1:10 PM - 1:20 PM
[O9-1] O9-1
Keywords:院内迅速対応システム、患者安全
【はじめに】
従来,当センターでは患者が予期せぬ心肺停止状態に陥った際に発動される全館放送の蘇生コードシステムのみが存在した。しかし,危機的状態の予防や,早期発見の具体的な対策,教育などを包括的に管理・実施する部門が存在しなかった。Aoki 1 )らは,2013年以降の4年間に当センターの一般病棟から小児集中治療室(Pediatric Intensive Care Unit:PICU)への計画外転棟患者244人のうち,病棟での心肺蘇生を要した患者が9人いたのみならず,実に68人もが「危険な転棟」(病棟での気管挿管後の転棟,もしくは,PICU入室後1時間以内に気管挿管,カテコラミンサポート,または3回以上のボーラス輸液を要した転棟(心肺蘇生症例を除く))に該当することを報告した。また,危険な転棟を要した68人(危険群)は,その他の167人(非危険群)に比べて,PICU在室日数が有意に長く(危険群:9日(5-16日)>非危険群:4日(2-9日)),死亡率も有意に高い(危険群:9例(13%)>非危険群:7例(4.2%))ことが明らかになった。
【目的】
入院患者の心肺停止を含む重篤有害事象の減少を目的に,当センターでは2017年12月より院内迅速対応システム(Rapid Response System:RRS),Medical emergency team:METを導入した。当センターにおけるRRSが患者安全に及ぼす効果を検証する。
【方法】
METデータフォームから,METコール件数,METコール理由などのデータを後方視的に収集した。また,「危険な転棟」の発生数を主要アウトカムとし,RRS導入前の48ヶ月間,RRS導入後の9ヶ月間で患者アウトカムを比較する前後比較研究を実施,EZR version 1.37を用いて統計解析を行った。
本研究は,院内倫理委員会により承認されるとともに,研究対象者となられる方から同意をいただくことに代えてオプトアウトを行い,研究計画書などの関連資料の閲覧方法,個人情報の開示に係る手続き,問い合わせ先等を明示し,研究参加への拒否の機会を保障した。
【結果】
2017年12月よりMETラウンドとMETコールを開始,約10ヶ月が経過しMETコール総数は35件であった。RRS導入前(2013-2016年)と導入後(2018年1-10月)の「危険な転棟」の比較を表1に示す。危険な転棟はRRS導入後で減少しており,統計学的に有意であった。病棟でのCPRも減少しているが,統計学的には有意ではなかった。RRS導入後の病棟での気管挿管は0人であり、統計学的に有意であった。
【結論】
RRS導入後に「危険な転棟」が減少しており,病状悪化の早期発見・早期介入の重要性が院内に普及しつつある。RRS導入の効果を正確に評価するためには長期的な情報収集が必要であり,今後も院内での教育と合わせてRRSの評価を継続していく。
1)Aoki Y,et al. J Paediatr Child Health. 2018 Aug 24.
従来,当センターでは患者が予期せぬ心肺停止状態に陥った際に発動される全館放送の蘇生コードシステムのみが存在した。しかし,危機的状態の予防や,早期発見の具体的な対策,教育などを包括的に管理・実施する部門が存在しなかった。Aoki 1 )らは,2013年以降の4年間に当センターの一般病棟から小児集中治療室(Pediatric Intensive Care Unit:PICU)への計画外転棟患者244人のうち,病棟での心肺蘇生を要した患者が9人いたのみならず,実に68人もが「危険な転棟」(病棟での気管挿管後の転棟,もしくは,PICU入室後1時間以内に気管挿管,カテコラミンサポート,または3回以上のボーラス輸液を要した転棟(心肺蘇生症例を除く))に該当することを報告した。また,危険な転棟を要した68人(危険群)は,その他の167人(非危険群)に比べて,PICU在室日数が有意に長く(危険群:9日(5-16日)>非危険群:4日(2-9日)),死亡率も有意に高い(危険群:9例(13%)>非危険群:7例(4.2%))ことが明らかになった。
【目的】
入院患者の心肺停止を含む重篤有害事象の減少を目的に,当センターでは2017年12月より院内迅速対応システム(Rapid Response System:RRS),Medical emergency team:METを導入した。当センターにおけるRRSが患者安全に及ぼす効果を検証する。
【方法】
METデータフォームから,METコール件数,METコール理由などのデータを後方視的に収集した。また,「危険な転棟」の発生数を主要アウトカムとし,RRS導入前の48ヶ月間,RRS導入後の9ヶ月間で患者アウトカムを比較する前後比較研究を実施,EZR version 1.37を用いて統計解析を行った。
本研究は,院内倫理委員会により承認されるとともに,研究対象者となられる方から同意をいただくことに代えてオプトアウトを行い,研究計画書などの関連資料の閲覧方法,個人情報の開示に係る手続き,問い合わせ先等を明示し,研究参加への拒否の機会を保障した。
【結果】
2017年12月よりMETラウンドとMETコールを開始,約10ヶ月が経過しMETコール総数は35件であった。RRS導入前(2013-2016年)と導入後(2018年1-10月)の「危険な転棟」の比較を表1に示す。危険な転棟はRRS導入後で減少しており,統計学的に有意であった。病棟でのCPRも減少しているが,統計学的には有意ではなかった。RRS導入後の病棟での気管挿管は0人であり、統計学的に有意であった。
【結論】
RRS導入後に「危険な転棟」が減少しており,病状悪化の早期発見・早期介入の重要性が院内に普及しつつある。RRS導入の効果を正確に評価するためには長期的な情報収集が必要であり,今後も院内での教育と合わせてRRSの評価を継続していく。
1)Aoki Y,et al. J Paediatr Child Health. 2018 Aug 24.