第15回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

シンポジウム

[SY7] 現場教育の実践と課題

2019年6月16日(日) 14:20 〜 15:50 第1会場 (2F レセプションホール)

座長:江口 秀子(鈴鹿医療科学大学)、田村 冨美子(聖路加国際病院)

14:35 〜 14:50

[SY7-2] ICUにおけるスタッフ育成への看護師長としての取り組み

○中村 香代1 (1. 独立行政法人国立病院機構 災害医療センター)

キーワード:若手看護師 中堅看護師 看護の見える化

 看護師長として私が大切にしていることは、自分自身がクリティカルケア看護に対する挑戦を続け、より多くの看護師にその魅力に一緒にとりつかれてもらえるように力いっぱい伝える、という意識です。そのためにはあらゆる情報をいち早く仕入れ、適切なタイミングで看護師それぞれのキャリアニーズに合った、場や機会を提供することができるよう努力しています。病棟の中で、一人の看護師がやる気に満ちて輝くと、周囲の看護師もまた刺激を受けて求めるようになったり、同僚に負けまいと頑張ったりする様子が伝播するのを感じます。それぞれのスタッフが、特性を生かして活躍できるように支援するためには、スタッフをよく知り理解すること、信頼しあうことが絶対条件です。看護師長として、看護師一人一人との会話を大切にして、個々のキャリアニーズを一緒に確認し、現実的に計画を立てるプロセスを大切に、丁寧に行うように心掛けています。
 ICUは、日常的に重症患者を短いサイクルで受け入れるという病棟の特徴から、重症患者の病態アセスメント力をつけること、速い展開に業務が追い付くことに優先度を置いた教育計画を立てています。当病棟は、スタッフの半数が1~3年目看護師で構成されており、患者さんを受け持ち、一日の患者さんのスケジュールを調整、管理するのがこの若手看護師中心となります。そのため、できるだけ早く実践能力を身につけることが期待され、中堅看護師は若手看護師の知識、技術習得を支援することがOJT教育の中心となります。
 若手看護師は、知識・技術は未熟でありながらも、日々、ベッドサイドで患者さんとの時間を一番多く持ち、実にたくさんの情報を得て、患者さんとともに笑い、泣き、精一杯看護をしています。この一つ一つの関りを埋もれさせず「見える化」させたいと考えて、2~3年目の若手看護師の課題の一つである重症患者病態アセスメント学習をもとに、その後中堅看護師から教育を引き継いで、ケーススタディとしてまとめるための指導に取り組むことにしました。若手看護師たちは、問いを繰り返すと素直に自分の言葉で看護を表現することができる、ということに驚かされます。一つ一つの関りが、その患者さんにとってどのような意味があったのか、若手看護師たちと何度もやり取りをしていくと、ケーススタディとして看護の「見える化」が実現していきます。
 若手看護師の知識、技術の教育を中心に担当している中堅看護師たちが、重症患者の全人的個別患者アセスメント力を向上させ、さらにはそれを若手看護師に伝える力を高められれば、ICUの看護の質が向上することは間違いありません。中堅看護師のリーダーシップ課題への取り組みのグループディスカッションをみると、他者の話を聞き困っているメンバーを助ける能力が高いことに感心します。これは、リーダーとしてカンファレンスを運営したり、スタッフの意見を聞いたりする役割を通して身につけた能力であると考えます。一方、自身の実践を語り看護を言葉で表現することには、難しさを感じているということも分かりました。クリティカルケアを受ける患者さん一人一人を、生活者として個別にとらえ、その人の最善を支えることができるチームとしてスタッフ同士が学び合い、患者さんとの関りから看護を高めることができるといった、相乗効果を得ることができる病棟づくりが課題であると考えています。