第16回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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一般演題(口演)

[O4] 高度実践・家族看護

[O4-3] 高度救命救急センターに入院する患者のセルフケア能力を高める支援の探究

○森川 かさね1,2、森本 紀巳子3、加悦 美恵3、四方田 暁美1 (1. 久留米大学医学研究科看護学専攻修士課程、2. 久留米大学病院高度救命救急センター、3. 久留米大学医学部看護学科)

Keywords:セルフケア能力、セルフケア支援、高度救命救急センター

【目的】
 高度救命救急センターの看護師が患者のセルフケア能力を高める支援をどのように捉え、実践しているか明らかにする。
【方法】
対象者:4施設の高度救命救急センター(以下、救命センター)の看護師11名。選択の条件は、救命センター看護経験3年以上、「救急看護師のクリニカルラダー」レベルⅢ、「集中治療に携わる看護師のクリニカルラダー」レベルⅡ相当とし、施設代表者から紹介を得た。
調査期間:2019年9月~11月。
データ収集方法:救命センターでのセルフケア支援の捉え方、実践内容、患者のセルフケアに影響する因子などをインタビューガイドに沿って半構成的面接を実施し、対象者の許可を得て録音した。
分析方法:対象者の面接内容を逐語録にし、文節に整理した。その後類似する内容で2~3回コード化をした。次に11名の最終コードをサブカテゴリー、カテゴリー化し、さらに、カテゴリーの関連を構造化した。
倫理的配慮:本研究は久留米大学倫理委員会の承認を得た上で実施した(承認番号:19083)。
【結果】
 対象者の年齢は平均37.8±5.3歳、救急看護経験は平均9年8ヶ月±4年5ヶ月であった。救命センターでのセルフケア支援の実際について、10カテゴリーが抽出された。【看護師の役割認識】では、「セルフケア能力の拡大は看護師の責任である」と語られ、セルフケア支援を看護師の役割と認識していた。【セルフケア能力判断の困難】では、「患者の状態に変化を生じさせることが不安である」など、支援を始めることで病状悪化をもたらす不安が見受けられ、セルフケア能力の判断の難しさがあった。【セルフケア支援の開始基準】では、「患者の指示反応の有無でセルフケア支援の開始を判断する」と、意識の有無を糸口としていた。【患者の意思の尊重】では、「セルフケア能力の拡大には患者の意欲が影響する」と語られ、そのため患者の意思を尊重していた。【他職種との連携の重要性】では、セルフケア支援は看護師だけではできず、「医師や他職種とともに進めている」などの実践があった。【家族の存在意義】では、「家族も巻き込んだ支援が効果的である」と、家族の力を活用する看護があった。【生活者としての患者のイメージ化不足】では、「入院前や退院後の生活のイメージが難しく、支援できていない」と、支援の方向性が見出せない状況があった。【セルフケア支援への意志の欠如】では、「重症管理や急患対応に追われ、支援の時間がとれない」と諦める発言もあった。【患者の顕在する能力への対応】では、「患者のセルフケア能力をみて、必要な支援を判断している」と、患者ができていることに目を向けていた。【患者の潜在能力への期待】では、「救命センターの患者も自分でできることはたくさんある」という期待を持っていた。カテゴリーの構造化では、実践過程において、躊躇する時期、実践の時期、振り返りの時期があり、【看護師の役割認識】の基盤がみられた。
【考察】
 救命センターでは、患者のセルフケアより生命の維持が優先され、治療と並行して支援を開始することに躊躇し、このことはセルフケア支援の遅れに繋がると考えられる。その背景には、看護師の判断で支援を開始する自信のなさが見受けられたが、重症患者をケアする看護師の葛藤であると思われる。また、看護師の役割を意識して、患者に向かう姿勢もみられたが、救命センターでのセルフケア支援を諦めている看護師がいることは懸念される。今後の救命センターでのセルフケア支援は、患者の潜在能力に着目して、早期に支援を開始し、患者のセルフケア能力の向上に繋ぐ看護実践が求められる。