[O3-7] ICU管理にある消化器系術後患者の身体抑制体験
キーワード:ICU、消化器系手術、身体抑制
【目的】A病院ICUでは、せん妄評価ツールやJ-PADガイドラインを参考に独自にケアプロトコールを作成し、消化器系術後患者の安全管理上、医療者チームがやむを得ないと判断した場合に限り、一時的な身体抑制を行ってきた。しかし、退室後訪問で患者が身体抑制による恐怖体験を語ったことから、患者の主観的な身体抑制体験を理解することが抑制による苦痛に対する緩和や、早期解除に向けたケアの検討において有効と考え、本研究の目的を、ICU管理にある消化器系術後患者の身体抑制体験を明らかにすることとした。
【用語の定義】身体抑制:物をつかむ動作の回避のためのミトンを用いた手関節から手指の運動抑制。体験:ICU入室後に一時的な身体抑制を受け、感じ考え、行動したこと。
【方法】
1.研究デザイン:質的記述研究
2.研究参加者:消化器系開腹術を受け胃管など複数のドレーン類が留置され、ICDSC3点以下で厚生省身体拘束予防ガイドライン等に基づき一時的にやむを得ないと多職種チームが判断し、ミトンによる身体抑制を受けた後に研究参加への同意が得られた壮年期以降の患者。
3.データ収集方法:独自に作成したインタビューガイドを用いて1回30分程度の面接を実施し、その内容は研究協力者の同意を得てICレコーダーに録音した。また、研究参加者についてカルテから年齢、既往、術式、手術時間、ドレーン種類、NRS、鎮痛剤・睡眠導入薬剤の使用状況、睡眠状態、ICDSC変化、術後リハビリ状況を収集した。
4.分析方法:インタビュー内容を逐語録に起こし、コード化しカテゴリー化した。カテゴリー間の因果関係や相互関係に着目し、院内研究支援者の指導・助言を受けながら分析を行った。
5.倫理的配慮:本研究は院内倫理委員会の承認を得た。研究参加者に研究の目的・方法、研究参加及び途中辞退の自由意思の尊重、プライバシーの保護、データの取り扱いや結果の公表は口頭及び文書で説明し同意を得た。面接は患者の体調を考慮しICU退室後に行った。
【結果】研究参加者は6名、平均年齢78.6歳、男性2名女性4名で、過去の手術経験者は2名で身体抑制経験者はいなかった。平均手術時間は2時間34分、平均麻酔時間は3時間15分で、身体抑制を受けた期間は術直後から翌朝と、術後1日目の夜間であった。ICU管理にある消化器系術後患者の身体抑制体験は、26のサブカテゴリ―から【術後疼痛体験により身体抑制の不快を感じる余裕の無さ】【目視や触覚による身体抑制の気付きと不快な手触り・締め付けから波及する抑制上肢の重圧感】【身体抑制の記憶と身体抑制の長期化への抵抗感】【ドレーントラブルを懸念しての身体抑制を受けるという自己対処】【身体抑制を受ける理由が見いだせない中での強い拒否】【家族や看護師からの支えによる不快の軽減】の6つのカテゴリーが抽出された。
【考察】患者は、全身麻酔による影響、術後疼痛により身体抑制を意識する余裕はなかったが、その緩和と共に視覚や触覚を通して身体抑制に気づき、不快な手触り、締め付け、そして上肢全体へと重圧感を拡大していた。患者は、抑制の長期化への苦痛増大を懸念しながらも他者による説明で理解納得し自己抜去の回避など自ら対処していた。一方で、身体抑制の意味や状況が掴めず抵抗感を募らせ、その対処として排除を試みており、家族からの励ましや看護師の声掛けはその抵抗感を和らげて状況理解を促していた。患者の体験をふまえ、全人的苦痛緩和、合併症予防、術前ミトン装着体験による肯定的受け止めへの支援、医療者・家族による状況理解の促しなど、患者の状況認識を促し自らがリスクに対処できるよう支援することの重要性が示唆された。
【用語の定義】身体抑制:物をつかむ動作の回避のためのミトンを用いた手関節から手指の運動抑制。体験:ICU入室後に一時的な身体抑制を受け、感じ考え、行動したこと。
【方法】
1.研究デザイン:質的記述研究
2.研究参加者:消化器系開腹術を受け胃管など複数のドレーン類が留置され、ICDSC3点以下で厚生省身体拘束予防ガイドライン等に基づき一時的にやむを得ないと多職種チームが判断し、ミトンによる身体抑制を受けた後に研究参加への同意が得られた壮年期以降の患者。
3.データ収集方法:独自に作成したインタビューガイドを用いて1回30分程度の面接を実施し、その内容は研究協力者の同意を得てICレコーダーに録音した。また、研究参加者についてカルテから年齢、既往、術式、手術時間、ドレーン種類、NRS、鎮痛剤・睡眠導入薬剤の使用状況、睡眠状態、ICDSC変化、術後リハビリ状況を収集した。
4.分析方法:インタビュー内容を逐語録に起こし、コード化しカテゴリー化した。カテゴリー間の因果関係や相互関係に着目し、院内研究支援者の指導・助言を受けながら分析を行った。
5.倫理的配慮:本研究は院内倫理委員会の承認を得た。研究参加者に研究の目的・方法、研究参加及び途中辞退の自由意思の尊重、プライバシーの保護、データの取り扱いや結果の公表は口頭及び文書で説明し同意を得た。面接は患者の体調を考慮しICU退室後に行った。
【結果】研究参加者は6名、平均年齢78.6歳、男性2名女性4名で、過去の手術経験者は2名で身体抑制経験者はいなかった。平均手術時間は2時間34分、平均麻酔時間は3時間15分で、身体抑制を受けた期間は術直後から翌朝と、術後1日目の夜間であった。ICU管理にある消化器系術後患者の身体抑制体験は、26のサブカテゴリ―から【術後疼痛体験により身体抑制の不快を感じる余裕の無さ】【目視や触覚による身体抑制の気付きと不快な手触り・締め付けから波及する抑制上肢の重圧感】【身体抑制の記憶と身体抑制の長期化への抵抗感】【ドレーントラブルを懸念しての身体抑制を受けるという自己対処】【身体抑制を受ける理由が見いだせない中での強い拒否】【家族や看護師からの支えによる不快の軽減】の6つのカテゴリーが抽出された。
【考察】患者は、全身麻酔による影響、術後疼痛により身体抑制を意識する余裕はなかったが、その緩和と共に視覚や触覚を通して身体抑制に気づき、不快な手触り、締め付け、そして上肢全体へと重圧感を拡大していた。患者は、抑制の長期化への苦痛増大を懸念しながらも他者による説明で理解納得し自己抜去の回避など自ら対処していた。一方で、身体抑制の意味や状況が掴めず抵抗感を募らせ、その対処として排除を試みており、家族からの励ましや看護師の声掛けはその抵抗感を和らげて状況理解を促していた。患者の体験をふまえ、全人的苦痛緩和、合併症予防、術前ミトン装着体験による肯定的受け止めへの支援、医療者・家族による状況理解の促しなど、患者の状況認識を促し自らがリスクに対処できるよう支援することの重要性が示唆された。