第16回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

アドバンスセミナー

[AS5] クリティカルケア看護への覚悟 ~ 患者と向き合い共に紡ぐ ~

演者:亀井 有子(市立岸和田市民病院)

[AS5] クリティカルケア看護への覚悟 ~ 患者と向き合い共に紡ぐ ~

○亀井 有子1 (1. 市立岸和田市民病院)

キーワード:よりよさ、考え抜くプロセス、覚悟

 看護の本質は対人的なケアであり、看護師と患者・家族の双方向の関係性の中で、よりよさを見つけ出していくものと考えます。自分とは同じではない患者・家族の多様性を理解しようと、人生という物語に巻き込まれ、よりよさを探し出そうと徹底して考え抜く。その考えぬくプロセスに必要なのは、看護を実践する覚悟なのではないでしょうか。
 よりよい看護を提供したいと思い続けてきました。よりよい看護は何かと考え、ひとつひとつのケアの根拠を追求し、生物学的生命の最善を選択していました。生命を救いたいと願って懸命にケアしていた患者から「何年生きられるかより、どのように生きたいかを考えている。生きるにしても、死ぬにしても管を入れる(気管挿管)のは嫌だとずっとずっと思ってきた。」というメッセージを受け取った時、私自身が追い求めていたよりよい看護は、患者のよりよさではないと理解することができました。患者に思いをよせていたつもりでしたが、立ち止まって患者と向き合っていなかったように思います。
 患者や家族にとってよりよい決定や、今の現在もこれからの未来もよりよいための選択は、患者や家族の生きてきた人生の延長上にしかないと思います。患者や家族を尊重した決定や選択のために看護を実践する者は、患者と向き合い、巻き込まれながらも踏みとどまり考え抜こうとする勇気と覚悟が必要だと思います。それは、看護師の責任でもあると考えています。
 患者や家族との距離の置き方や声をかけるタイミングなどに悩んだ日々を送りながら、経験を積んだり年を重ねたりすることで、いつかは先輩のようにカッコよくこなせるようになると信じていました。しかし、よりよい看護を提供することを目標に挑戦するようになり、たくさんの患者や家族に出会い、何とかしなければという思いを持ち続け「クリティカルケア看護への覚悟」が備わり、患者・家族と共に紡ぎ、答えを考え抜くようになってきました。
 アドバンスセミナーでは、自分自身が出会った患者や家族との関わりを通じて得られた「クリティカルケア看護への覚悟」について述べ、臨床の看護実践のエッセンスになればよいと思います。