The 15th Annual Meeting of Japan Academy of Critical Care Nursing

Presentation information

Oral presentation

[O8] その他

Sun. Jun 16, 2019 10:20 AM - 11:30 AM 第5会場 (B2F リハーサル室)

座長:小島 朗(大原綜合病院)

11:00 AM - 11:10 AM

[O8-5] O8-5

○川島 徹治1、田中 真琴1、川上 明希1、村中 沙織2 (1. 東京医科歯科大学保健衛生学研究科、2. 札幌医科大学附属病院 高度救命救急センター)

Keywords:終末期看護、インフォームドコンセント

【目的】
 集中治療領域での終末期患者とその家族に対するインフォームドコンセント(以下, IC)における看護師の実践に関するリストの作成および各実践の重要度を検討する。
【方法】
 本研究は、リストの作成、重要度調査の 2 段階で行った。リスト作成は、文献検討(和文 11 件・英文10 件の合計21 件)および 1 回のフォーカスグループインタビュー(急性重症患者看護専門看護師 3名)、7 名の個別インタビュー(急性重症患者看護専門看護師 5 名・集中ケア認定看護師 2 名)により、集中治療領域での終末期患者とその家族に対する IC における看護師の実践リスト 65 項目を作成した。重要度調査は、全 2 回の質問紙によるデルファイ調査を行った。対象者は、機縁法によりリクルートした集中治療領域での終末期患者とその家族に対する IC に関して豊富な経験を有する看護師 55 名とした。調査内容は、作成した実践リスト 65 項目の重要度について、9 段階リッカートスケール(1:全く重要でない~9:とても重要である)を用いて尋ねた。重要度の分析は、2 回目調査の回答を用い、中央値を算出した。回答分布から、回答者の 80%以上が重要度 7,8,9 を選択した場合、重要であると合意がえられた項目と見なした。倫理的配慮として、研究目的や個人情報管理、回答の有無によって対象者が不利益を被らないこと等を文書にて説明し同意を得た。なお、本研究は所属大学医学部倫理委員会の承認を得た上で実施した。
【結果】
 実践リスト 65 項目は IC の準備段階、IC の実施段階、IC 後の段階の 3 領域に分類された。IC の準備段階(16 項目)では、患者や家族の受け止めを確認することや話し合いに向けた準備性を高める実践が多かった。IC の実施段階(32 項目)では、コミュニケーションに関する実践や参加者の観察や確認といった項目が多くを占めた。IC 後の段階(17 項目)では、患者や家族の受け止めの確認や話し合い後の支援、医療者自身の支援に関する実践が挙がった。質問紙調査は、第 1 回調査にて 55 名に配布し、50 名より回答を得た(回収率 90%)。その後、第 1 回調査にて回答のあった 50 名に対して第 2 回質問紙を配布し、46 名より回答を得た(最終有効回答率:83.6%)。実践が重要であると合意の得られた項目は全 65 項目中 49 項目(75.4%)となり、それら項目の中で、中央値 9 は 36 項目、中央値 8 は 8 項目、中央値 7 は 5 項目であった。文献検討では明らかとならず、インタビュー調査によって明らかとなり、本研究において特徴的と言える項目は、①迅速な話し合いの設定や調整に関する項目、②身体的反応や心理的反応の観察および対応に関する項目、③医師や医療者への配慮や心理的支援に関する項目の大きく 3 点、合計 10 項目であった。
【考察】
 本研究により、先行研究において一般に IC で実践すべきとされている項目が集中治療領域における看護師の実践としても重要であることを裏づけた。また、エキスパート看護師への調査を行うことで、集中治療領域での終末期における実践として特徴的な項目を抽出しており、終末期患者と家族に対する IC に関して看護師が行っていくべき実践を網羅的に示していると言える。重要度が高い項目の特徴は、患者や家族への配慮やケアが中心であり、コミュニケーションの促進や家族の思いや考えを引き出す関わり、推定意思だとしても患者が話し合いの中心となるような関わりが挙げられ、エキスパート看護師にとってより重要と考えられていた。本研究において実践リストおよびそれら実践の重要度を示したことで、患者や家族へのケアの質向上の一助となると考える。