5:20 PM - 5:30 PM
[O6-5] O6-5
Keywords:人工呼吸器、妄想的記憶、対処行動
【目的】
集中治療後に生じる不安やうつ、心的外傷後ストレス障害などのメンタルヘルスの障害は、集中治療中の体験や記憶などが関係しており、なかでも妄想的記憶がメンタルヘルスの障害の発症要因とされている。そこで本研究の目的は、人工呼吸管理中の患者が妄想的記憶の中でどのような体験をし、その体験をどのような形で保持し、どのような対処行動をとるのかを明らかにすることである。このことは、妄想的記憶を持つ患者に対して、看護ケアを提供する上で重要な知見になると考える。
【方法】
対象者:緊急入院や予定外入室となり、気管挿管後24時間以上の人工呼吸管理が必要となった患者で、妄想的記憶を保持していた4名。
研究デザイン:質的帰納的研究 研究期間:2017年8月~2018年11月
データ収集方法:HCU病棟を退室後14日以内に後方病棟を訪問し、半構成的面接法を用いて個人面接を行った。対象者の許可を得て面接内容をボイスレコーダーで録音し逐語録を作成した。
データ分析方法:逐語録をデータとして、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチの手法を参考に分析を行った。
【倫理的配慮】
滋賀県立総合病院の倫理審査委員会の承認を得た上で、対象者に研究の目的・意義、研究方法、研究の参加・協力への自由意思、参加・協力の中断及び中止、プライバシーの保護について同意書を口頭で説明し文書で同意を得た。また、個人面接中は対象者の反応や表情などを注意深く観察し、疲労や精神的苦痛がある場合は中断可能であることを伝えた。対象者の精神的苦痛が大きい場合には、大学院などで専門的な教育を受けた者に支援を依頼することとした。
【結果】
妄想的記憶の体験と対処行動を合わせて4カテゴリー【 】、9サブカテゴリー『 』、28概念< >が生成された。
対象者は、人工呼吸管理開始後に目を覚ますと何が起こったのか分からず『曖昧な状況把握』をしていた。『曖昧な状況把握』を起点に【夢と現実の境界】【生と死の彷徨い体験】<気にならない声や気配>を感じるといった体験を繰り返していた。体験の最中では『できる限りの意思表示』という対処行動をとっていた。そして<現状認知のための重要他者>の存在が対象者を現実に引き戻すきっかけとなっていた。
抜管後は人工呼吸管理中に起こった体験の解釈ができず『辻褄の合わない意味付け』をしていた。この『辻褄の合わない意味付け』は、時間が経過しても薄れることはなく、次第に<頭に居座り続ける気掛かりさ>に変化し対象者を思い悩ませていた。この<頭に居座り続ける気掛かりさ>に対して<過去と現状の結び付け><失っている記憶の補填>【語りの共有】を行いながら【否定を避けながらの自己完結】という一連の対処行動をとっていた。
【考察】
『できる限りの意思表示』という対処行動は、非現実の中でも現実を感じることができていた対処行動であり、非現実と現実の2つの世界を共存させる架け橋であったと考えられる。そして<現状認知のための重要他者>の存在が、対象者を現実に引き戻すきっかけとなっていたことからも、妄想的記憶の体験の最中から意識的に現状認知を促し、正しい記憶を構築していくことが重要であると考える。また、抜管後は今回の体験と過去の人工呼吸管理中の体験を繋ぎ合わせ、家族や看護師から人工呼吸管理中の様子を聞き、体験した出来事を家族や看護師と共有することで自己完結をしていた。対象者が語る体験を傾聴し、否定をせず、共感する姿勢を持つことが重要であると示唆された。
集中治療後に生じる不安やうつ、心的外傷後ストレス障害などのメンタルヘルスの障害は、集中治療中の体験や記憶などが関係しており、なかでも妄想的記憶がメンタルヘルスの障害の発症要因とされている。そこで本研究の目的は、人工呼吸管理中の患者が妄想的記憶の中でどのような体験をし、その体験をどのような形で保持し、どのような対処行動をとるのかを明らかにすることである。このことは、妄想的記憶を持つ患者に対して、看護ケアを提供する上で重要な知見になると考える。
【方法】
対象者:緊急入院や予定外入室となり、気管挿管後24時間以上の人工呼吸管理が必要となった患者で、妄想的記憶を保持していた4名。
研究デザイン:質的帰納的研究 研究期間:2017年8月~2018年11月
データ収集方法:HCU病棟を退室後14日以内に後方病棟を訪問し、半構成的面接法を用いて個人面接を行った。対象者の許可を得て面接内容をボイスレコーダーで録音し逐語録を作成した。
データ分析方法:逐語録をデータとして、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチの手法を参考に分析を行った。
【倫理的配慮】
滋賀県立総合病院の倫理審査委員会の承認を得た上で、対象者に研究の目的・意義、研究方法、研究の参加・協力への自由意思、参加・協力の中断及び中止、プライバシーの保護について同意書を口頭で説明し文書で同意を得た。また、個人面接中は対象者の反応や表情などを注意深く観察し、疲労や精神的苦痛がある場合は中断可能であることを伝えた。対象者の精神的苦痛が大きい場合には、大学院などで専門的な教育を受けた者に支援を依頼することとした。
【結果】
妄想的記憶の体験と対処行動を合わせて4カテゴリー【 】、9サブカテゴリー『 』、28概念< >が生成された。
対象者は、人工呼吸管理開始後に目を覚ますと何が起こったのか分からず『曖昧な状況把握』をしていた。『曖昧な状況把握』を起点に【夢と現実の境界】【生と死の彷徨い体験】<気にならない声や気配>を感じるといった体験を繰り返していた。体験の最中では『できる限りの意思表示』という対処行動をとっていた。そして<現状認知のための重要他者>の存在が対象者を現実に引き戻すきっかけとなっていた。
抜管後は人工呼吸管理中に起こった体験の解釈ができず『辻褄の合わない意味付け』をしていた。この『辻褄の合わない意味付け』は、時間が経過しても薄れることはなく、次第に<頭に居座り続ける気掛かりさ>に変化し対象者を思い悩ませていた。この<頭に居座り続ける気掛かりさ>に対して<過去と現状の結び付け><失っている記憶の補填>【語りの共有】を行いながら【否定を避けながらの自己完結】という一連の対処行動をとっていた。
【考察】
『できる限りの意思表示』という対処行動は、非現実の中でも現実を感じることができていた対処行動であり、非現実と現実の2つの世界を共存させる架け橋であったと考えられる。そして<現状認知のための重要他者>の存在が、対象者を現実に引き戻すきっかけとなっていたことからも、妄想的記憶の体験の最中から意識的に現状認知を促し、正しい記憶を構築していくことが重要であると考える。また、抜管後は今回の体験と過去の人工呼吸管理中の体験を繋ぎ合わせ、家族や看護師から人工呼吸管理中の様子を聞き、体験した出来事を家族や看護師と共有することで自己完結をしていた。対象者が語る体験を傾聴し、否定をせず、共感する姿勢を持つことが重要であると示唆された。