第15回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題(示説)

[P3] 身体的ケア

2019年6月16日(日) 10:25 〜 11:05 第7会場 (B1F コンベンションホール)

座長:杉島 寛(久留米大学病院)

10:25 〜 10:32

[P3-1] NPPVを受けている慢性呼吸不全患者における急性増悪の関連要因

○霜山 真1,2、佐藤 冨美子3、佐藤 菜保子3 (1. 宮城大学看護学群、2. 東北大学大学院医学系研究科保健学専攻がん看護学分野 博士後期課程、3. 東北大学大学院医学系研究科保健学専攻がん看護学分野)

キーワード:慢性呼吸不全、非侵襲的陽圧換気療法、急性増悪、セルフケア

【目的】
 在宅療養中の非侵襲的陽圧換気療法(Noninvasive Positive Pressure Ventilation; NPPV)を受けている慢性呼吸不全患者は、呼吸機能の予備能や運動耐用能も乏しいことから感冒などにより容易に急性増悪をきたし緊急入院に至ることが多い。本研究はNPPVを受けている慢性呼吸不全患者における急性増悪に関連する要因を明らかにすることを目的とした。
【方法】
 2017年10月から2018年6月までに、A県内の総合病院呼吸器内科外来に通院中のNPPVを受けている慢性呼吸不全患者を対象に、診療録およびセルフケア能力に関する質問紙(Self-Care Agency Questionnaire; SCAQ)から調査を行った。データ収集内容は年齢、性別、主病名、NPPV継続年数、喫煙経験の有無、過去3カ月間の急性増悪の有無、過去3か月間の急性増悪回数、ADL、セルフケア能力とした。データ分析方法は過去3か月間の急性増悪の有無と各調査項目をMann–WhitneyのU検定およびカイ二乗検定を用いて比較検討した。
【倫理的配慮】
 東北大学大学院医学系研究科および各協力機関の研究倫理審査委員会の承認を得た。
【結果】
 同意が得られた対象は31名であった。性別は男性18名(58.1%)、平均年齢は73.0±10.2歳であった。慢性呼吸不全の主な原因疾患はCOPD13名(41.9%)、肺胞低換気症候群10名(32.3%)、肺結核後遺症6名(19.4%)であった。平均NPPV継続年数は3.0±3.7年、喫煙経験がある者は19名(61.3%)であった。過去3か月間の急性増悪があった者(増悪経験群)は8名であり、3か月間の平均増悪回数は1.1±0.4回であった。セルフケア能力の下位尺度の平均得点は健康管理法の獲得と継続41.3±6.6、体調の調整30.6±3.3、健康管理への関心32.5±2.8、有効な支援の獲得20.6±4.2であった。セルフケア能力の平均総得点は124.9±12.4であった。各調査項目を増悪経験群と急性増悪がなかった群(増悪なし群)で比較検討した結果、増悪経験群は増悪なし群に比べて、NPPV継続年数とセルフケア能力(健康管理法の獲得と継続、体調の調整、健康管理への関心、総得点)が有意に低かった(p<0.05)。
【考察】
 NPPVを受けている慢性呼吸不全患者における急性増悪に関連する要因として、NPPV継続年数とセルフケア能力が明らかとなった。過去に急性増悪があった者はNPPV継続年数が短く、NPPV機器の取り扱いや療養生活に不慣れであることが推察される。また、セルフケア能力が低かったため、セルフケア能力の向上を目的とした看護支援を行うことの重要性が示唆された。