第15回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

[O6] 鎮痛・鎮静・せん妄2

2019年6月15日(土) 16:50 〜 18:00 第3会場 (3F 小会議室31)

座長:丸林 美代子(浜の町病院)

17:00 〜 17:10

[O6-3] 鎮痛・鎮静評価尺度の統一と鎮痛・鎮静プロトコールの使用に関する看護師の認識

○富岡 靖友1、東辻 朝彦2 (1. 綾瀬循環器病院、2. 千葉大学大学院 看護学研究科博士前期課程)

キーワード:鎮痛・鎮静、術後疼痛管理、プロトコール、看護師

【序論】
 
術後疼痛は術後患者が直面する苦痛の1つで、鎮静管理は患者の安寧に直接影響を与える医療行為であり術後ケアを行う看護師にとって大きな課題である。しかし集中治療における鎮痛剤使用頻度が少なく、過鎮静管理になりやすいという現状がある。患者の苦痛除去には看護師を始めとした医療者の意識が重要となるため、鎮痛・鎮静プロトコールの新規導入に関する看護師の認識を明らかにする事を目的として調査を実施した。
目的
 鎮痛・鎮静評価尺度の統一と、鎮痛・鎮静プロトコールの使用に関連した、看護師の鎮痛・鎮静管理に対する認識を明らかにする。
【方法】
 
データ収集:A病院のオープンICUで働く看護師に対して「鎮痛・鎮静プロトコール」に関するアンケートを実施。分析:質的帰納的分析。回答結果を質問項目毎にコード化し、類似するコードをサブカテゴリ―としてまとめ、サブカテゴリ―の類似性に基づきカテゴリーを抽出した。
【倫理的配慮】
 
本研究は対象施設の病院長および看護部長に許可を得て実施した。
結果】
 
回答者は26人(回答率100%)。平均看護師歴11.6年、クリティカル領域平均経験年数は8年だった。疼痛評価尺度を使用した患者の疼痛評価に対する認識という項目は、【客観的な指標である】、【自分の看護実践能力の発展】、【効果的だとは思わない】、【部分的な困難さを感じる】、鎮痛・鎮静プロトコールを使用した疼痛管理に対する認識という項目は、【患者管理に有効である】、【多職種コミュニケーションの促進】、【鎮痛・鎮静に対する看護師の意識の発展】、【部分的な困難さを感じる】、鎮痛・鎮静プロトコールを使用した疼痛管理があなたの看護にもたらした影響という項目は、【鎮痛・鎮静の意識と実践の向上】、【統一した医療提供ができる】、【看護の時間が確保できる】、【看護が疎かになる】、【統一性が欠如することがある】のカテゴリーに分類された。
【考察】
 
疼痛評価尺度による評価を開始し評価に統一性と客観性が生まれ、それが簡易的に評価でき、分かりやすい記録や申し送りにも繋がったと思われる。また疼痛への認識が向上し、新たな視点で評価をできるようになったと感じていた。評価をルーチン化することで、疼痛管理の有用性・必要性を感じることができた。しかし患者本人の希望を重視した看護実践や疼痛評価尺度の理解の欠如により部分的な困難さも感じており使用方法に関する教育上の課題がある。鎮痛・鎮静剤投与方法の指標となるプロトコールの存在は、オープンICUで緊急手術が多く主治医の指示確認がすぐにできないといった背景において、指示系統に関する悩みや不安を低減させると認識されていた。これは患者にとっての有用性だけでなく、看護師の職業意欲や満足度の向上にも繫がる可能性を持っているといえる。また医師の指示の明確化・統一化が図れ、多職種間のコミュニケーションも促進された。プロトコールは看護師の鎮痛・鎮静に対する正しい認識への手助けと、鎮痛・鎮静に対する意識の発展に繋がり、経験年数に関わらず鎮痛・鎮静に肯定的影響を与えると考えられる。プロトコールの存在は、円滑な鎮痛・鎮静の実施につながり、さらに看護の時間が確保できるという結果を導き、プロトコールの使用が副次的にも看護の質の向上に繋がることが示唆された。一方で個々の患者による効果の違いや逸脱時の対応、看護師の経験や知識の差により部分的な困難さや、統一性が欠如するという側面もみられた。今後は学習会を定期的に実施し、確実な知識の向上を図れる教育体制の確立と、現在のプロトコールの妥当性の検討が必要であると考える。