The 15th Annual Meeting of Japan Academy of Critical Care Nursing

Presentation information

Oral presentation

[P2] 教育

Sat. Jun 15, 2019 3:40 PM - 4:30 PM 第7会場 (B1F コンベンションホール)

座長:水流 洋平(日本看護協会看護研修学校)

4:08 PM - 4:15 PM

[P2-5] P2-5

○荒川 祐貴1、冨田 亜沙子2、茂田 玲子2、矢富 有見子2 (1. 国立看護大学校 研究課程部 後期課程、2. 国立看護大学校)

Keywords:クリティカルケア、新人看護師、困難

【背景】
 入院期間の短縮や医療の高度化に伴う救命率の上昇により、病院の急性期化は進み、重症・集中ケアを要する患者が増加している。それに伴いクリティカルケア領域の看護師の需要が高まるとともに、高度先進医療に対応し、心身ともに脆弱な患者の療養を支えるクリティカルケア看護師のさらなる役割発揮が期待されている。その一方で、常に命と向き合い緊張感の漂う場の特殊性から、クリティカルケア看護師のストレスの高さやバーンアウトの多さも指摘されている。加えて看護基礎教育の段階では、クリティカルケア看護といった専門に特化した教育はほとんど行われていない。そのため多くの看護師は、就職後に各施設の取組みや個人の自助努力により専門性を高めているのが現状である。このような看護基礎教育と臨床現場の乖離を小さくし、今後の社会においてますます必要性が高まるクリティカルケア領域の看護師を確保していくことが重要となる。そのためには臨床現場で新人看護師が直面している困難を勘案し、大学における看護基礎教育を考えていくことが必要である。
【目的】
 本研究では、クリティカルケア領域に配属となった新人看護師の困難を明らかにすることを目的とする。
【方法】
 医中誌Webで、過去10年以内(2009年~2018年)に発表された原著論文を対象に、クリティカルケア領域における新人看護師の困難に関する文献を検索した。キーワードは「クリティカルケア看護or急性期看護」「クリティカルケアor集中治療」「臨床能力or実践能力」「新人」「困難」を用いた。得られた文献を精査し、研究目的に沿う文献のみを分析対象とした。さらに各文献の参考文献を基に、関連するものを追加した。分析では、得られた文献を精読し、研究結果からクリティカルケア領域における新人看護師の困難に沿った記述を抽出した。その上で、類似した内容を集め、意味内容を考え、カテゴリー化した。なお、倫理的な配慮として、著作権を侵害しないため文献の引用を正確に行い、出典を明記した。
【結果】
 検索で得られた文献は19件であった。内容を精査した上で、クリティカルケア領域に特化せず幅広い病棟を対象としたものや新人看護師の困難以外に焦点があてられたものなど、研究目的に合致しない文献を除外した。なお、本研究の分析方法を鑑み、質的研究法を用いた文献のみを分析対象とした。各文献の参考文献を基に関連する文献を追加し、最終的に7文献が分析対象となった。7文献の研究対象には全て新人看護師が含まれていたが、その定義は就職後3ヶ月~2年目までと文献によって様々であった。ただし、いずれも看護基礎教育を終え、免許取得後すぐにクリティカルケア領域(集中治療室、SICU、ERなど)に配属された者を指していた。7文献の研究結果からクリティカルケア領域における新人看護師の困難を抽出したところ、クリティカルケアという独特の環境に圧倒されている様子や、期待されるクリティカルケア看護師の役割に大きなプレッシャーを抱いていることが明らかとなった。加えて、自身の知識や看護技術に自信が持てず、研鑽が必要だと焦る一方で、新たな生活になじめずどのように対処して良いのかがわからず戸惑っている様子が示された。
【考察】
 クリティカルケア領域における新人看護師の困難には、クリティカルケア領域に特有のものから、領域を問わず新人看護師に共通のものまで幅広く含まれていた。これらの困難を念頭に置き、今後の大学における看護基礎教育の在り方を検討していくことが求められる。