第16回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

[O1] 医療安全・感染管理

[O1-5] 先進救急医療センターにおける看護師管理中の歯ブラシに残る細菌数の実態

○村上 智恵1、相楽 章江1、山中 聖美1、岩本 裕子1、小嶋 慶子1、田戸 朝美2 (1. 山口大学医学部附属病院 先進救急医療センター、2. 山口大学大学院医学系研究科)

キーワード:口腔ケア、歯ブラシ、細菌数

Ⅰ.はじめに
近年、口腔ケアは重要視され、日常生活援助の視点から感染予防の視点へと変化している。先進救急医療センター(以下Aセンター)では、患者の状態に応じて、ジェルまたは歯磨き剤を選択して口腔ケアを実施している。口腔ケアの物品の管理は、看護師個人の裁量に任されているのが現状である。我が国のクリティカルケア領域で、口腔ケア物品の管理方法の根拠を示したものはなく、その根拠となり得ないかと考え実態調査をしたので報告する。

Ⅱ.目的
Aセンターにおける、看護師が管理する歯ブラシに残る細菌数の実態を明らかにすることである。

Ⅲ.方法
1.期間:2018年10月24日~2019年12月31日
2.対象:Aセンターに入室し、非気管挿管患者(挿管管理後に抜管した患者は可)、年齢20歳以上、性別不問、自歯が1本以上ある、口腔ケア物品を看護師が管理する患者とした。現行の2種類の方法であるジェルと歯磨き剤を使用した群をそれぞれ、ジェル群と洗口液群と命名し、対象とした。歯磨き剤は、種類が異なるため、洗口液を一律に使用した。

3.方法:洗浄方法は7秒間とし、流水で歯ブラシの毛を5往復指で擦り洗う方法とした。使用後の歯ブラシは、専用コップに毛先が触れないように入れて、乾燥をさせた。

4.分析:対象となった日からの5日間で、口腔ケア前、ブラッシング後、洗浄後、洗浄後6時間の4点で、細菌数を細菌カウンター(Panasonic;DU-AAO1NP-H)で、ATP値をCliean-TraceTMNGi®(3M)を用いて測定した。
データの分析にあたり、四分位範囲を確認し極値を除外した。分析は、統計ソフトSPSS Ver.17を使用した。

5.倫理的配慮:当該施設の臨床研究倫理審査委員会の承認を得て実施した。また、2016年度中西睦子看護研究助成金を使用した。

Ⅳ.結果
分析対象となったのは、ジェル群:14例、洗口液群:13例であった。平均年齢は、ジェル群:65.28(±12.63)歳、洗口液群:59.15(±19.39)歳であった。
そのうち分析対象回数は、ジェル群は47回、洗口液群は38回で、同一群内の細菌数とATP値における結果を比較した。
ジェル群では、ブラッシング後の歯ブラシのATP値は593961RLU、洗浄後のATP値は859RLUで、洗浄後に有意な低下を認めた。洗口液群では、ブラッシング後の歯ブラシのATP値は108024RLU、洗浄後のATP値は276RLUで有意な低下を認めた。ジェル群、洗口液群ともに同一群内のブラッシング後と洗浄後以外のタイミングでは、有意差を認めなかった。ジェル群、洗口液群ともに、同一群内のどのタイミングにおいても細菌数に有意差を認めなかった。

Ⅴ.考察
歯ブラシは口腔内に入れる器具であり、Cliean-TraceTMNGi®(3M)に明示されている食品衛生管理上の合格基準と照らし合わせた。その結果、ジェル群は、Cliean-TraceTMNGi®(3M)に明示されているATP合格基準のシンクよりも高く、洗口液群はまな板よりも高値であった。これらの数値から、現行の洗浄方法や乾燥時間では、ジェル群、洗口液群ともに歯ブラシに活性化された菌が多く残っていると考える。

Ⅵ.結論
ジェル群と洗口液群ともに、ブラッシング後と洗浄後に活性化した細菌が多く残っていた。口腔ケア前や洗浄後6時間のATP値は、低下した。歯ブラシを十分に乾燥させることで活性化した菌が減少することが分かった。現行の洗浄方法では、活性化した菌を洗い流すことが出来ておらず、歯ブラシの洗浄方法、管理を変更する必要がある。