第16回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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一般演題(口演)

[O2] 呼吸・循環

[O2-9] 胸骨圧迫の質の低下に関する実際と自覚との乖離
―看護大学生と看護師の比較―

○松山 大地1、原口 昌宏2、松本 和史2 (1. 板橋中央総合病院、2. 東京医療保健大学)

Keywords:胸骨圧迫、看護学生、BLS、看護師

【目的】
看護大学生と看護師との間に、1)胸骨圧迫の質2)実際の胸骨圧迫の質と質低下の自覚との乖離時間に差があるかどうかを検証する。
【方法】
BLSの演習経験がある看護大学生29名、救急・集中治療領域の経験がある看護師25名を対象とした。Laerdal Medical社製Resusci Anneで胸骨圧迫を5分間実施し、胸骨圧迫の質低下を自覚した時点(自覚点)を口頭で研究者に報告した。胸骨圧迫の質として、10秒区間毎にテンポ、深度、胸壁の戻り、圧迫部位を測定した。適正率(適正深度圧迫回数/総圧迫回数)が80%未満となった点を臨界点とした。自覚点から臨界点までの時間を乖離とした。分析方法は2群間で胸骨圧迫の質および乖離をMann-Whitney U検定を用いて比較した。
【倫理的配慮】
所属研究機関の倫理委員会の承認を得て実施した。
【結果】
胸骨圧迫の質は、深度では、学生群(41.6mm±6.7)、看護師群(47.1mm±4.3)と学生群が有意に浅く(p=0.001)、適正率では、学生群(27%±25.5)、看護師群(43.4%±28.2)と学生群が有意に低かった(p=0.007)。さらに乖離時間は、学生群(41.7秒±57.5)、看護師群(51.9秒±52.3)と両群で有意差はなかった(p=0.411)。(表1)
【考察】
5分間の圧迫深度は、両群とも疲労などの影響により、ガイドライン(AHA 2016)推奨値に達していない。特に学生群は看護師群と比較して、適正率は低値であり、胸骨圧迫の技術不足があったと考えられる。原因としては、臨床経験やライセンス取得によるものが一因と考えられる。先行研究(McDonald et al.2015)同様に乖離の存在を認め、救助者は適切な胸骨圧迫を提供できないことを認識できないことが示唆された。両群で乖離時間に差がなく、技術の客観的評価は経験により向上はしないと考える。以上から、自覚点と臨界点との間には乖離が存在し、なおかつ経験に左右されるものではないことを意識しておく必要がある。質低下の自覚は正確性に乏しいため、自覚よりも早い交代要請、または第三者の交代指示が必要と考えられる。
【結論】
両群ともにガイドライン推奨値よりも深度は浅く、特に学生群は、適正率が低かった。両群とも質低下の自覚が遅れて生じており、実際の質低下との乖離時間に有意差はなかった。
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