第16回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

教育講演

[EL3] ICUから始める早期リハビリテーション

演者:玉木 彰(兵庫医療大学大学院医療科学研究科)

[EL3] ICUから始める早期リハビリテーション

○玉木 彰1 (1. 兵庫医療大学大学院医療科学研究科)

キーワード:リハビリテーション、早期離床、 ICU

 集中治療室(Intensive Care Unit; ICU)におけるリハビリテーションは,本邦では1990年頃からごく一部の施設で実施されるようになったが,当時は呼吸器合併症の予防や改善を目的とした排痰や呼吸練習などの介入が中心であった。また実際の介入開始時期についても主治医によって異なっていたため,早期リハビリテーションという考え方が強調されてきたのは比較的最近の事である。その背景には,ICUにおける早期からのリハビリテーション介入はせん妄の発症を抑制し,人工呼吸器装着期間を短縮し,さらに身体機能の改善を促進することなどがSchweickertら(2009)によって明らかにされたことが影響している。これらを受けて本邦でも早期からのリハビリテーションへの取り組みが徐々に浸透し,2017年には日本集中治療医学会より,『集中治療における早期リハビリテーション~根拠に基づいたエキスパートコンセンサス~』が発表され,その翌年の2018年には,早期離床・リハビリテーション加算が保険点数として新設された。このように現在ではICUにおける早期リハビリテーションは通常に行われるべき介入であることが認識されている。
 それでは何故ICUにおいて早期からリハビリテーションを開始する必要があるのだろうか?現在早期リハビリテーションの考え方として,『疾患の新規発症,手術または急性増悪から48時間以内に開始する』という解釈が一般的であり,この間に可及的早期から離床などの介入を開始する必要がある。人工呼吸管理中の急性期患者に対し48時間以内のリハビリテーションを開始する意義については,ICU滞在中に発生する様々な身体および認知機能の低下が,短期的のみならず長期的予後を悪化させるという事実が大きく関係している。特にICUにおける問題として注目されているものが,集中治療後症候群(post intensive care syndrome; PICS)であり,その中の身体機能低下の代表的なものとしてICU獲得性筋力低下(ICU acquired weakness; ICU-AW)がある。これまでの研究において,不動による筋肉量の減少や筋萎縮は疾患の新規発症,手術または急性増悪から48時間以内に始まり,2~3週間以内に最大になるとされていることから,ICUで管理されている患者に対しては全身状態が許す限り,可及的早期からのリハビリテーション介入が重要であることは疑う余地がない。しかしこのような早期リハビリテーションを実施するためには,医師や看護師などの協力が絶対的に必要であり,チームで協力して進めていく必要がある。
 本教育講演では,ICUから始める早期リハビリテーションの実際について,これまでに報告されている様々な知見を基に解説する。