第16回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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教育講演

[EL1] 混沌とした臨床現場の実態把握と論理の発見~質的統合法(KJ法)を用いた研究の取り組み~

演者:山浦 晴男(情報工房、千葉大学大学院看護学研究科)

[EL1] 混沌とした臨床現場の実態把握と論理の発見
  ~質的統合法(KJ法)を用いた研究の取り組み~

○山浦 晴男1 (1. 情報工房、千葉大学大学院看護学研究科)

Keywords:質的研究法、質的統合法(KJ法)

 患者個々人を対象にケアを提供する看護学分野でも、従来科学的の名のもとに「量的研究」が主流を占めていました。日本質的心理学会が発足して16年が経過するなかで、看護学の研究領域でも「質的研究」が多くなってきました。
 しかし実際の研究の現場では、量的研究者からは、「質的研究は主観的で科学的でない」との批判がなされてきました。最近は状況がずいぶん違ってきているように思いますが、その見方は依然として根強いのではないかと思います。
 臨床現場では患者一人ひとりの実態を、量と質の両面から把握しケアを提供しているのが実際の姿です。その意味で、両面のアプローチがセットになって初めて科学的だといえます。
 教育講演では、文化人類学者川喜田二郎氏が創案したKJ法に準拠した質的統合法(KJ法)を用いて混沌とした臨床現場の実態把握と論理の発見の道筋を、事例を介して解説します。加えて、実態把握と考察の関係と考察法についても補足します。そして、質的研究も科学的なアプローチの仕組みを持つことが可能なことお話しします。
【話題】
 1.研究のプロセス構造:書斎科学・実験科学・野外科学
 2.混沌とした臨床現場の実態把握の方法
  ・ヒントは「ジグソーパズル」にある
  ・データを統合する方法はいたって単純なルールである
  ・実態の論理の発見の意味:アブダクション
  ・実態把握の実例
  ・「学術スキル」を研く
 3.主観性の発揮と客観性の担保の仕組み
  ・データの構造:現象の映り込みと問題意識の映り込み
  ・主観性の発揮が質のよいデータをもたらす
  ・主観性の排除が実態の論理を浮上させる=客観性の担保
 4.実態把握と考察の峻別
  ・考察の技術:ロジカル・ブレスト法
  ・考察の3つの着眼点
  ・考察の実例
 5.臨床現場での応用:見える化チームマネージメント
【参考文献】
 山浦晴男『質的統合法入門 考え方と手順』(医学書院、2012年)