第16回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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アドバンスセミナー

[AS6] クリティカルケア看護とエンド・オブ・ライフケアの連続性

演者:北村 愛子(大阪府立大学)

[AS6] クリティカルケア看護とエンド・オブ・ライフケアの連続性

○北村 愛子1 (1. 大阪府立大学)

Keywords:クリティカルケア看護 、エンド・オブ・ライフケア

 クリティカルケア看護領域では生死に直面しながらケアをすることが多く、特にクリティカルケアに携わる医療チームは、医学医療の進歩と共に複雑な病態に対する治療やケアが提供できるようになったため、救命処置や、集中治療の目的である『いのちを救う』ことに専心してチーム活動を行う。しかしながら、生命徴候が回復の傾向を来さない時、あるいは治療が全く功を奏しない時、クリティカルケア看護の実践の場においては、集中治療を遂行し生還をめざすための看護支援から、治療の限界に伴い死と向き合いながら苦痛を緩和するケアに移行することがある。
 この移行のプロセスの中で、クリティカルケアに携わる看護師は、患者の生命危機状態よって家族が時間や関係性、自律性が失われ悲しみを感じていることに対して、倫理的で臨床的な洞察力と細やかな配慮が必要とされることを認識してはいるが、どうケアしていいのか戸惑うこともある。生死に直面した患者と家族がその出来事や状況に対して感情・心情・行動などの経験を時間と結び付け、人生の移行ができるように支えるトランジショナルケアを実践することで、クリティカルケア看護とエンド・オブ・ライフケアの連続性を支えるケアを展開することに繋がるのではないかと考える。
 生と死の連続性を支えるケア:死に向かうためのケアとしては、人生の最終段階において身体の安楽と精神の平和を促進するためにスピリチュアルペインを含むトータルペインの観点で苦痛を緩和していくことが大切で、衝撃の中での意思決定の連続を経験する家族への倫理的配慮も欠かすことはできない。「こんなに怖くて仕方ない気持ちは初めてです。なにかしら毎日戦っている気分で、何とどう戦っているのかもわからなくて、恐ろしさを感じます。何をしても落ち着かなくて、考えてもわからないのに考える感じで」という不安を示し自己の時間的連続性を安心して過ごせない瞬間をとらえ、その苦しみを理解して緩和し看護で支えることが重要である。
 本講演では、クリティカルケア看護とエンド・オブ・ライフケアの連続性を支えるケアの看護実践力をつけるために、患者と家族、医療者が過ごす時間的連続性の中で、それぞれの人々が役割をもって人生を歩んでいるという視点も加え、トランジショナルケアの観点から講演を進める。患者のエンドオブライフに関与する人々との人間関係を保ちながら自己存在感を確認し自己実現に向かっていくニーズを支え、スピリチュアルケアと悲嘆ケア、看取りにおける人間の尊厳を大切にしたケアについて述べ、患者の人生の終わりにその人らしさを支えるトランジショナルケアの在り方を検討する。また、死にゆく患者の治療・ケアに携わる医療職者の悲しみと苦悩への対処について、自己に揺らぎを感じながらも看護師自身が癒す方法をみつけ、職業人として成長しようとする看護師へのサポートの必要性について考察し今後の課題を述べる。