法を実施した1事例を示す。
70代男性。腹部大動脈瘤術後、肺炎のため再挿管し、人工呼吸管理、持続的血液濾過透析(CHDF)が施行された。再挿管翌日から腹臥位療法を開始した。挿入ルートは、挿管チューブ、中心静脈カテーテル、動脈ライン、CHDF用ブラッドアクセスカテーテル、経鼻胃管チューブ、末梢静脈ルート、尿道カテーテルが留置されていた。医師、看護師、臨床工学技師の計4名での腹臥位への体位変換を実施した。人工呼吸管理6日間のうち4日間、合計4回、平均4.6時間/日の腹臥位を実施した。体位変換の所要時間は約5分であった。腹臥位療法実施に伴う皮膚トラブル、チューブトラブルの発生はなかった。患者は5日目に抜管し、人工呼吸器離脱に至った。
【考察】
スライドシートを用いた手順により、少ない人員で腹臥位への体位変換が可能となった。事例において有害事象はなく、多職種が協力し安全に腹臥位療法を実施できる手順であると考えられる。今回の事例では長時間の腹臥位療法には至っていない。今後は、患者状態に応じて多職種で協議し、反復して体位変換を取り入れ腹臥位時間の延長につなげ、腹臥位療法の安全性、有効性についてさらなるデータ蓄積を行っていくことが課題である。