第15回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

パネルディスカッション

[PD7] 臓器移植における家族ケア

2019年6月16日(日) 14:30 〜 15:50 第2会場 (3F 国際会議室)

座長:林 優子(関西医科大学看護学部)、明神 哲也(東京慈恵会医科大学)

15:15 〜 15:30

[PD7-4] 脳死下臓器提供における家族ケアを考える

○岩田 誠司1 (1. (公財)福岡県メディカルセンター)

キーワード:家族ケア、臓器提供

 2010年7月、改正臓器移植法が施行となり、条件が緩和されたことで、脳死下での臓器提供者は増加した。それに伴い、新たに検討すべき課題も浮き彫りになってきている。
 その一つが、臓器提供者家族への心理サポート体制の更なる強化の必要性である。
 脳死下臓器提供を承諾した場合、ご家族は通常とは大きく異なる臨終の場を経験することとなる。臓器移植法では、法的脳死判定を6時間以上(6歳以上の場合)空けて二度行い、二度目の判定終了時刻が死亡時刻となると定められている。
 つまり、死の三兆候の確認による死亡宣告ではなく、脳死状態において、いわばまだ身体も温かく、見た目には判定前と何も変わらない状態のまま、死亡宣告が行われる。そして、ドナー管理が手術開始まで継続される。手術の時間はご家族と相談しつつ決定するが、死亡宣告時間から24時間以内に設定されることが多い。やがて、手術開始時刻となれば、ご家族に見守られながら手術室に搬入となる。実際のご家族のお別れはこの時点であり、握った、まだ温かい手を離し手術室へ送り出す。そして、次に家族が面会するのは摘出手術が終了し、冷たい身体となってかえってきたときとなる。
 このように脳死下臓器提供を承諾した家族は、『特殊な臨終』を経験する。この特殊な体験には、慣習から大きく外れることへの不安からか、葛藤や自責の念を生む多くの要因を含んでいると思われる。
 そのようなご家族からのサインは、症例中のみならず、数年経過し表出されることもある。
 移植コーディネーターは、心理サポートについて専門性を有しておらず、そのようなサインが表出された際、どう対処すべきか苦慮することも多い。安易な行動や発言で、状況を悪化させることを避けるためにも、精神科医や臨床心理士等、専門家介入の必要性を感じることもある。このような現状を踏まえ、脳死下臓器提供における家族ケアについて、今後求められる体制について検討する。