第15回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

[O4] 呼吸・循環2

2019年6月15日(土) 15:30 〜 16:30 第5会場 (B2F リハーサル室)

座長:芝田 香織(大分大学医学部附属病院)

15:50 〜 16:00

[O4-3] ICUにおける非侵襲的陽圧換気装着患者の調整行動

○石川 祐樹1、大川 宣容2 (1. 独立行政法人労働者健康安全機構 香川労災病院 ICU、2. 高知県立大学 看護学部)

キーワード:呼吸管理、NPPV

【背景】
 急性呼吸不全に対するNPPVによる治療には、患者の協力が不可欠であり、積極的な鎮静は行わず患者の意識が保たれていることが多い。NPPV装着には圧迫感や口渇などの不快感を伴うことが報告されており、患者はその不快感を和らげようと調整行動をとっていると考えた。患者の調整行動を理解することで、患者の努力を支援するケアを考案することへつながると考えた。
【目的】
 本研究は、ICUにおけるNPPV装着患者の調整行動を明らかにし、クリティカルな状況にあるNPPV装着患者の理解を基盤とした看護実践への示唆を得ることが目的である。
【方法】
 ICUに入室しNPPVを装着した患者4名を対象に、半構成的面接法を用いて、質的記述的研究を行った。
 なお、本研究における調整行動とは、「状況を認知し、複数の物事から行動を選択・実施し、自分の行動の評価を行いながら、自分自身を整えていくこと」と定義した。
 研究協力者には自由意思の尊重や研究協力の取り消し方法、得られたデータは個人が特定されないようアルファベットで記載すること、諾否によって不利益を被らないこと、研究を受けることで心身へ負担が生じる可能性があることや得られる利益について説明し、倫理的配慮を行ったうえで研究の同意を得た。なお、本研究は、高知県立大学研究倫理委員会および、研究協力施設の倫理委員会の承認を得て実施した。
【結果】
 研究協力者はすべて男性であり、年齢は50歳代から80歳代、NPPV装着期間は1名不明であるが他3名が約1日から3日間であった。各研究協力者の語りから得られたコードを分析し、15のサブカテゴリーを抽出した。さらにサブカテゴリーを分析し、ICUにおけるNPPV装着患者の調整行動として、【NPPV装着による自分の変化に気付く】、【医療者の対応から自分なりに推測する】、【今は苦痛や困難を凌ぐ】、【限られた選択肢の中で行動する】、【自尊心の揺らぎに気付く】の5つのカテゴリーが抽出された。
 患者は、NPPV装着により不快感や自覚症状の改善など自分の変化に気付き、医療者の対応から自分の体調や療養環境を推測し、今後自分に起こる可能性のある事柄や、行動の見通しを立てて行動を選んでいた。また、自分の行動に対する医療者の反応から自分なりに状況を考え、治療と人としての尊厳の間で葛藤しながらも、治療や環境に自分が納得できる理由を見出すことにより不快感を背負い込み、その場をやり過ごしていた。
 ICUにおけるNPPV装着患者の調整行動とは、【NPPVの装着による自分の変化に気付き】、それをきっかけに【医療者の対応から自分なりに推測する】ことで状況を理解し見通しを立て、命の危機やベッド上安静などの制限の中で【(限られた選択肢の中で)行動する】ことや、【自尊心の揺らぎに気付き】、治療と人間性の尊重の間で葛藤しながらも、自分が納得できる理由を付けることで【今は苦痛や困難を凌ぐ】という自分を整える行動であることが明らかになった。
【考察】
 ICUにおけるNPPV装着患者は、自分の変化に気付き、治療・環境に意味や理由を考えることで納得し、不快なことに耐えられるように自分を整えていることが考えられた。また、患者は、自分を脅かす変化に対し、状況を好転しようと主体的に行動した結果、看護師やアラームにより行動が中断されることを経験していたが、自分の心の中でバランスを取るといった、自分ができることを行っていたと考えられた。ICU看護師は、患者の表情や言動から納得の査定をするだけでなく、患者の納得までのプロセスを理解することで、患者自身の意思を尊重し、人としての尊厳を守ることができることが示唆された。