The 15th Annual Meeting of Japan Academy of Critical Care Nursing

Presentation information

Oral presentation

[PD4] 重症患者の生活支援“安全”を守るチャレンジ

Sat. Jun 15, 2019 4:40 PM - 6:00 PM 第5会場 (B2F リハーサル室)

座長:池松 裕子(名古屋大学大学院医学系研究科)、足羽 孝子(川崎医科大学総合医療センター)

5:10 PM - 5:25 PM

[PD4-3] PD4-3

○戸田 美和子1 (1. 公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構  倉敷中央病院)

Keywords:医療安全

 当院は集中治療部門としてICU 10床・救急ICU 8床・CCU 24床(内科系CCU16床と外科系CCU8床)・NCU 8床を有する。私は2007年から急性・重症患者看護専門看護師として内科系CCUに所属しながら組織横断的に質の高い看護を提供するという役割を担うべく活動をしてきた。当院の内科系CCUは1年間で延べ約800~1000人の入室がある。主な疾患は心不全と急性冠症候群であり、ほとんどの患者が覚醒した状態で侵襲的な治療を受けている。そのうえ、治療のための活動制限、低酸素血症などの病態、非侵襲的陽圧換気などの苦痛を伴う医療機器、鎮痛剤や降圧剤などの薬剤といったせん妄を誘発するリスク因子が多く存在する。集中治療室で治療を受ける必要のある循環器疾患患者に対してこれらのリスク因子を除去することは困難であり、加えて、せん妄症状に対する薬物療法は、呼吸・循環抑制による病状の悪化を懸念する医師から投与の指示を得ることが困難であった。そのため看護師は抑制や見守りによる対応をせざるを得ず、疲弊する状況があった。また、近年の高齢者人口の増加から、認知症患者の増加、それに伴うせん妄ハイリスク患者の増加があり、計画外抜去や転倒転落といった患者にとっての“危険”をいかに防ぐかという課題があった。
 2014年の日本版集中治療室における成人重症患者に対する痛み・不穏・せん妄管理のための臨床ガイドライン(JPADガイドライン)の公表後、せん妄予防への取り組みを急務とし、医師が中心となって勉強会を開催した後に、医師と看護師で協働してせん妄ケアプロトコルを作成し、2015年7月から運用を開始した。ICDSCをもとに睡眠障害への介入を早期に行い、看護介入をリスト化して予防ケアを徹底した。プロトコル運用前後のせん妄発症率は大きくは低下しなかったが、せん妄の重症度や持続期間、その後への後遺症としてのPICSの予防には貢献したと考える。また多変量解析の結果から疼痛の存在がせん妄発症の因子として挙がったことから、同様に医師と看護師とで協働して疼痛ケアプロトコルを作成し、2017年8月から運用を開始した。さらに、2018年5月からは看護師の取り組みとして認知症スコアを用いて見当識の継続的欠如や慢性・急性混乱、自己抜管のリスク状態といった患者の“安全”を守るケア介入が含まれる看護問題を積極的に立案するようにフローシートを作成して活用を促進するとともに、ユマニチュードの勉強会を開催するなど基本的ケアの標準化を行った。その結果、計画外抜管や転倒転落の件数は減少している現状がある。
 本セッションでは、内科系CCUの患者に対して、せん妄予防や認知症対策で取り組んだ内容とそれが患者の”安全”に関してどのように成果を得たのかを具体的に紹介する。