第15回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

シンポジウム

[SY2] クリティカルの臨床指標をPDCAサイクルに載せる

2019年6月15日(土) 16:50 〜 18:00 メイン会場 (B1F フィルハーモニアホール)

座長:中村 美鈴(東京慈恵会医科大学)、中田 諭(聖路加国際大学)

17:20 〜 17:35

[SY2-3] VAEサーベイランス、VAP予防バンドル実施率・入力率、手指所毒実施率を活用したICUの取り組み

○柳澤 八恵子1 (1. 聖路加国際病院 救命救急センター)

キーワード:VAE、手指消毒実施

【背景】
 2013年米国疾病病対策センター医療安全ネットワークによるVAEサーベイランス定義の発表を受け、当院では2014年4月よりそれまでのVAPからVAEのうちIVAC、PVAPのサーベイランスへと移行した。さらに2015年7月からはVACを含めたVAEサーベイランスを開始した。当院では、米国看護認証センターによるマグネットホスピタルの認証に向けて取り組んでおり、VAEの予防は集中治療領域において、重要な位置づけとなっている。また、VAE予防として、「VAP予防バンドル」を実施し対策を行っている。当院には集中治療室が3部署(ジェネラルICU:以下ICU、救命救急センターICU、心血管センターICU)と準集中治療室が2部署(救命救急センターHCU、心血管センターHCU)計5か所存在する。2016年度より「VAP予防バンドル」実施率・入力率もVAEサーベイランスと共に各部署にフィードバックされるようになった。このフィードバックにより現状と課題が明らかになり、新たな予防策の計画へと進んでいる。
【方法】
 PDCAサイクルによって実践された当院のVAEサーベイランスの結果を示すと共に、ICU内での取り組みを紹介する。
【結果】
 2016年4月より、VAE発生率、「VAP予防バンドル」実施率・入力率のモニタリングとフィードバックを行っていった。2016年度のVAE発生率は1000人工呼吸器装着期間あたり6.4と目標値2.0を上回っていた。詳細を見てみると、2016年は集中治療領域16件VAEが発生しており、そのうちICUは3件であった。ICUの「VAPバンドル」実施率は80.1%(目標値95%)、入力率89.4%と5部署中最下位であった。2017年には「VAPバンドル」実施率70.9%、入力率78.1%とさらに低下している。VAEの発生率は全体で11件、(100人工呼吸器装着期間あたり3.8)と低下しているが、ICUは3件と変化は見られなかった。ICUでも「VAP予防バンドル」がなされていないわけではないが、大きな要因として、始業時前に電子カルテに「VAP予防バンドル」テンプレートを立ち上げはするが、記録を後回しにすることによる入力漏れが入力率と実施率の低下の要因と考えられた。また、2017年には「VAP予防バンドル」が始業時点検チェックテンプレートから、感染アセスメントテンプレートに移行したことも、入力漏れの要因であったとも考えられた。そこで、毎月のフィードバックや周知活動を行うことで、2018年度には「VAP予防バンドル」入力率・実施率とも上昇していった。
 また、ICUは「VAP予防バンドル」の一つである手指消毒実施率が低く、実施率向上が課題であった。手指衛生実施率は、手指衛生5つのタイミングを元に、四半期ごと各部署モニタリングされた結果が報告される。2016年度院内の手指衛生実施率目標値は80%であったが、ICUは52%であった。看護師の要因としては、処置中やケアの入退室時に手指衛生を忘れることが多かった。その他の要因としては、医師の手指衛生忘れがあげられた。当ICUの管理はセミオープンであるため、多くの医師がICUに訪れる。特に回診時に手指衛生を忘れ入退室をされるため、ICUでの手指衛生実施率が改善されずにいた。そこで、医師始め多職種で構成される感染予防委員会でICUの現状と、取組みを発表し、医師からも「手指衛生を行いやすい環境づくり」のための提案をいただいた。その提案を生かした環境改善をおこなった結果、2017年度は68%と改善がみられた。