The 15th Annual Meeting of Japan Academy of Critical Care Nursing

Presentation information

Oral presentation

[O9] 医療安全

Sun. Jun 16, 2019 1:10 PM - 2:20 PM 第5会場 (B2F リハーサル室)

座長:平尾 明美(神戸大学医学部附属病院)

1:20 PM - 1:30 PM

[O9-2] O9-2

○内藤 優1、澤井 春花1、白浜 伴子1、善村 夏代1、木下 佳子1 (1. NTT東日本関東病院)

Keywords:薬剤間違い対策、バランススコアカード、RCA

【背景】
インシデントが発生すると、その原因を解明するために根本原因分析(RCA)を行うが、その結果からインシデント減少へ結びつけることが困難であった。そこで、目標を明確にし、財務・患者・業務プロセス・学習の4つの視点から戦略的に目標達成を目指すバランススコアカード(BSC)の考え方を活用し、薬剤間違いインシデント対策に取り組んだので報告する。
【目的】
RCAの結果をもとに、BSCを活用した薬剤間違いインシデント対策の有効性を明らかにする。
【方法】
1)対象:急性期病院の8床のICU、看護師、担当薬剤師、医師
2)期間:対策前2018/6/20~8/31  対策後9/1~12/31
3)方法:
 a) 看護師8名で、薬剤間違いインシデントについてRCAを実施した。まず薬剤間違いインシデント発生までの出来事を時系列で記述した。それぞれの出来事がなぜ生じたのかを抽出することで、3点の原因が明らかになった。
 b) BSCの考え方をもとに、患者の視点「正確な薬剤投与」を目標とし、RCAで明らかになった原因に対し業務プロセス及び学習の視点から対策を立案しKey Performance Indicater(KPI)を設定した。
 c) 看護師、薬剤師、医師の協力を得ながら、立案した対策を実行できるように調整し、実行した。
 d) 業務プロセス、学習の視点で設定したKPIを評価した。
 e)「正確な薬剤投与」の目標達成状況を評価した。
【倫理的配慮】
研究を行うにあたり施設長の承認を得た。個人情報の管理を徹底した。
【用語の説明】
口頭指示:医師が看護師に口頭で薬剤投与を指示すること。
医師の指示:電子カルテ上で入力された指示。
【結果】
RCAから以下の3点の原因が明らかになった。
①緊急時以外でも口頭指示を受けている。
②在庫薬剤を使用しているため、薬剤師が確認プロセスに関与していない。
③看護師のダブルチェックが有効に機能していない。

これらの原因に対する対策として、BSCから以下の業務プロセス及びKPIを設定した。
①ICUで頻繁に使用される緊急時薬剤を15種類に限定しそれ以外の薬剤は口頭指示を受けない。
 KPI:在庫薬剤請求額の減少(口頭指示で薬剤を投与する際は在庫薬剤を使用するため、在庫薬剤請求額の減少は口頭指示の減少を反映する)
②緊急時以外は在庫薬剤を使用せず医師の指示に応じて薬剤部から薬剤を配送されるシステムに変更した。
 KPI:ICUで印刷する薬剤ラベル使用数の減少(医師の指示時は、薬剤部からラベル・薬剤が配送されるため、ICUで印刷するラベル使用数の減少が薬剤搬送システムの活用を反映する)
③ダブルチェック時に確実に目視で確認できるよう指さし呼称をする。
 KPI:指さし呼称実施率の上昇

次に、学習の視点として以下の教育及びKPIを設定した。
業務プロセスの①~③について連絡ノート、病棟会で周知した。
 KPI:連絡ノート確認率、病棟会出席率

これら業務プロセスと学習の視点で設定したKPIを評価した。
1)学習の視点 KPI(対策後):連絡ノート確認率30/30人(100%)、病棟会開催計3回、総出席者数17/30人(57%)、病棟会ノート確認率13/30人(43%)
2)業務プロセス KPI(対策前→対策後):在庫薬剤請求額4,759,961円→2,596,657円, ICUラベル使用数12個→1個、指さし呼称実施率18%→43%
その結果として、患者の視点及び財務の視点の目標達成状況を評価した。
3)患者の視点 対策前→対策後 薬剤間違いインシデント数1件→0件
4)財務の視点 薬剤間違いインシデントによる治療・入院費などの損失0円
【考察】
RCAで明らかになった原因に対し、BSCを活用することで、業務プロセス・学習の視点からプログラムを立案でき、その達成状況を評価することで、インシデントの減少に結びついたと考えられる。