第15回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

[O7] 看護教育

2019年6月16日(日) 09:00 〜 10:10 第5会場 (B2F リハーサル室)

座長:宮本 いずみ(久留米大学)

09:40 〜 09:50

[O7-5] 集中治療を受けている患者の異変を察知した急性・重症患者看護専門看護師の臨床判断

○安井 美和1、明石 惠子2 (1. 三重大学医学部附属病院、2. 名古屋市立大学看護学部)

キーワード:臨床判断、急性・重症患者看護専門看護師、集中治療室

【目的】
 クリティカルケア領域における臨床判断には、生命危機状態にある患者の特徴を考慮し、短時間でアセスメントを行い、介入することが求められる。しかし、その急変・異変の判断に至る過程は、看護師個々の知識、能力、経験によってさまざまであるといえる。卓越した看護実践者である急性・重症患者看護専門看護師(以下CCNS)は、クリティカルケア領域において質の高い看護を行っていると推察できるが、これらの看護実践は言語化されることが少なく、CCNSの臨床判断に関する報告は少ない。CCNSが集中治療を受けている患者の異変をいかにして察知し、どのように解釈を加え行動し、その後の振り返りを次の実践につなげているのか、その一連のプロセスと構成内容を明らかにする。
【研究方法】
 研究デザインは質的帰納的研究で、集中治療室に勤務するCCNSを対象に半構造化面接を実施した。データ分析は修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を用い、分析焦点者を「CCNS」、分析テーマを「異変を察知した後行動し、振り返りを行うまでの一連のプロセスである臨床判断」と設定した。そして得られたデータから概念を抽出し、概念間の関係からサブカテゴリー、サブカテゴリー間の関係からカテゴリーを形成し、ストーリーラインを作成した。本研究は、所属施設の倫理委員会の承認を得て実施した。研究協力者へは研究目的、方法、研究への協力の自由意思と拒否、プライバシーおよび個人情報の保護等の倫理的配慮について書面および口頭で説明を行い、同意を得た。
【結果】
 研究協力者は6名であった。分析の結果39個の概念と16個のサブカテゴリーおよび4個のカテゴリーが生成された。得られた結果からストーリーラインを作成すると、CCNSの臨床判断のプロセスは、【高い予測性と洞察力による異変の察知】を行い、【情報活用能力を駆使した原因検索】へと進んでいた。そして患者の異変の原因を解決すべく、【様々な視点で精選するケア】にてケアを決定し実践していた。そして、一連の実践の後【より良い実践への多様なリフレクション】を行い、自身の経験知と知識を蓄積するとともに、スタッフや部署全体に向けて次の実践へとつなげていた。そして【より良い実践への多様なリフレクション】が、【高い予測性と洞察力による異変の察知】へと循環していた。また、CCNSの臨床判断の構成内容として、高い予測性と洞察力、新しい知見の応用、視点と思考の切り替えが明らかとなった。
【考察】
 CCNSの臨床判断のプロセスの特徴は、経験知に文献などから得た新しい知見を加えた情報の解釈であった。臨床判断の構成内容では、CCNSのもつ豊富な医学的知識や経験で培った患者の反応パターンの熟知が、高い予測性と鋭い洞察力につながっていると考えられた。またCCNSは患者に照準を合わせたり、全体を俯瞰したりする視点の切り替えと、自身の判断を批判的に検討することで、自身の介入ポイントを探りながら患者へのケアを精選していた。さらに必要な情報を整理し、筋道を立てるという論理的思考にもとづく実践は、自身の実践の言語化を可能にし、後のリフレクションへとつながっていた。経験知を蓄積するにはリフレクションが重要であり、CCNSのリフレクション能力の高さが卓越した看護実践につながっていると示唆された。本研究からリフレクション学習の必要性が示唆され、臨床における看護実践能力向上に向けたリフレクションの方略の検討が必要であると考えた。