The 15th Annual Meeting of Japan Academy of Critical Care Nursing

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Oral presentation

[SY1] クリティカルケア領域のその人らしい最期を問う

Sat. Jun 15, 2019 2:20 PM - 3:30 PM メイン会場 (B1F フィルハーモニアホール)

座長:木下 佳子(NTT東日本関東病院)、杉野 由起子(九州看護福祉大学)

2:50 PM - 3:05 PM

[SY1-3] SY1-3

○伊藤 真理1 (1. 川崎医科大学総合医療センター 看護管理室)

Keywords:その人らしさ、延命医療

 日本看護協会は、看護の目的を「健康の保持増進、疾病の予防、健康の回復、苦痛の緩和を行い、生涯を通してその最期まで、その人らしく生を全うできるように援助を行うこと」と言明している(日本看護協会、看護者の倫理綱領より)。『その人らしく』という用語は、看護の核となるもののようだ。しかし、クリティカルケア領域において、患者自身に「あなたらしさとは何ですか?」と問うことは、多くの場合不可能である。例え、意識が保たれていたとしても、80歳を超える高齢者に「延命医療を受けますか?やめますか?それはあなたらしい選択ですか?」と尋ねても、その問いに答えられる人が何人いるだろうか?

 私がシンポジウムのテーマに選んだ「延命医療の継続がその人らしいのか、やめるのがその人らしいのか?」は、2018年11月に放映されたNHKスペシャルの中で会田薫子先生が発した言葉である。クリティカルケア領域において、人工呼吸器を含む延命医療を継続するか否かが問われる時代がやってきた。いやその前に救急初療の現場では、人生の最終段階を迎えている高齢者に積極的治療を始めるか否かという選択が、ある日突然ご家族に突き付けられる時代がやってきたのである。このような時代を迎える前から、2009年以降、世の中には「終活」ブームが到来している。この「終活」とは、人生の終わりについて考える活動であり、①エンディングノートを書く、②遺言を書く、③お墓を決めるが3大ポイントとなる。エンディングノートには自分の延命医療に関する考えを書くこともできる。しかし、自分の人生の最終段階に受ける医療について、事前指示書の作成に賛成する人(一般国民の69.7%)であってもその指示書を実際作成している人は8%に過ぎない(厚生労働省「人生の最終段階における医療に関する意識調査」平成29年度)。

 つまり、延命医療を受けるか、受けないかについて、詳しく本人とは話したことがないけれどもご家族が決めなければならないケースがほとんどである。時間も切迫している。代弁する家族が存在しないケースもある。このような難題にクリティカルケア領域の看護師はどう対処していくのか。「ご家族で決めて下さい」と言い放ち、自分を蚊帳の外に置いてしまっていいのか。出会って間もない患者さんの『その人らしさ』を、何を手掛かりに捉えていくのか。そもそも『その人らしさ』の正体とは何なのか? 本シンポジウムでは、筆者が体験した事例を通して皆さんと考えていきたい。