第15回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

[O9] 医療安全

2019年6月16日(日) 13:10 〜 14:20 第5会場 (B2F リハーサル室)

座長:平尾 明美(神戸大学医学部附属病院)

13:40 〜 13:50

[O9-4] 安全の視点から取り入れた看護提供方式の検討

○荒川 陽子1、佐藤 奈緒子1、本間 隆子1 (1. 日本私立学校振興・共済事業団 東京臨海病院)

キーワード:計画外抜管、医療機器関連圧迫創傷、クリティカルケア看護

【はじめに】
29年度は人工呼吸療法中の計画外抜管など生命に危機を及ぼすアクシデントが連続して発生した。アクシデントを検討した結果、集中治療領域における経験不足、知識不足という要因が明らかとなり集中治療領域での教育が急務となった。同時にアクシデントの発生防止も急務であり、教育効果や安全な看護の提供が可能とされるパートナーシップナーシングを改良し導入した。導入した結果、当施設における効果が明らかとなったためここに報告する。
【目的】
 当施設版PNSを導入し効果を明らかにするとともに、今後の課題を明確にする。
【方法】
 29年8月より計画外抜管の要因を検討し当施設においてパートナーシップナーシング(以下当施設版PNSと記す)の導入について検討を開始。導入期間30年4月1日より受持制の看護方式より当施設版PNSへ変更。11月にパートナーの再編成を行い、31年1月当施設版PNSについて所属看護師へアンケート調査を実施。
【倫理的配慮】
この研究を行うにあたり東京臨海病院倫理委員会の承認を得た。また調査協力は自由意思であり、協力しない場合においても不利益なことはないこと、アンケートは無記名であり研究終了後5年間保存しその後破棄することを説明して同意を得た。
【結果】
 29年度3a以上のアクシデントは11件、内2件の計画外抜管が発生した。30年度3a以上のアクシデントは8件計画外抜管の発生は1件に減少、計画外抜管の減少率は50%であった。29年度、30年度とも3a以上のアクシデントの大半は医療機器関連圧迫創傷(以下MDRPUと記す)でありMDRPUの件数減少には至らなかった。
【考察】
 計画外抜管が50%に減少したことは、2名の看護師の視点によるアセスメントの効果と考える。日本病院機能評価機構の統計によると看護師によるアクシデントは看護師経験10年以下、配属期間3年以下に多い。当施設の集中治療室所属看護師の2/3は経験3年以下であり経験の浅い看護師は、経験豊富な看護師とペアになることが多く、経験豊富な看護の視点を学ぶ機会となり計画外抜管予防への対応能力が向上したと考えられた。計画外抜管を減少させることはできたがMDRPUは減少できなかった。MDRPUの発生時期は集中治療室入室患者の重症度が非常に高い時期と一致しており、予防対策だけでは限界であったと考える。しかし看護業務が煩雑となっていたことも要因と思われ、今後の課題と考える。
アンケートには自己の成長について「先輩のやり方を学び考えが深められた」や「他のスタッフのアセスメントや看護について聞く機会が増え学びとなった」などの回答があった。また、パートナーの成長についても「自分の考えを持って仕事が出来るようになった」や「報告連絡相談が出来るようになった」などの回答があった。このことから当施設版PNS導入により書籍だけでは学ぶことのできない様々な経験知を学ぶことができたと考える。
さらに新人看護師からは、新人看護師を含め3人を一組とすることにより1人の先輩看護師が多忙であっても、もう1人の先輩看護師に声をかけられるとの意見があり、新人看護師の職場適応や成長には効果的と考えられた。
【結語】
 当施設版PNS導入により計画外抜管の件数は50%減少し、計画外抜管予防への一助となることが明らかとなった。また自己の成長やパートナーの成長などを実感することができ、教育的効果も明らかとなった。一方で新人看護師などサポートを要する看護師は、医療事故に対する不安が軽減され職場環境に適応しやすい看護提供方式と示唆された。