第15回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

パネルディスカッション

[PD4] 重症患者の生活支援“安全”を守るチャレンジ

2019年6月15日(土) 16:40 〜 18:00 第5会場 (B2F リハーサル室)

座長:池松 裕子(名古屋大学大学院医学系研究科)、足羽 孝子(川崎医科大学総合医療センター)

16:40 〜 16:55

[PD4-1] 重症患者の褥瘡対策 ~今からはじめる予防ケア~

○志村 知子1 (1. 日本医科大学付属病院 高度救命救急センター)

キーワード:褥瘡、重症患者、予防

 これまでわが国では重点的な褥瘡ケアが必要とされる患者に対し、診療報酬加算による総合的な褥瘡対策が実施されてきました。それにより国内における褥瘡有病率は低下の一途を辿りましたが、現在、国内の大学病院における褥瘡推定発生率は1.16%とその低減率に低迷を認めています。その要因として、褥瘡ハイリスク患者に対する褥瘡予防ケアが未だ十分に確立していないことが挙げられます。
 褥瘡ハイリスク患者の多くは救急・集中治療の対象となる急性期重症患者です。この領域の褥瘡発生率は国内外において3.0%~21.3%と報告されており、慢性期や回復期にある患者の褥瘡発生率に比較して高いことが特徴です。急性期重症患者は、概して生命維持が困難で重篤な状態にあり、活動性や可動性、知覚を認知する能力が大幅に低下します。患者の多くは多臓器不全の病態にあり、人体最大の臓器である皮膚もまた機能不全に陥ります。このような病態は患者の褥瘡発生リスクを高め、一旦生じた褥瘡を悪化しやすく、また治癒しにくくさせます。
 あらゆる医療の場、どの疾患においても生じる褥瘡の発生率は、転棟・転落率や医療安全対策実施率などと同様に、病院の医療の質を測る指標です。また、高齢者に発生する危険性が高い褥瘡は、今後本格的な超高齢社会に突入するわが国の医療政策にとって極めて重要な問題でもあります。このような医療情勢のなか、急性期重症患者の褥瘡を予防し、その発生率を低減させることが目下の課題であると考えられます。
 以上を踏まえ、このセッションでは、”現行の看護ケアではその発生を防ぐことが困難な、急性期重症患者に生じる褥瘡”を予防するための次の一手について考えてみたいと思います。