4:50 PM - 5:00 PM
[O6-1] O6-1
Keywords:SAT、鎮静剤、RASS
【背景・目的】
2015年に「人工呼吸器離脱に関する3学会合同プロトコル」で自発覚醒トライアル(以下SAT)、自発呼吸トライアル(SBT)が発表された。A総合病院では、2017年8月にSATを導入した。これまでSATに関連した人工呼吸期間、ICU在室日数の報告はあるが、鎮静剤・鎮痛剤の使用量に関する具体的な先行文献はなかった。本研究の目的は、SAT導入前後の鎮静剤・鎮痛剤の使用量と鎮静深度の変化を明らかにする。
【方法】
期間:2016年4月1日から2018年11月30日
対象:上記期間にA総合病院のICUに入室し、人工呼吸管理を行った患者。ただし以下の患者については除外した。1)14歳以下2)死亡退院3)蘇生に成功した心肺停止患者4)人工呼吸管理15日以上の患者。
調査項目:性別、年齢、手術の有無、RASS、入退院情報、人工呼吸期間、鎮静剤・鎮痛剤(ミダゾラム、プロポフォール、プレセデックス、フェンタニル)の平均使用日数、平均使用量(mg/kg/day、μg/kg/day)
分析方法:SAT導入前群、SAT導入後群の2群に分類し、2群間の患者属性の比較を行った。2群間の鎮静剤・鎮痛剤の使用日数と使用患者数、また使用量の比較を行った。RASSは、人工呼吸管理中で患者一人当たりの最頻値を代表値とし、RASS-5から-3を深鎮静、-2から+1を浅鎮静として評価した。日勤帯のSAT導入前後、夜勤帯のSAT導入前後のRASSの比較を行い、さらにSAT導入前群と後群でそれぞれ日勤帯と夜勤帯のRASSの比較を行った。
以上は、マン・ホイットニー のU検定、χ²検定を用いて有意水準5%で分析を行った。
【倫理的配慮】
A総合病院の臨床研究倫理委員会の審査の結果、承認を得た(認証番号2017-44)。データは匿名加工情報等として扱った。
【結果】
SAT導入前群135名、後群169名であり、対象の属性に有意差はなかった。
鎮静剤・鎮痛剤使用日数は、SAT導入前後で有意差はなかった。
鎮静剤・鎮痛剤使用患者数は、プレセデックス使用患者数が、SAT導入前群106名、後群153名で有意差(p=0.003)があった。またプレセデックス平均使用量においても、SAT導入前群9.0±4.9(μg/kg/day)、後群7.8±4.4(μg/kg/day)であり有意差(p=0.04)があった。
RASSは、日勤帯、夜勤帯共にSAT導入前後で有意差はなかった。SAT導入前群の日勤帯と夜勤帯のRASSの比較では有意差はなかったが、SAT導入後群の日勤帯と夜勤帯のRASSの比較では有意差(p=0.005)があった。
【考察】
「日本版・集中治療室における成人重症患者に対する痛み・不穏・せん妄管理のための臨床ガイドライン」では、鎮静薬使用を必要最小限にする鎮静管理が推奨されている。SAT導入を機に、鎮静剤中断や減量までの手順が明確に標準化されたことに伴い、少ない鎮静剤の投与量で鎮静深度を保つことができたと考えられる。
また、SAT導入後の日勤帯と夜勤帯のRASSに有意差があった。これは、人工呼吸管理下でも生理的な日内変動に近づける働きかけをすることによって、日勤帯と夜勤帯の鎮静深度に差がついたと考えられる。
浅鎮静は、人工呼吸管理下でのコミュニケーションを可能にし、早期リハビリテーションやせん妄予防にも繋がる。今後は、現行の自発呼吸トライアル(SBT)プロトコルをチームで介入し、人工呼吸期間の短縮に向けた積極的な取り組みが必要である。
2015年に「人工呼吸器離脱に関する3学会合同プロトコル」で自発覚醒トライアル(以下SAT)、自発呼吸トライアル(SBT)が発表された。A総合病院では、2017年8月にSATを導入した。これまでSATに関連した人工呼吸期間、ICU在室日数の報告はあるが、鎮静剤・鎮痛剤の使用量に関する具体的な先行文献はなかった。本研究の目的は、SAT導入前後の鎮静剤・鎮痛剤の使用量と鎮静深度の変化を明らかにする。
【方法】
期間:2016年4月1日から2018年11月30日
対象:上記期間にA総合病院のICUに入室し、人工呼吸管理を行った患者。ただし以下の患者については除外した。1)14歳以下2)死亡退院3)蘇生に成功した心肺停止患者4)人工呼吸管理15日以上の患者。
調査項目:性別、年齢、手術の有無、RASS、入退院情報、人工呼吸期間、鎮静剤・鎮痛剤(ミダゾラム、プロポフォール、プレセデックス、フェンタニル)の平均使用日数、平均使用量(mg/kg/day、μg/kg/day)
分析方法:SAT導入前群、SAT導入後群の2群に分類し、2群間の患者属性の比較を行った。2群間の鎮静剤・鎮痛剤の使用日数と使用患者数、また使用量の比較を行った。RASSは、人工呼吸管理中で患者一人当たりの最頻値を代表値とし、RASS-5から-3を深鎮静、-2から+1を浅鎮静として評価した。日勤帯のSAT導入前後、夜勤帯のSAT導入前後のRASSの比較を行い、さらにSAT導入前群と後群でそれぞれ日勤帯と夜勤帯のRASSの比較を行った。
以上は、マン・ホイットニー のU検定、χ²検定を用いて有意水準5%で分析を行った。
【倫理的配慮】
A総合病院の臨床研究倫理委員会の審査の結果、承認を得た(認証番号2017-44)。データは匿名加工情報等として扱った。
【結果】
SAT導入前群135名、後群169名であり、対象の属性に有意差はなかった。
鎮静剤・鎮痛剤使用日数は、SAT導入前後で有意差はなかった。
鎮静剤・鎮痛剤使用患者数は、プレセデックス使用患者数が、SAT導入前群106名、後群153名で有意差(p=0.003)があった。またプレセデックス平均使用量においても、SAT導入前群9.0±4.9(μg/kg/day)、後群7.8±4.4(μg/kg/day)であり有意差(p=0.04)があった。
RASSは、日勤帯、夜勤帯共にSAT導入前後で有意差はなかった。SAT導入前群の日勤帯と夜勤帯のRASSの比較では有意差はなかったが、SAT導入後群の日勤帯と夜勤帯のRASSの比較では有意差(p=0.005)があった。
【考察】
「日本版・集中治療室における成人重症患者に対する痛み・不穏・せん妄管理のための臨床ガイドライン」では、鎮静薬使用を必要最小限にする鎮静管理が推奨されている。SAT導入を機に、鎮静剤中断や減量までの手順が明確に標準化されたことに伴い、少ない鎮静剤の投与量で鎮静深度を保つことができたと考えられる。
また、SAT導入後の日勤帯と夜勤帯のRASSに有意差があった。これは、人工呼吸管理下でも生理的な日内変動に近づける働きかけをすることによって、日勤帯と夜勤帯の鎮静深度に差がついたと考えられる。
浅鎮静は、人工呼吸管理下でのコミュニケーションを可能にし、早期リハビリテーションやせん妄予防にも繋がる。今後は、現行の自発呼吸トライアル(SBT)プロトコルをチームで介入し、人工呼吸期間の短縮に向けた積極的な取り組みが必要である。