The 15th Annual Meeting of Japan Academy of Critical Care Nursing

Presentation information

Oral presentation

[SY6] 近未来のクリティカルケア看護を創造する

Sun. Jun 16, 2019 2:20 PM - 3:50 PM メイン会場 (B1F フィルハーモニアホール)

座長:芝田 里花(日本赤十字社和歌山医療センター)、佐々木 吉子(東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科)

2:35 PM - 2:50 PM

[SY6-2] SY6-2

○箱崎 恵理1 (1. 千葉県看護協会 ちば訪問看護ステーション)

Keywords:クリティカルケア看護、在宅、地域包括ケア、医療の継続性

 救命救急や重症集中治療に携わる多くの看護師が、患者家族の尊厳を守りながら、医療の質を上げるためにクリティカルケア看護を学び、研鑽を重ねている。しかし、近年の医療体制の変化を受け、救急外来や集中治療室だけでは、十分な看護ができないと気付いている。医療・看護の対象は生活を営んでいる人々であり、その一生が病院施設の中だけで完結することはないからである。
 私が所属した高度救命救急センターでは、当時の在院日数短縮の流れを受けて看護師が退院調整をしていた。その中で割り切れない思いを経験している。例えば、有料老人ホームに入居中の90歳代の人が、フレイル(frail)を超えて老衰に至る過程の中で、心不全による呼吸困難を併発し、第三次救命救急センターに搬送されたケースがあった。Living Willがなく、親族の強い希望があって高度救命処置を実施した。また、事故で広範囲熱傷を受傷し、気管切開をして車いす生活ができるようになった70歳代のケースでは、在宅につなげるために、呼吸管理と摂食嚥下、精神面への支援が必要であった。かかりつけ医では対応しきれないとのことで、近隣で入所できる施設をあたったが、見つけることが出来ず、180㎞以上離れた県外の病院に転院した。結果、自宅へ帰るきっかけを失った。多くの人々の救命を使命とした病院施設であるが、傷病者を受け入れる際は入口を大きく開けているものの、退院という出口に、患者家族の尊厳や生活の質の担保が添えられなかった反省があった。
 平成29年の全国メディカルコントロール協議会連絡会「救急医療に関わる医療計画の見直しについて」の報告では、高齢者の搬送割合が増加傾向にあり、平成27年度には5割以上を占めていた。そして、二次及び三次救急医療機関において救急搬送された後、来院方法に関わらず、8割程度が帰宅し2割程度が入院していた。救急搬送人員の伸びは、高齢者が多く、重症度別では軽症・中等症が多かった。従来の急性期と慢性期という枠組みだけではとらえきれず、ホリスティックな看護の提供が求められている。
 この社会情勢の中で、病院施設内のクリティカルケア看護ができることは、重篤な状態にある患者家族へ意思決定支援に加え、病院施設の円滑な受け入れ体制の整備や退院問題に対応するため、かかりつけ医や介護施設等の看護関係者と連携・協議をする体制を構築することであると考える。これらを展開する前提には、看護師が患者の身体や精神状態、社会的背景、臨床判断を正確に把握し、包括できる高いアセスメント能力とマネジメント能力を持つ必要がある。
 また、今後発展していく地域包括ケアシステムでは、在宅での医療依存度の高い人々に介入することが期待できる。医療機器が在宅で使用され、身体状況を把握し生活の支援をするために有用である。
 在宅とクリティカルケア看護には共通点が多い。患者の身体状況を総合的にアセスメントし自らの行動を判断すること、臨機応変の対応が求められることなどがその例である。救命救急医療の偏在が指摘され、医療計画の見直しが行われている中、看護師自身もその政策に遅れず看護供給体制を考えたい。
 私たちは医療者の思い込みを患者・家族に押し付けていないだろうか。病院は治療優先であり、患者・家族が病院の仕組みに合わせるが、在宅ではその人の身体に合わせてチームが編成される。そして家族がチームの中心にいる。病院から在宅への医療・看護の継続性と生活の統合が、これからの私自身の課題である。