第15回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

シンポジウム

[SY4] クリティカルケアにおける倫理的ジレンマ

2019年6月16日(日) 10:10 〜 11:50 メイン会場 (B1F フィルハーモニアホール)

座長:明石 惠子(名古屋市立大学大学院看護学研究科)、岡田 彩子(日本赤十字看護大学)

10:55 〜 11:10

[SY4-4] 小さなことからコツコツと倫理の花を咲かせましょう

○岡林 志穂1 (1. 高知県・高知市病院企業団立高知医療センター 救命救急センター)

キーワード:倫理的感受性の向上

 当院は、がん・救命救急・総合周産期母子医療・循環器病・こころのサポート・地域医療の特徴的な6つのセンター機能を有する高度急性期を担う自治体病院です。病院全体で倫理的課題としてよく挙がる事例は、医療者の知識や認識不足、医療者間の対立などを中心とした終末期に関する事例が多くあります。
 私の所属する救命救急センターは、年間約13,000人(救急搬送総数約4,000人、ヘリ搬送総数約500人)の救急患者を受け入れています。救命救急センターへの入院患者の疾患は、重症外傷、重症脳血管障害、重症敗血症が上位を占めており、年齢別では、80歳以上が半数以上を占めています。クリティカルケア領域特有の倫理的課題に加え、患者さんが高齢化していることがより複雑に絡み、倫理的課題の本質が見えにくくなってしまっています。
 2016年度から救命救急センターの倫理的感受性の向上を目的とした取り組みを行っています。しかし、倫理的感受性の向上といっても、「倫理って何?」、「倫理って答えがないから難しい」、「倫理とか興味ない」などの言葉が多く聞かれる中からの取り組みの開始でした。また、倫理的課題は、1+1=2といった簡単なものではなく、正解があるものでもないこと、医療者個々の内的価値に左右されてしまうことなどから、倫理的感受性を向上させていくことは棘の道でした。
 今年で取り組みも4年目となりました。倫理を考えるための基盤作りから始まり、繰り返し倫理的課題に関する事例検討を行いながら視点を広げていきました。また、倫理的にもやもやすると気軽に声を出せるような環境作りを行いました。数値的な評価としては難しいですが、「倫理的にもやもやする」と声に出し、そのもやもやする事例をJonsenの4分割表を用いてチームで検討することなど主体的に行う変化がみられるようになっており、感覚的に倫理的感受性が向上してきている印象があります。        
 これまでの取り組みから倫理的課題が生じる要因として大半を占めているのは、患者・家族・医師・看護師間での十分な対話が不足していることが見えてきました。また、医療者として部署として組織として、倫理的感受性を向上させ、倫理的課題に取り組んでいくためには、標題にしているように、小さなことからコツコツと倫理の花を咲かせていくことに尽きるのではないかと考えます。
 今回、4年間の取り組みについて紹介させていただき、皆様とのディスカッションを通して、倫理的感受性をさらに向上させていくためのヒントを得たいと思います。