3:40 PM - 3:50 PM
[O4-2] O4-2
Keywords:人工呼吸器離脱困難、PICS
【はじめに】
近年、重症疾患に対する病態の理解や治療の進歩により、ICUでの救命率が著しく向上する中、生存患者の長期的なQOLや予後に関心が向けられるようになった。そのような背景で提唱された集中治療後症候群(以下、PICS)は、ICU在室中あるいは退院後に生じる運動機能障害、認知機能障害、精神障害であり、長期予後に影響を与えるとされている。今回、ICU滞在中よりPICSの症状を呈し、人工呼吸器離脱困難となっていた患者の離脱に向けた取り組みを経験したため報告する。
【倫理的配慮】本研究は所属施設の研究倫理審査委員会の承認を得た上で実施した。
【事例】
A氏40代男性。肺結核の診断で入院後、第26病日喀痰によって窒息しCPAとなり、ICUへ入室した。敗血症性ショックを合併し、高用量カテコラミン投与及びCHDFが必要な状態で施行、副腎不全もありステロイド投与も行われた。その後徐々に状態は安定し意識レベル改善を認めたが、両側肺に班状影・粒状影がびまん性に散在し、空洞内部に液体貯留も認めて、更に、入院前からの食思不振及び偏食により低栄養状態(身長170cm、体重48.7kg、Alb2.1g/dL)であったことに加え、ICU入室後虚血性腸炎による下痢を繰り返し、栄養摂取がなかなか進まずに低栄養状態が長期に続いている状態であり、四肢の筋力低下も著しかった。また、第40病日を過ぎた辺りから不安症状が強くなり、長期陰圧室内滞在によるストレス・不眠も重なって抑うつ的な発言もみられた。また、窒息を経験したことから急性ストレス障害の症状も出現し、痰が貯留した時などパニック発作を頻回に繰り返していた。このように様々な要因が重なって人工呼吸器離脱困難を呈しており、多職種チームアプローチによる離脱を目指した介入を開始した。介入したチームメンバーは医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、NST、リエゾンチーム、RSTであった。看護師はプライマリーチームを立ち上げ各職種との連携を行い、多職種カンファレンスにてチームで患者の目標を共有した。そのうえで、運動機能障害に対しては日々のリハビリプランを立案し栄養内容も見直し、栄養状態の改善を目指しながら筋力増強に向けた取り組みを行い、呼吸リハビリテーションを実施しながら段階的な人工呼吸器離脱を進めていった。また精神症状に対しては、抗精神病薬の調整を行いながら、日々の睡眠が確保できるよう睡眠剤の調整にも努め、A氏の気分転換が図れるようポータブル人工呼吸器を使用した散歩を企画したり、パニック発作時の対応をスタッフ全員で共有しA氏が安心できる環境を整えた。その結果PICSの症状も軽快し、第179病日に人工呼吸器を離脱することができた。
【考察】
A氏は敗血症性ショックによる多臓器不全、長期人工呼吸管理、長期のステロイド使用などPICSのリスク因子が多く、それらが複合的な要因となってPICS症状を呈したと考えられる。更に窒息からCPAとなったことが急性ストレス障害の症状を引き起こし、精神症状のコントロールにも難渋した。今回多職種チームアプローチにより、リハビリテーションを積極的に行い、栄養状態の改善に努め、精神症状のコントロールを行ったことが最終的に人工呼吸器離脱につながったと考えられる。本事例ではPICSという視点から人工呼吸器離脱過程を振り返ったが、今後も重症患者の救命率が高まっていくなかでPICSの患者は増えていくことが予測される。そのため、PICS患者のリスク因子を把握し、早期から予防に努めることが重要であるといえる。
近年、重症疾患に対する病態の理解や治療の進歩により、ICUでの救命率が著しく向上する中、生存患者の長期的なQOLや予後に関心が向けられるようになった。そのような背景で提唱された集中治療後症候群(以下、PICS)は、ICU在室中あるいは退院後に生じる運動機能障害、認知機能障害、精神障害であり、長期予後に影響を与えるとされている。今回、ICU滞在中よりPICSの症状を呈し、人工呼吸器離脱困難となっていた患者の離脱に向けた取り組みを経験したため報告する。
【倫理的配慮】本研究は所属施設の研究倫理審査委員会の承認を得た上で実施した。
【事例】
A氏40代男性。肺結核の診断で入院後、第26病日喀痰によって窒息しCPAとなり、ICUへ入室した。敗血症性ショックを合併し、高用量カテコラミン投与及びCHDFが必要な状態で施行、副腎不全もありステロイド投与も行われた。その後徐々に状態は安定し意識レベル改善を認めたが、両側肺に班状影・粒状影がびまん性に散在し、空洞内部に液体貯留も認めて、更に、入院前からの食思不振及び偏食により低栄養状態(身長170cm、体重48.7kg、Alb2.1g/dL)であったことに加え、ICU入室後虚血性腸炎による下痢を繰り返し、栄養摂取がなかなか進まずに低栄養状態が長期に続いている状態であり、四肢の筋力低下も著しかった。また、第40病日を過ぎた辺りから不安症状が強くなり、長期陰圧室内滞在によるストレス・不眠も重なって抑うつ的な発言もみられた。また、窒息を経験したことから急性ストレス障害の症状も出現し、痰が貯留した時などパニック発作を頻回に繰り返していた。このように様々な要因が重なって人工呼吸器離脱困難を呈しており、多職種チームアプローチによる離脱を目指した介入を開始した。介入したチームメンバーは医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、NST、リエゾンチーム、RSTであった。看護師はプライマリーチームを立ち上げ各職種との連携を行い、多職種カンファレンスにてチームで患者の目標を共有した。そのうえで、運動機能障害に対しては日々のリハビリプランを立案し栄養内容も見直し、栄養状態の改善を目指しながら筋力増強に向けた取り組みを行い、呼吸リハビリテーションを実施しながら段階的な人工呼吸器離脱を進めていった。また精神症状に対しては、抗精神病薬の調整を行いながら、日々の睡眠が確保できるよう睡眠剤の調整にも努め、A氏の気分転換が図れるようポータブル人工呼吸器を使用した散歩を企画したり、パニック発作時の対応をスタッフ全員で共有しA氏が安心できる環境を整えた。その結果PICSの症状も軽快し、第179病日に人工呼吸器を離脱することができた。
【考察】
A氏は敗血症性ショックによる多臓器不全、長期人工呼吸管理、長期のステロイド使用などPICSのリスク因子が多く、それらが複合的な要因となってPICS症状を呈したと考えられる。更に窒息からCPAとなったことが急性ストレス障害の症状を引き起こし、精神症状のコントロールにも難渋した。今回多職種チームアプローチにより、リハビリテーションを積極的に行い、栄養状態の改善に努め、精神症状のコントロールを行ったことが最終的に人工呼吸器離脱につながったと考えられる。本事例ではPICSという視点から人工呼吸器離脱過程を振り返ったが、今後も重症患者の救命率が高まっていくなかでPICSの患者は増えていくことが予測される。そのため、PICS患者のリスク因子を把握し、早期から予防に努めることが重要であるといえる。