[O5-5] 開設4年目になるA病院ICU看護師の自己効力感の特徴 -GSESを用いた一般病棟との比較-
Keywords:自己効力感、ICU看護師、GSES
目的:
ICU未経験者約7割の看護師で構成され、新規に立ち上げたA病院ICUにおいて、開設4年目のICU看護師の自己効力感の特徴を明らかにし自己効力感を高めるための方法を考察する。
方法:
質問紙調査による記述的研究デザイン。対象はA病院に勤務するICU看護師と一般病棟看護師とし、除外基準は師長・副師長・臨床経験3年目以下とした。質問内容は①基本的属性②自己効力感の程度を測定する尺度であるGSES③職務意識に関する質問7項目とした。
結果:
ICU所属の対象看護師42名のうち有効回答数は42名(回収率100%)であった。(以下、ICU群)。一般病棟の対象者選択は外科・内科に偏りがないよう、消化器内科、整形外科、混合病棟の3病棟に協力を依頼した。対象看護師64名のうち有効回答数は42名(回収率65%)であった(以下、一般病棟群)。2群間の基本的属性において違いが見られた項目は性別(p=0.02)のみであり、経験年数などその他の項目に差は見られなかった。またICU群の中でICU未経験で配属されたのは24名(67%)であった。GSES(0点〜16点)の平均値はICU群5.1±2.8点、一般病棟群6.1±3.1点であった。GSESは「非常に高い」から「非常に低い」まで5段階に分類できる尺度であり、「非常に高い~普通」までを「GSES高い群」、「低い傾向~非常に低い」を「GSES低い群」として分析を行った。「GSES高い群」はICU群3名(7%)、一般病棟群14名(33%)であり、カイ2乗検定の結果ICU群では「GSES高い群」が有意に少なかった(p=0.003)。また、職務意識に関する質問項目についてICU群と一般病棟群で比較した結果、ICU群では仕事満足度が高い(p=0.001)、辞職希望が少ない(p=0.011)、人間関係が良好(p=0.047)という結果であった。職務意識に関する自由記載でICU群に多かったカテゴリーは「患者の回復過程」「人間関係が良好」であり、一般病棟群では「上司が評価してくれる」「患者や家族に感謝される」など「他者からの承認」のカテゴリーに含まれる回答が最も多かった。しかし、ICU群ではこの「他者からの承認」に含まれる回答は見られなかった。
考察:
A病院ICUでは「GSES高い群」に属する人数が一般病棟より有意に少なく、さらにGSESの平均値も先行文献と比較すると低かった。A病院ICUの特徴は、新規開設ICUにて各部署から看護師が配置されたICU未経験者が多く、看護技術・知識の不足感を感じていることが考えられる。これは自己効力感の構成要素のうち最も重要な「個人的達成」が得にくい状況であると考えられる。さらにICUという特殊な環境では看護師の自己効力感が向上しにくいとされている。一般病棟では「他者からの承認」に関する内容が最も多かったが、ICUの患者は生命の危機的状況にあるためコミュニケーションが困難でフィードバックが少ない。つまりICUでは自己効力感の構成要素である「社会的説得」が得にくい環境である。したがって、A病院ICUはこれらの2つの要因が重なることで自己効力感が低い看護師が多いと考えられる。一方で、先行文献では自己効力感の低さと辞職率との関連が明らかになっているが、A病院ICUでは辞職希望が明らかに少なかった。この理由として職場の人間関係の良好さや重症患者の回復過程に関わることでやりがいを見出していると考えられる。本研究よりA病棟ICU看護師に対して「他者からの承認」が不足していることが明らかになった。これまで積み重ねてきた経験と看護能力を認めること、フィードバックを行うといった「他者からの承認」により自己効力感が高まり、前向きに職務に取り組むことに繋がり、さらには患者への質の高い看護提供へと繋がると考える。
ICU未経験者約7割の看護師で構成され、新規に立ち上げたA病院ICUにおいて、開設4年目のICU看護師の自己効力感の特徴を明らかにし自己効力感を高めるための方法を考察する。
方法:
質問紙調査による記述的研究デザイン。対象はA病院に勤務するICU看護師と一般病棟看護師とし、除外基準は師長・副師長・臨床経験3年目以下とした。質問内容は①基本的属性②自己効力感の程度を測定する尺度であるGSES③職務意識に関する質問7項目とした。
結果:
ICU所属の対象看護師42名のうち有効回答数は42名(回収率100%)であった。(以下、ICU群)。一般病棟の対象者選択は外科・内科に偏りがないよう、消化器内科、整形外科、混合病棟の3病棟に協力を依頼した。対象看護師64名のうち有効回答数は42名(回収率65%)であった(以下、一般病棟群)。2群間の基本的属性において違いが見られた項目は性別(p=0.02)のみであり、経験年数などその他の項目に差は見られなかった。またICU群の中でICU未経験で配属されたのは24名(67%)であった。GSES(0点〜16点)の平均値はICU群5.1±2.8点、一般病棟群6.1±3.1点であった。GSESは「非常に高い」から「非常に低い」まで5段階に分類できる尺度であり、「非常に高い~普通」までを「GSES高い群」、「低い傾向~非常に低い」を「GSES低い群」として分析を行った。「GSES高い群」はICU群3名(7%)、一般病棟群14名(33%)であり、カイ2乗検定の結果ICU群では「GSES高い群」が有意に少なかった(p=0.003)。また、職務意識に関する質問項目についてICU群と一般病棟群で比較した結果、ICU群では仕事満足度が高い(p=0.001)、辞職希望が少ない(p=0.011)、人間関係が良好(p=0.047)という結果であった。職務意識に関する自由記載でICU群に多かったカテゴリーは「患者の回復過程」「人間関係が良好」であり、一般病棟群では「上司が評価してくれる」「患者や家族に感謝される」など「他者からの承認」のカテゴリーに含まれる回答が最も多かった。しかし、ICU群ではこの「他者からの承認」に含まれる回答は見られなかった。
考察:
A病院ICUでは「GSES高い群」に属する人数が一般病棟より有意に少なく、さらにGSESの平均値も先行文献と比較すると低かった。A病院ICUの特徴は、新規開設ICUにて各部署から看護師が配置されたICU未経験者が多く、看護技術・知識の不足感を感じていることが考えられる。これは自己効力感の構成要素のうち最も重要な「個人的達成」が得にくい状況であると考えられる。さらにICUという特殊な環境では看護師の自己効力感が向上しにくいとされている。一般病棟では「他者からの承認」に関する内容が最も多かったが、ICUの患者は生命の危機的状況にあるためコミュニケーションが困難でフィードバックが少ない。つまりICUでは自己効力感の構成要素である「社会的説得」が得にくい環境である。したがって、A病院ICUはこれらの2つの要因が重なることで自己効力感が低い看護師が多いと考えられる。一方で、先行文献では自己効力感の低さと辞職率との関連が明らかになっているが、A病院ICUでは辞職希望が明らかに少なかった。この理由として職場の人間関係の良好さや重症患者の回復過程に関わることでやりがいを見出していると考えられる。本研究よりA病棟ICU看護師に対して「他者からの承認」が不足していることが明らかになった。これまで積み重ねてきた経験と看護能力を認めること、フィードバックを行うといった「他者からの承認」により自己効力感が高まり、前向きに職務に取り組むことに繋がり、さらには患者への質の高い看護提供へと繋がると考える。