第15回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

シンポジウム

[SY1] クリティカルケア領域のその人らしい最期を問う

2019年6月15日(土) 14:20 〜 15:30 メイン会場 (B1F フィルハーモニアホール)

座長:木下 佳子(NTT東日本関東病院)、杉野 由起子(九州看護福祉大学)

14:20 〜 14:35

[SY1-1] 救急看護におけるその人らしい最期を考える

○大野 美香1 (1. 名古屋学芸大学 看護学部 看護学科)

キーワード:終末期ケア

 クリティカルケア領域の終末期は、急性期から終末期への移行時期が曖昧であり、また短期間であることが多い。クリティカルケア看護師は、曖昧で短い終末期にその人らしい死を迎えてもらうためにどのようなケアをしたら良いかと、日々悩みながら実践している。しかし、十分な終末期ケアができないまま看取りとなり、不全感を感じることも少なくない。救急看護においては、さらに短期間での終末期ケアが求められ、環境・時間・スタッフ・教育の不足により終末期ケアが困難であるという報告もある。
 その人らしい最期を考える際に、良い死とは何かを考える必要がある。宮下(2008)は、Good death Inventoryとして、日本におけるがん患者の望む終末期の QOL(望ましい死)を示している。望ましい死として①身体的、心理的な苦痛がないこと、②人として尊重されること、③落ち着いた環境で過ごすことなど10項目が挙げられている。これは、がん患者が望ましい死とする項目であり、クリティカルケア領域の終末期ケアにおいても参考にできるが、患者により良い死とする状況は当然異なる。ゆえに、その人らしい最期を迎えてもらうためのケアでは、患者の人生、価値観、信念などや患者とともにいる家族についての情報収集・アセスメントが重要である。けれども、救急看護においては、短時間で十分な情報収集とアセスメントをするのは難しい。
 厚生労働省は「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」において、人生の最終段階における医療・ケアはAdvanced Care Planning(以下、ACP)を行いながら決定することを推奨している。現在、終末期にどのような医療やケアを受けたいか、ACPを行っている患者は少ないが、今後はクリティカルケア領域でもACPを行ってきた患者の終末期ケアの実施が予測される。終末期ケアを行う際は、患者がACPを行ってきたか、行っている場合はどのような意思をもっているかを汲み取る必要がある。ACPが普及すると、救急看護においても患者の意思を短時間で知ることができるようになる可能性があり、普及が望まれる。
 日本救急看護学会の終末期ケア委員会では、日本クリティカルケア看護学会の終末期ケア委員会と合同で、「救急・集中ケアにおける終末期看護プラクティスガイド」(案)(以下、ガイド)を作成している。ガイドは、クリティカルケア領域の看護師がどのように終末期ケアを患者と家族へ提供したらよいのか、実践場面で活用できるものである。このガイドを多くの看護師が使用して、クリティカルケア領域の終末期ケアが促進されると、その人らしい最期を迎えてもらうためのケアが多くの患者に提供されることに繋がると考える。
 本シンポジウムでは、ガイド作成に携わり、救急初療や救命救急センターで終末期ケアを行ってきた立場から、事例をもとにその人らしい最期を迎えてもらうためのケアと今後の課題について考える。