The 15th Annual Meeting of Japan Academy of Critical Care Nursing

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Oral presentation

[SY4] クリティカルケアにおける倫理的ジレンマ

Sun. Jun 16, 2019 10:10 AM - 11:50 AM メイン会場 (B1F フィルハーモニアホール)

座長:明石 惠子(名古屋市立大学大学院看護学研究科)、岡田 彩子(日本赤十字看護大学)

10:40 AM - 10:55 AM

[SY4-3] SY4-3

○乾 早苗1 (1. 金沢大学附属病院 救急部)

Keywords:救急外来、終末期ケア、デスカンファレンス

 救急患者は、突然の事故や疾病、慢性疾患の増悪などで搬送される。手術を受ける、蘇生処置を中止するなど生命に直結する重大な治療方針を決定する際、時間的余裕がなく、患者自身が意思決定できない状況の中で、家族などの代理者により意思決定されることが多い。こういった救急患者に生じる倫理的課題として、「救急医療領域における看護倫理」ガイドラインでは、①意識障害等で自己決定できない、②突然のことで動揺している家族間での意思決定が困難である、③緊急治療が重い障害が残るが救命率が低い場合、家族が治療を拒否することがある、④ターミナル期など本人が尊厳死を希望し救命し治療を拒否することがある、⑤自殺企図患者の本人と医療者間での治療選択に関する意見の対立、⑥警察などの第三者の介入時に本人のプライバシーの保護・保障が担保できない、⑦脳死患者の臓器提供移植医療に伴う諸問題をあげている1)
 平成29年度の高齢化率は27.7%と上昇を続け、超高齢化社会に突入し、救急搬送される患者における高齢者の割合も増加しており、平成28年度では57.2%であった2)。高齢者の救急搬送では、独居高齢者で代理意思決定者がいない場合の治療方針の決定や、DNAR指示や治療の終了、差し控えなどについて、倫理的ジレンマが生じる場面がある。日本集中治療医学会会員看護師の蘇生不要指示に関する現状・意識調査によれば、終末期であること以外に、高齢、認知症、身寄りがない、日常動作が制限されているなどの要素でDNARを検討する状況となっており、適応を超えたDNR指示に問題提起されている3)。過度な救命治療をしても、不適切な治療の差し控えをしても患者の利益にはならず、実際の診療現場では、倫理的ジレンマを感じている。
 救急領域では、患者や家族と初対面であることが多いうえ、本人の意思が確認できない中で、患者の意向に沿った、患者に最善のケアを行うことは容易ではなく、スタッフの不全感にもつながる可能性がある。
 そういった様々な課題がある中でも、個々の要素が強い場面でもある、人生の最終段階での看護ケアを検討する目的で、デスカンファレンスを導入した。当院は、入院ベッドを持たないER型の救急外来であるため、院外心停止の患者でのデスカンファレンスとなる。カンファレンスを開始し、患者個々の状況に合わせた看取りのためのケアについて医師・看護師で検討し、今後のケアに役立てることとした。このシンポジウムでは、この当院での取り組みを通じて、救急領域における終末期ケアについてみなさんと共に考えたいと思っている。

1)一般社団法人日本救急看護学会:「救急医療領域における看護倫理」ガイドライン、http://jaen.umin.ac.jp/pdf/nursing_ethics_guideline20130827ver.pdf  2019年3月14日閲覧
2)厚生労働省:救急・災害医療に係る現状について、第8回救急災害医療提供体制等の在り方に関する検討会参考資料2、
https://www.mhlw.go.jp/content/10802000/000360987.pdf 2019年3月14日閲覧
3)日本集中治療医学会倫理委員会:日本集中治療医学会会員看護師の蘇生不要指示に関する現状・意識調査、日集中医誌、24、244-53、2017