第15回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題(示説)

[P3] 身体的ケア

2019年6月16日(日) 10:25 〜 11:05 第7会場 (B1F コンベンションホール)

座長:杉島 寛(久留米大学病院)

10:32 〜 10:39

[P3-2] 植込型補助人工心臓装着患者の術後ICUでのADL再獲得にむけ介入した1事例

○中石 史香1、杉原 里子1、岩田 美樹1、井野 朋美1 (1. 熊本赤十字病院)

キーワード:植込型補助人工心臓

【目的】
 わが国の植込型VAD治療は、現時点で心臓移植へのブリッジ使用を目的としており長期にわたる移植待機期間を乗り切るために使用されている。A氏の術後経過は良好であったが、ADLの再獲得ができていない状況があった。そこで、看護チームは問題と捉えADLの再獲得に着目し看護ケアの見直しを行った。今回、看護ケアと多職種カンファレンスを実施しA氏のADLが変化したため、ここに報告する。
【方法】
 症例報告
【事例紹介】
 重症虚血性心不全の診断で植込型補助人工心臓手術を行った60歳代男性、A氏。
 A氏の入院前のADLは自立していた。入院後は、指示で床上安静とIABP挿入肢の屈曲禁止、寝返りは可能だが、起き上がりはギャッチアップ30度までの制限が設けられていた。廃用症候群予防目的に術前より心臓リハビリテーションの介入はなされていた。約3週間床上安静であったため、ADLの介助を必要としていた。
【倫理的な配慮】
 研究対象者には研究の趣旨、研究参加の自由と途中辞退の自由、秘密の保持、途中辞退の場合もその後の治療や入院生活に全く影響しないことを文書で示し署名により研究参加の同意を得た。所属施設の倫理審査委員会の承認を得た。
【結果】
 A氏の術後経過は良好で、リハビリと機器の取り扱いには積極的であったが、ADL再獲得に関しては看護師に依存していた。介入する看護師によってケアにばらつきが見られており、自宅退院を意識した介入が統一できていなかった。また、チームでA氏の現状を把握する必要があると考えた。そこで自宅退院を見据え①ADL再獲得に向けた看護ケアの見直しと②ADL再獲得に向けたチームアプローチの2つを計画した。①に関しては、リハビリ以外の時間も日常生活動作を積極的に行えるように看護ケアの再構築を行い、リハビリチェック表やセルフケア獲得表などを使用し看護ケアの統一を図った。看護チームで随時カンファレンスを実施し、A氏の状況を共有し、看護ケアの評価、修正を行った。②に関しては情報提供を行い、チームで目標を設定し共有した。また、リハビリや機器の取り扱い指導がA氏の疲労となっていることを共有し、チームとして補助人工心臓の指導を一旦中止し、ADL獲得を最優先することを決定した。そのため、チームとしての意向をプライマリーナースがA氏に説明し、同意を得た。ADL再獲得に向けた看護ケアを見直した結果、特に【食事】【移乗】に関する項目でADLが変化した。【食事】に関して介入前、食事環境を整える準備は全て看護師が実施しており、ベッド上で食事を摂取していた。A氏と目標を共有し、看護ケアの統一を行った結果、自己にて食器の蓋を開け車椅子に移乗し食事を行えるようになった。【移乗】に関して介入前は立位保持困難のため、数名で車椅子に移乗していた。リハビリ以外での移乗の機会を増やし、日中はバッテリーへの切り替えを行い活動性の拡大を図った。その結果、軽介助にて立位可能となった。また転出時には、ICUでのADL状況と介入内容を一般病棟へ申し送り、再獲得に向け継続した看護ケア介入を依頼した。
【考察】
 今回、ADL再獲得に向けて看護師がケアの再構築、評価、修正を行った。また、看護師が多職種へ働きかけ調整を図り、チーム全体で目標を共有し介入したことでA氏のADLに変化が生じたと考えられる。