10:39 AM - 10:46 AM
[P3-3] P3-3
Keywords:流量膨張式蘇生バッグ(FIRB)、マノメータ、呼吸管理、小児
【目的】
小児は成人に比べ、呼吸原性に心停止することが多く、蘇生の成功には適切な換気が重要であるといわれている(Berg et al., 1999)。小児の呼吸管理を行う際、一般的にバックバルブマスク(BVM)と流量膨張式蘇生バッグ(FIRB)がある。FIRBは、呼気終末陽圧(PEEP)の維持、最大吸気圧(PIP)や吸気・呼気時間の調節等の利点が報告されていており(松下, 2003)、重症小児患者に有用な用手換気用具である。また,新生児や乳幼児では、肺容量が少なく、肺コンプライアンスが低いため、患児の病態などを考慮した気道管理を必要とされる。そこで、本研究では、小児集中治療室(PICU)の医師・看護師を対象とし、盲目的換気と加圧値を可視できるマノメータを用いた換気との比較を通して、換気の精度を検証することを目的とした。
【方法】
研究協力に同意した看護師29名(経験年数7.2±5.1年、PICU経験年数3±3.7年)および医師7名(経験年数10.3±1.9年、PICU経験年数4±2.4年)、合計36名を対象とした。検証方法は酸素ガス流量を8L/minとし、FIRB、フローアナライザーPF-300(imt社製)、SMSモデル肺(imt社製)を用いた圧測定回路を用いて、研究協力者に設定圧を提示し、研究協力者が適正圧と判断してから30秒間圧測定を行い、PEEP平均値、PIP平均値をそれぞれ記録した。設定圧は、標準圧(PIP20cmH2O、PEEP5cmH2O)、高圧(PIP30cmH2O、PEEP10cmH2O)の2群を提示し、肺モデルは、基準肺モデル(コンプライアンス50mL/cmH2O、気道抵抗20mL/cmH2O/L/sec)、傷害肺モデル(コンプライアンス10mL/cmH2O、気道抵抗200mL/cmH2O/L/sec)、ETT(Endotracheal tube)リークモデルを設定し、合計6パターンの肺モデルとした。データは、盲目的およびマノメータ(マーキュリーメディカル社製)使用下で実施した。得られたデータはEZR v1.37を用いて分散分析を行い、有意水準を5%以下とした。なお、本研究は所属機関の倫理委員会の承認を受けて実施した。
【結果】
すべての設定圧および肺モデルにおいて、職種間には、統計学的有意差はなかった(p値:0.16~0.93)。しかし、看護師は設定圧より逸脱することがあり、特に盲目的換気では認められた(例:高圧損害肺モデル(PIP)/設定値vs測定値[median]:30vs38.4)。またマノメータを用いた換気では、測定値の幅が設定値に近いケースが多く認められた(例:高圧ETTリークモデル(PIP)/30vs30.1)。
【考察】
盲目的およびマノメータを用いた換気の精度に関して、職種間では統計学的有意差が生じていなかった。これは職種間における技術の違いが生じていないことを示唆している可能性がある。PIPについて先行研究(Neumann et al., 1985)では盲目的換気において、指示加圧値を上回り、盲目下加圧による圧損傷の危険性を報告している。このことから、盲目的換気は過剰圧換気が引き起こす可能性を示唆している。先行研究(原口ら, 2019)において、FIRBによる換気補助は肺のコンプライアンスによって、換気量や加圧値に差異が生じるとされている。本研究の結果から、マノメータ使用下の換気は、肺のコンプラアイスにより生じる換気量や加圧値の差異を抑えることができる可能性を示唆している。
なお、本研究は、平成28年度日本クリティカルケア看護学会研究費助成を受けて実施している。また本研究におけるすべての著者には規定されたCOIはない。
小児は成人に比べ、呼吸原性に心停止することが多く、蘇生の成功には適切な換気が重要であるといわれている(Berg et al., 1999)。小児の呼吸管理を行う際、一般的にバックバルブマスク(BVM)と流量膨張式蘇生バッグ(FIRB)がある。FIRBは、呼気終末陽圧(PEEP)の維持、最大吸気圧(PIP)や吸気・呼気時間の調節等の利点が報告されていており(松下, 2003)、重症小児患者に有用な用手換気用具である。また,新生児や乳幼児では、肺容量が少なく、肺コンプライアンスが低いため、患児の病態などを考慮した気道管理を必要とされる。そこで、本研究では、小児集中治療室(PICU)の医師・看護師を対象とし、盲目的換気と加圧値を可視できるマノメータを用いた換気との比較を通して、換気の精度を検証することを目的とした。
【方法】
研究協力に同意した看護師29名(経験年数7.2±5.1年、PICU経験年数3±3.7年)および医師7名(経験年数10.3±1.9年、PICU経験年数4±2.4年)、合計36名を対象とした。検証方法は酸素ガス流量を8L/minとし、FIRB、フローアナライザーPF-300(imt社製)、SMSモデル肺(imt社製)を用いた圧測定回路を用いて、研究協力者に設定圧を提示し、研究協力者が適正圧と判断してから30秒間圧測定を行い、PEEP平均値、PIP平均値をそれぞれ記録した。設定圧は、標準圧(PIP20cmH2O、PEEP5cmH2O)、高圧(PIP30cmH2O、PEEP10cmH2O)の2群を提示し、肺モデルは、基準肺モデル(コンプライアンス50mL/cmH2O、気道抵抗20mL/cmH2O/L/sec)、傷害肺モデル(コンプライアンス10mL/cmH2O、気道抵抗200mL/cmH2O/L/sec)、ETT(Endotracheal tube)リークモデルを設定し、合計6パターンの肺モデルとした。データは、盲目的およびマノメータ(マーキュリーメディカル社製)使用下で実施した。得られたデータはEZR v1.37を用いて分散分析を行い、有意水準を5%以下とした。なお、本研究は所属機関の倫理委員会の承認を受けて実施した。
【結果】
すべての設定圧および肺モデルにおいて、職種間には、統計学的有意差はなかった(p値:0.16~0.93)。しかし、看護師は設定圧より逸脱することがあり、特に盲目的換気では認められた(例:高圧損害肺モデル(PIP)/設定値vs測定値[median]:30vs38.4)。またマノメータを用いた換気では、測定値の幅が設定値に近いケースが多く認められた(例:高圧ETTリークモデル(PIP)/30vs30.1)。
【考察】
盲目的およびマノメータを用いた換気の精度に関して、職種間では統計学的有意差が生じていなかった。これは職種間における技術の違いが生じていないことを示唆している可能性がある。PIPについて先行研究(Neumann et al., 1985)では盲目的換気において、指示加圧値を上回り、盲目下加圧による圧損傷の危険性を報告している。このことから、盲目的換気は過剰圧換気が引き起こす可能性を示唆している。先行研究(原口ら, 2019)において、FIRBによる換気補助は肺のコンプライアンスによって、換気量や加圧値に差異が生じるとされている。本研究の結果から、マノメータ使用下の換気は、肺のコンプラアイスにより生じる換気量や加圧値の差異を抑えることができる可能性を示唆している。
なお、本研究は、平成28年度日本クリティカルケア看護学会研究費助成を受けて実施している。また本研究におけるすべての著者には規定されたCOIはない。