第15回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

[O8] その他

2019年6月16日(日) 10:20 〜 11:30 第5会場 (B2F リハーサル室)

座長:小島 朗(大原綜合病院)

10:50 〜 11:00

[O8-4] 急性・重症患者看護専門看護師がクリティカルケア看護領域の患者のComfort(安楽)に関わる体験

○大山 祐介1,2、永田 明2、山勢 博彰3 (1. 山口大学大学院医学系研究科保健学専攻博士後期課程、2. 長崎大学生命医科学域保健学系、3. 山口大学大学院医学系研究科保健学専攻)

キーワード:comfort、安楽、急性・重症患者看護専門看護師、体験

【目的】
 本研究の目的は,看護師がクリティカルケア看護領域の患者のcomfortに関わる中でどのように感じ,考え,行動しているのかという体験を明らかにすることである.
【方法】
 研究デザインはSandelowskiが論ずる質的記述的研究である.2018年7月から2019年1月の期間において,臨床で看護実践する急性・重症患者看護専門看護師を対象に半構造化インタビューによるデータ収集を行った.1回のインタビュー時間は45~86分であった.インタビューでは,①クリティカルケア看護におけるcomfortのイメージ,②患者のcomfortな状態やcomfortではない状態,③comfortに関する観察や介入,④comfortになった患者の反応,⑤患者がcomfortになることでもたらされる成果について,自由に語ってもらった.インタビューで得られたデータから逐語録を作成した.その後,研究目的の内容を示す語りの文節を取り出しコードとした.取り出した語りのコードを共通点と相違点を考慮してカテゴリーを作った.カテゴリーに含まれる看護師の語りの文節をクリティカルケア看護領域における患者のcomfortの特徴を踏まえてカテゴリー名を付けた.本研究は,所属大学の倫理審査委員会の承認を得て実施した(管理番号:537).
【結果】
 研究参加者は9人であった.分析の結果,患者のcomfortに関わる体験を示すコードから24個のサブカテゴリーを抽出し,【そもそも苦痛がある中で,安楽のための関りが十分にできない】,【傍にいてコミュニケーションをとりながら人として向き合う】,【背景を踏まえて話を聴き,選択できるように伴走する】,【全人的な安楽のためケアを紡ぐ】,そして【患者が発するサインから変化を感じ取る】の5個のカテゴリーが見出された.
 研究参加者は,疾患や外傷そのものによる痛みや不確かさだけでなく,不快な刺激や制限が多い療養環境によって患者には様々な苦痛があると捉えている.その苦痛の原因を探りつつも患者の心の内を把握する難しさなどから,【そもそも苦痛がある中で,安楽のための関わりが十分にできない】と感じている.その中で,絶えずcomfortを意識し,【傍にいてコミュニケーションをとりながら人として向き合う】ことが大切なことだと考えている.特に【背景を踏まえて話を聴き,選択できるように伴走する】という,患者が自立した感覚を持てるような関わりをしている.また,苦痛がある中でも耐えられることを目指し,その時々の患者の状態に応じたケアを積み重ねるという【全人的な安楽のためにケアを紡ぐ】ことを語っている.そして,身体的反応や発言の内容,行動,活動に注意し,【患者が発するサインから変化を感じ取る】ことで,comfortかどうかを判断している.
【考察】
 クリティカルケア看護が対象とする患者は生命の危機状態にある重症患者であることから,身体的な治療が優先され,comfortになるためには他者に依存しなければならない状況にある.専門看護師が感じているように,患者はcomfortとは正反対の状態であり,たとえ専門看護師であっても患者をcomfortにすることは容易ではないことがわかった.その中で,患者に関心を持ち,患者の反応を確認した上で自立性を持てるように関わることは重要である.Comfortは患者の主観であるため,ケアの受け手である患者の観点からcomfortを捉えることで,患者の全人的な側面や状態の変化に応じたケアを行うことができcomfortにつながることが示唆された.