第15回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題(示説)

[P5] その他

2019年6月16日(日) 13:30 〜 14:10 第7会場 (B1F コンベンションホール)

座長:井野 朋美(熊本赤十字病院)

13:44 〜 13:51

[P5-3] ICU Diaryにより生じるネガティブな感情

○西 裕子1、春名 純平1 (1. 札幌医科大学附属病院 ICU病棟看護室)

キーワード:PICS、ICU Diary、ネガティブな感情

【目的】
 欧米ではPICSの精神障害の予防や改善にICU Diaryは有効とされているが、明確なエビデンスは存在しない。そのような現状の中、ICU退室時にICU Diaryを開示した際、PTSDと類似した症状がみられた事例があった。そのため、ICU Diaryにより生じたネガティブな感情を明らかにし、より良いICU Diaryの方法への示唆を得ることを目的とした。
【方法】
 研究デザインは質的記述的研究。研究対象者は、ICUに緊急入室し気管挿管を行い、持続的な鎮静または意識障害があり、ICUに72時間以上滞在した患者。ICU Diaryの記載は、看護師が行い写真を貼付した。研究対象者が一般病棟に移動になる際に本研究の内容と研究協力について説明し同意を得て開示し、ICU退室約1週間後に半構造化面接を実施した。半構造化面接の内容はICU Diaryを「見たときの感情」「閲覧後の気持ちの変化」「記憶への影響」「閲覧後の意欲の変化」とした。分析は、ICU Diaryによるネガティブな感情を抽出して、サブカテゴリーとカテゴリーにラベルをつけた。本研究は札幌医科大学附属病院看護部看護研究倫理審査委員会の承認を受けており、開示すべき利益相反はない。
【結果】
 対象患者は6症例(男性3名、女性3名)で、平均年齢は74.6歳、平均在室日数4.7日、ICU入室理由としていは、敗血症性ショック3名、大動脈解離2名、呼吸不全1名であった。ネガティブな感情として【恐怖心を与えるICU Diary】【不快感を与えるICU Diary】【ICU Diaryに対する無関心な反応】の3つのカテゴリーが抽出された。
【考察】
 ICU入室や入室中の出来事がトラウマ体験となり、ネガティブな記憶として存在している場合、ICU Diaryを閲覧することによりそれが想起され、【恐怖心を与えるICU Diary】へとつながる可能性が示唆された。そのため、ICU Diaryの開示時期の検討、開示する前に本人の精神状態やICUでの記憶や体験の把握が必要である。【不快感を与えるICU Diary】は、ICU Diary閲覧により新たに生じた不快感であるが、写真はICU Diaryに必要な要素であるとも言われており、ICU Diaryそのものや写真に対して不快を感じる事を考慮し、文章の内容や写真を撮影する際の容姿等には配慮が必要である。本研究では、ICUでの記憶がない患者が半数以上いた。こうした記憶の欠落を有している患者は、【ICU Diaryに対する無関心な反応】を示す傾向があった。こうした反応をみせたという先行文献は見当たらない。今後、患者の背景やICU Diaryの内容の検討の余地がある。
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