9:40 AM - 10:30 AM
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Keywords:クリティカルケア看護、叡智、ワザ、化学反応
クリティカルケア看護は、急性期・回復期・慢性期・終末期といった健康レベルやICU・救急・手術室といった看護が提供される場を問わず、生命危機にある重篤な患者を対象とする看護領域です。1994年から順次はじまった専門看護師制度、認定看護師制度、そして昨今の特定行為研修制度と、そのスペシャリティは深化を遂げています。
看護が長年追い求めてきた独自性やスペシャリティ深化の実現を喜ばしく思う一方で、13年あまり大学での解剖生理学を担当してきた筆者は、このスペシャリティが盤石な基礎の上に成り立っているのだろうか、と時折疑問を抱くことがあります。こうした疑問から、今回のメインテーマ「叡智とワザの化学反応 ~新たな時代をここから刻む~」が誕生しました。化学反応は、”1つ以上の化学物質を別に新たな化学物質へと変化させる過程”と定義され、触媒によってその反応は促進されます。化学反応によって新たに生まれる物質は、それ以前の物質とは全く異なり、物質の組み合わせによって新たに生まれる物質の種類は無限大です。その一方、化学反応は、分子を構成する原子の結合に変化はあったとしても、原子そのものが別のものに変わることはない、という特徴をもっています。”変わるもの”と”変らないもの”が共存する化学反応は、筆者の抱く疑問を解決してくれる糸口になるのではないかと考えています。
看護は、「生から死への生命過程を生きる人間が健康的な日常生活をその人なりに支障なくおくる支援をする」ことを生業としています。看護実践は、人間に対する限りない関心(ケアリング)を基盤に、その人らしい生活のありようを支えるために専門的な知恵とワザを使って提供されます。こうした看護、看護実践の学問体系である看護学は、人の健康問題の理解とその援助、健康の維持・増進に寄与すべく、医学をはじめとして、社会科学領域(社会学、教育学、経済学等)、人文科学領域(心理学、文化人類学等)といった伝統的な学問領域と融合しながら、学際的に発展を遂げてきました。
看護学は、成長発達や健康レベルを中心に学問体系が構築されてきましたが、急速に変化する社会システムや生命科学の飛躍的な進歩の中にあって、分野・領域を横断的に取り扱うべき複雑な課題が増えてきました。あらゆる場や状況で展開されるクリティカルケア看護という概念は、その範疇を領域横断的におくという意味において、先駆的であると言えるでしょう。2025年以降に加速度を増して到来する少子高齢多死社会、老老医療社会では、さらに多様な課題に直面することが予測されます。医療・看護は今まさに大きな転換期にあると言っても過言ではなく、臨床、教育を問わず、これまでにない短いタイムスパンで既存概念からのパラダイムシフトが求められるかもしれません。
一方、学問的熟成という観点からは、先人たちから受け継いできた看護の本質を守っていくことも重要です。過去から現在までに蓄積された知恵としての叡智と最新の知見の融合あってこそ、看護学の発展があり、融合された叡智が臨床の場で看護のワザとして継承されてこそ看護の真の発展があると考えます。
そこで今回は、看護の本質について言及しつつ、"過去から蓄積されてきた叡"と"新たな時代に柔軟に対応していく実践”について、国内外の文献を紐解きながら、クリティカルケア看護の学際的な融合・多職種との協働でうまれる『化学反応がもたらす可能性』について思索を深めていきたいと考えます。
看護が長年追い求めてきた独自性やスペシャリティ深化の実現を喜ばしく思う一方で、13年あまり大学での解剖生理学を担当してきた筆者は、このスペシャリティが盤石な基礎の上に成り立っているのだろうか、と時折疑問を抱くことがあります。こうした疑問から、今回のメインテーマ「叡智とワザの化学反応 ~新たな時代をここから刻む~」が誕生しました。化学反応は、”1つ以上の化学物質を別に新たな化学物質へと変化させる過程”と定義され、触媒によってその反応は促進されます。化学反応によって新たに生まれる物質は、それ以前の物質とは全く異なり、物質の組み合わせによって新たに生まれる物質の種類は無限大です。その一方、化学反応は、分子を構成する原子の結合に変化はあったとしても、原子そのものが別のものに変わることはない、という特徴をもっています。”変わるもの”と”変らないもの”が共存する化学反応は、筆者の抱く疑問を解決してくれる糸口になるのではないかと考えています。
看護は、「生から死への生命過程を生きる人間が健康的な日常生活をその人なりに支障なくおくる支援をする」ことを生業としています。看護実践は、人間に対する限りない関心(ケアリング)を基盤に、その人らしい生活のありようを支えるために専門的な知恵とワザを使って提供されます。こうした看護、看護実践の学問体系である看護学は、人の健康問題の理解とその援助、健康の維持・増進に寄与すべく、医学をはじめとして、社会科学領域(社会学、教育学、経済学等)、人文科学領域(心理学、文化人類学等)といった伝統的な学問領域と融合しながら、学際的に発展を遂げてきました。
看護学は、成長発達や健康レベルを中心に学問体系が構築されてきましたが、急速に変化する社会システムや生命科学の飛躍的な進歩の中にあって、分野・領域を横断的に取り扱うべき複雑な課題が増えてきました。あらゆる場や状況で展開されるクリティカルケア看護という概念は、その範疇を領域横断的におくという意味において、先駆的であると言えるでしょう。2025年以降に加速度を増して到来する少子高齢多死社会、老老医療社会では、さらに多様な課題に直面することが予測されます。医療・看護は今まさに大きな転換期にあると言っても過言ではなく、臨床、教育を問わず、これまでにない短いタイムスパンで既存概念からのパラダイムシフトが求められるかもしれません。
一方、学問的熟成という観点からは、先人たちから受け継いできた看護の本質を守っていくことも重要です。過去から現在までに蓄積された知恵としての叡智と最新の知見の融合あってこそ、看護学の発展があり、融合された叡智が臨床の場で看護のワザとして継承されてこそ看護の真の発展があると考えます。
そこで今回は、看護の本質について言及しつつ、"過去から蓄積されてきた叡"と"新たな時代に柔軟に対応していく実践”について、国内外の文献を紐解きながら、クリティカルケア看護の学際的な融合・多職種との協働でうまれる『化学反応がもたらす可能性』について思索を深めていきたいと考えます。