第15回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

パネルディスカッション

[PD7] 臓器移植における家族ケア

2019年6月16日(日) 14:30 〜 15:50 第2会場 (3F 国際会議室)

座長:林 優子(関西医科大学看護学部)、明神 哲也(東京慈恵会医科大学)

14:45 〜 15:00

[PD7-2] 最期を選択すること~家族担当コーディネーターの立場から~

○寶場 由佳1 (1. 聖マリア病院)

キーワード:家族ケア

【はじめに】
 我々は人生の最終段階における医療の1つとして、臓器提供を推進している。無理なく円滑に臓器提供を実施できるシステムを構築すべく、2016年10月にDonor Action Program(以下、DAP)を導入し、院内コーディネーターチーム(以下、CO)に急性期におけるgrief careを担う家族担当COを設置した。患者とその家族に寄り添い、患者にとって最善となる意思決定ができる支援に努めている。
【目的】
 臓器提供における院内COチーム内の家族担当COの活動やそこから見えた役割を報告する。
【取組み】
 <活動>DAP導入後の2016年10月から2018年12月までの約3年間にて,29例のポテンシャルドナーに対して27例の選択肢提示を行い,脳死下臓器提供2例,心停止下角膜提供6例を実施した。
 <役割>家族担当COはただ選択肢を提示し決定を待つのではなく、病状・状況の解説・補完をすることで家族の理解を深め、家族の言葉で語ってもらい理解がどの程度成されているかを評価し、選択する力を引き出す。複雑な想いを抱えながら選択をしていく過程において寄り添い、助けを担保する。そして疾患からではなく、患者や家族を取り巻く環境や価値観等を理解しその側面から患者・家族を捉え、最期を選択できるよう支援する役割がある。
【考察】
 最期を選択するための情報提供があり、その中の1つの選択に臓器提供がある。1人1人違う選択があり、その人により選ぶ意思を受けとめ最大限に尊重し実現するための支援姿勢が重要である。しかし、近年の救急医療の現場は災害・自殺・虐待等の多種多様な事象への対応も増え多忙を極めている。このような環境下、また短時間の中で患者の今までの人生(生活)を捉え、十分な信頼関係を構築できないままに家族careを行うことは極めて困難であると考える。これは医師に限ったことではなく、看護師や院内COも同様であり、多岐にわたる役割を同時に担う中で、本当に十分な家族careができない可能性がある。つまり、家族担当COは臓器提供に限らず急性期における人生の最終段階において、患者・家族に寄り添い、人生の最期をどう過ごしていくのか一緒に考え支える存在であることが重要と考える。
【おわりに】
 人は必ず最期を迎える。それが救急医療現場であるならば、臓器提供の選択結果に関わらず家族careを考えていくべきで、急性期における最期を支える家族care,grief careを等しく提供すべきである。