[O1-4] 生体侵襲下にある患者へアセスメントシートを用いたケアの検討
Keywords:清拭、アセスメントシート、PressureRateProduct
【目的】
集中治療室(ICU)に入室する患者は過大な侵襲を受けている状態で、過剰な酸素消費量の増大、代謝亢進に繋がる全身管理は患者に不利益をもたらすため、積極的な看護ケアは控えるべきとされている。一方、清拭は全身観察やコミュニケーション、皮膚の清潔や整容を目的とし、毎日実施することが推奨されている。
当院ICUでは、清拭の開始基準や中止基準はなく、実施するタイミングや中止の判断は担当看護師に委ねられていた。そこでバイタルサインのベースライン把握、禁忌評価、開始・中止基準、清拭部位選択、中止基準に該当した場合の対応、観察と記録、患者への対応等、個別性を考慮した清拭のアセスメントシートを作成し、その有効性と安全性を検討した。
【方法】
本研究は当院ICUで行われた症例対照研究である。対象は2019年1月23日から2019年10月5日に入室し、組み入れ基準を満たした患者20例を連続登録した。選択基準は人工呼吸器管理、術後、体外循環、体表面積の80%以上を清拭する患者とし、除外基準は全身熱傷、陰部洗浄や部分浴のみの患者とした。これらの患者のICU入室後初回の清拭介入を評価した。
従来通り清拭を実施した患者を対照群、アセスメントシートを用いて清拭を実施した患者を介入群とし、清拭前・清拭後・体位変換後のPressure Rate Product(PRP)を測定し、7000から12000を正常とした。清拭前・清拭後・体位変換後のPRPを正常・逸脱の2群に分け、対照群と介入群のPRP逸脱症例の割合をχ2検定した。統計解析は統計ソフトJMP®を用いた。
患者本人からの同意取得が困難であるため、代諾者(家族等)に調査協力の諾否によって対象者が不利益を被らないことを説明の上文書同意を得た。本研究実施に際し、対象施設倫理審査委員会の承諾を得た上で実施した。
【結果】
対照群と介入群で年齢、性別、心疾患の有無、カテコラミンや鎮痛薬の使用割合、重症度スコアに有意差は無かった。介入群では、アセスメントシートの利用により開始基準非該当1例、中止基準該当1例であり、清拭は介入していない。清拭前のPRP逸脱は対照群6例(60%)、介入群4例(40%)であった。清拭後のPRP逸脱は対照群7例(70%)、介入群4例(40%)であった。体位変換後のPRP逸脱は対照群7例(70%)、介入群2例(20%)であった。(p=0.0213)なお、介入群で清拭前は正常であったPRPが清拭後に逸脱し、体位変換後に正常化した例があった。
【考察】
介入群で清拭を実施していない2例は、過大侵襲を防いだ視点からアセスメントシートを使用する意義があると考える。体位変換後のPRP逸脱割合は介入群に比較して有意に対照群で高く、生体侵襲下にある患者に対し状態を評価せずに清拭を行うことは過大侵襲となる可能性がある。また、介入群で清拭後に一時PRPが逸脱した例があった。清拭には気管吸引や体重測定、更衣など付随する看護ケアがあり一時PRPの変動を来すが、アセスメントシートに則ったケアを行う事で、逸脱したPRPを正常範囲内におさめる可能性が示された。以上の結果から禁忌や開始基準、中止基準を踏まえたアセスメントシートの有効性と安全性が示された。対照群でアセスメントシートを当てはめた場合、開始基準非該当例は5例、中止基準該当例は3例であることから、アセスメントシートを用いればバイタルサインの変動を最小限に抑えられた可能性がある。
集中治療室(ICU)に入室する患者は過大な侵襲を受けている状態で、過剰な酸素消費量の増大、代謝亢進に繋がる全身管理は患者に不利益をもたらすため、積極的な看護ケアは控えるべきとされている。一方、清拭は全身観察やコミュニケーション、皮膚の清潔や整容を目的とし、毎日実施することが推奨されている。
当院ICUでは、清拭の開始基準や中止基準はなく、実施するタイミングや中止の判断は担当看護師に委ねられていた。そこでバイタルサインのベースライン把握、禁忌評価、開始・中止基準、清拭部位選択、中止基準に該当した場合の対応、観察と記録、患者への対応等、個別性を考慮した清拭のアセスメントシートを作成し、その有効性と安全性を検討した。
【方法】
本研究は当院ICUで行われた症例対照研究である。対象は2019年1月23日から2019年10月5日に入室し、組み入れ基準を満たした患者20例を連続登録した。選択基準は人工呼吸器管理、術後、体外循環、体表面積の80%以上を清拭する患者とし、除外基準は全身熱傷、陰部洗浄や部分浴のみの患者とした。これらの患者のICU入室後初回の清拭介入を評価した。
従来通り清拭を実施した患者を対照群、アセスメントシートを用いて清拭を実施した患者を介入群とし、清拭前・清拭後・体位変換後のPressure Rate Product(PRP)を測定し、7000から12000を正常とした。清拭前・清拭後・体位変換後のPRPを正常・逸脱の2群に分け、対照群と介入群のPRP逸脱症例の割合をχ2検定した。統計解析は統計ソフトJMP®を用いた。
患者本人からの同意取得が困難であるため、代諾者(家族等)に調査協力の諾否によって対象者が不利益を被らないことを説明の上文書同意を得た。本研究実施に際し、対象施設倫理審査委員会の承諾を得た上で実施した。
【結果】
対照群と介入群で年齢、性別、心疾患の有無、カテコラミンや鎮痛薬の使用割合、重症度スコアに有意差は無かった。介入群では、アセスメントシートの利用により開始基準非該当1例、中止基準該当1例であり、清拭は介入していない。清拭前のPRP逸脱は対照群6例(60%)、介入群4例(40%)であった。清拭後のPRP逸脱は対照群7例(70%)、介入群4例(40%)であった。体位変換後のPRP逸脱は対照群7例(70%)、介入群2例(20%)であった。(p=0.0213)なお、介入群で清拭前は正常であったPRPが清拭後に逸脱し、体位変換後に正常化した例があった。
【考察】
介入群で清拭を実施していない2例は、過大侵襲を防いだ視点からアセスメントシートを使用する意義があると考える。体位変換後のPRP逸脱割合は介入群に比較して有意に対照群で高く、生体侵襲下にある患者に対し状態を評価せずに清拭を行うことは過大侵襲となる可能性がある。また、介入群で清拭後に一時PRPが逸脱した例があった。清拭には気管吸引や体重測定、更衣など付随する看護ケアがあり一時PRPの変動を来すが、アセスメントシートに則ったケアを行う事で、逸脱したPRPを正常範囲内におさめる可能性が示された。以上の結果から禁忌や開始基準、中止基準を踏まえたアセスメントシートの有効性と安全性が示された。対照群でアセスメントシートを当てはめた場合、開始基準非該当例は5例、中止基準該当例は3例であることから、アセスメントシートを用いればバイタルサインの変動を最小限に抑えられた可能性がある。