第15回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

[O8] その他

2019年6月16日(日) 10:20 〜 11:30 第5会場 (B2F リハーサル室)

座長:小島 朗(大原綜合病院)

11:10 〜 11:20

[O8-6] 看護師による心疾患手術後患者における退院指導の実態調査

○佐伯 京子1、山勢 博彰1、田戸 朝美1、山本 小奈実1 (1. 山口大学大学院医学系研究科)

キーワード:退院指導、心疾患手術後

【背景】
 心疾患患者の退院指導に関するガイドラインEuropean Guidelinesには、国内のガイドラインに含まれていない認識-行動変容の項目がリストされ、心疾患の一次予防を踏まえたものとなっている。本邦では、退院指導は各施設で独自に行われており、このようなガイドラインに基づく退院指導がどれだけの範囲で、どこまで実施されているのか実態は明らかになっていない。
【目的】看護師による心疾患手術後患者に対する退院指導の現状を明らかにすることである。
【方法】
対象者:心臓血管外科専門医認定修練施設のうち基幹施設350施設(心臓血管外科手術が100例/年以上)に勤務する心疾患の手術を受けた患者への退院指導の経験のある看護師
期間:2018年12月~2019年1月
研究デザイン:実態調査研究(質問紙調査)
研究方法:調査項目は、対象者の基本的属性とEuropean Guidelinesの大項目である11項目[①患者の認識の確認や行動へのケア、②喫煙に関する指導、③栄養に関する指導、④運動に関する指導、⑤心理・社会的ケア、⑥体重管理の指導、⑦血圧管理の指導、⑧糖尿病がある患者への指導、⑨抗凝固薬を内服している患者への指導、⑩今後の支援への情報提供、⑪術後の創部管理や一般的な指導]とした。そして、国内の2つのガイドラインと先行研究から実際に退院指導で必要な項目を11項目中に分類し加えた。各項目は退院指導時に実際にどの程度実施しているか(実施度)と退院指導に重要と思うもの(重要度)を各々5段階評価で質問した。分析方法は、得られたデータを項目毎に実施度・重要度で記述統計を行った。
【倫理的配慮】
 研究代表者の所属する研究倫理審査委員会の承認を得た。質問紙の回答と返送をもって同意とした。
【結果】
 1,750名に配布し、470名から回答があった(回収率26.9%)。看護師経験年数11.2±5.25年(平均±SD)。循環器系外科病棟所属418名、循環器系内科病棟所属282名(複数回答可)。循環器系病棟の勤務年数7.0±5.2年。退院指導経験数は、延べ50~100件が最も多かった。施設に退院指導マニュアルがあるのは85名(18%)、患者配布用資料があるのは390名(83%)であった。項目毎の「実施度,重要度」(平均±SD)は、①患者の認識の確認や行動へのケアは「3.7±1.1,4.4±0.8」、②喫煙に関する指導は「3.9±1.3,4.5±0.7」、③栄養に関する指導は「4.3±1.0,4.7±0.6」、④運動に関する指導は「3.8±1.2,4.3±0.8」、⑤心理・社会的ケアは「3.5±1.3,4.1±1.0」、⑥体重管理の指導は「3.8±1.3,4.4±0.8」、⑦血圧管理の指導は「4.6±0.8,4.8±0.5」、⑧糖尿病がある患者への指導は「4.2±1.0,4.7±0.6」、⑨抗凝固薬を内服している患者への指導は「4.3±1.3,4.7±0.6」、⑩今後の支援への情報提供は「4.4±1.0,4.8±0.4」、⑪術後の創部管理や一般的な指導は「4.6±0.8,4.8±0.5」であった。実施度が高い項目は、栄養、血圧管理、糖尿病管理、抗凝固薬管理、今後の支援、術後の創部管理や一般的な指導であった。重要度は全項目において高かった。
【考察】
 全項目において看護師は退院指導の重要性を感じていた。運動に関する指導の実施度が低かったのは、理学療法士により指導が実施されており、看護師は直接的に指導を行っていないためと考えられた。体重管理の指導は、入院中に毎日実施しており、改めて退院指導として実施していないため実施度が低かったと考えられる。また、患者の認識や行動へのケアと心理・社会的ケアの重要性は認識できてはいるが実施できていなかった。現状の退院指導には「患者の認識確認や行動へのケア」、「運動に関する指導」、「心理・社会的ケア」と「体重管理の指導」の部分が不足しており、今後充実させていく必要があると考えられた。