[O6-1] 集中治療室における早期リハビリテーション実践の実態:横断調査
Keywords:早期離床、ICU、早期モビライゼーション、実態調査、クリティカルケア
目的
近年、集中治療室(ICU)における早期からのリハビリテーション(リハビリ)の実施が推奨されており、先行研究において退院時の下肢筋力、ADL、QOL等の改善に有効であったことが報告されている。本研究では、ICUの入室患者に対するリハビリ実践状況およびICUスタッフの活動の実態を明らかにすることを目的とした。
方法
特定集中治療室管理料が算定されているICUを保有する病院(n = 580)に勤務するICU看護管理者1名と専任医師1名を対象に、無記名自記式質問紙調査を実施した。看護管理者への質問紙では、病院・ICUの施設特性(病床数、病院機能、診療報酬区分等)や人員配置体制(集中治療医の配置体制、専従理学療法士の配置、集中ケア認定看護師及び急性重症患者看護専門看護師の配置)、ICUリハビリに関するチームの活動(プロトコールの使用、過去1週間の多職種回診実施、過去1年間の院内研修実施)を尋ねた。また、調査当日のICU在室患者の特性(年齢、ICU在室日数、意識レベル;GCS、人工呼吸器使用)と各患者に対するリハビリ実践状況(調査当日のリハビリ実施レベル、ICU入室後2日以内のリハビリ開始)について記入を依頼した。専任医師への質問紙では、リハビリに関する活動の実施状況として、①リハビリの早期開始の検討、②他職種との意見交換、③毎日の目標達成度の評価、④計画立案時の患者や家族の参加の調整、の4項目について「全く行っていない」~「必ず行っている」の5件法で尋ねた。
分析は、ICUにおけるリハビリの実践状況およびチームの活動に関する変数の記述統計量を算出した。本研究は、研究代表者所属機関の倫理委員会の承認を得た上で実施した。
結果
質問紙を配布した580病院のうち92病院より返送があり(有効回答率15.8%)、ICU看護管理者92名、ICU専任医師55名の回答を得た。調査当日のICU在室患者(n = 405)の約60%に対してリハビリが実施されており、端座位より高いレベルのリハビリを受けている患者は25%だった。人工呼吸器使用患者(n=214)に限定した場合には、端座位より高いレベルのリハビリは14%の患者に対して実施されていた。2日以上ICUに在室している患者(n=295)において、リハビリが早期(ICU入室後2日以内)に開始されたのは49%だった。ICUリハビリに関するチームの活動に関して、過半数のICUでリハビリに関するプロトコール使用(64%)、多職種回診(79%)、院内研修(53%)が実施されていた。ICU専任医師の63%がリハビリの早期開始を検討し、54%が他職種と意見交換をしていた一方、毎日の目標達成度を評価していたのは18%、計画立案時に患者や家族を含めるよう調整していたのは9%であった。
考察
人工呼吸器使用患者の14%に端座位より高いレベルのリハビリが実施されているという本研究の結果は、ドイツ、米国などの先行研究(3~24%)と同程度であり、またICU入室後2日以内の早期リハビリが実施されていた患者は約半数にとどまっていた。チームの活動としてプロトコールの使用や多職種回診は一般的に実施されていたが、先行研究で重要とされている毎日の目標達成度の評価、ICUリハビリの計画に患者や家族を巻き込んだ実践は不十分な実態が示唆された。近年、本邦においてエキスパートコンセンサスの発表や診療報酬の新設により早期リハビリが推奨されているにもかかわらず、本研究の結果から、ICUの現場でのリハビリの実践が進んでいないことが推察された。本研究における有効回答率は約16%と低く代表性の点で限界があるため、結果の解釈には注意が必要である。今後、スタッフ個人の知識や技術の向上を目指した教育やチームの活動を促進する働きかけ等、ICUリハビリを進める方策の検討が必要である。
近年、集中治療室(ICU)における早期からのリハビリテーション(リハビリ)の実施が推奨されており、先行研究において退院時の下肢筋力、ADL、QOL等の改善に有効であったことが報告されている。本研究では、ICUの入室患者に対するリハビリ実践状況およびICUスタッフの活動の実態を明らかにすることを目的とした。
方法
特定集中治療室管理料が算定されているICUを保有する病院(n = 580)に勤務するICU看護管理者1名と専任医師1名を対象に、無記名自記式質問紙調査を実施した。看護管理者への質問紙では、病院・ICUの施設特性(病床数、病院機能、診療報酬区分等)や人員配置体制(集中治療医の配置体制、専従理学療法士の配置、集中ケア認定看護師及び急性重症患者看護専門看護師の配置)、ICUリハビリに関するチームの活動(プロトコールの使用、過去1週間の多職種回診実施、過去1年間の院内研修実施)を尋ねた。また、調査当日のICU在室患者の特性(年齢、ICU在室日数、意識レベル;GCS、人工呼吸器使用)と各患者に対するリハビリ実践状況(調査当日のリハビリ実施レベル、ICU入室後2日以内のリハビリ開始)について記入を依頼した。専任医師への質問紙では、リハビリに関する活動の実施状況として、①リハビリの早期開始の検討、②他職種との意見交換、③毎日の目標達成度の評価、④計画立案時の患者や家族の参加の調整、の4項目について「全く行っていない」~「必ず行っている」の5件法で尋ねた。
分析は、ICUにおけるリハビリの実践状況およびチームの活動に関する変数の記述統計量を算出した。本研究は、研究代表者所属機関の倫理委員会の承認を得た上で実施した。
結果
質問紙を配布した580病院のうち92病院より返送があり(有効回答率15.8%)、ICU看護管理者92名、ICU専任医師55名の回答を得た。調査当日のICU在室患者(n = 405)の約60%に対してリハビリが実施されており、端座位より高いレベルのリハビリを受けている患者は25%だった。人工呼吸器使用患者(n=214)に限定した場合には、端座位より高いレベルのリハビリは14%の患者に対して実施されていた。2日以上ICUに在室している患者(n=295)において、リハビリが早期(ICU入室後2日以内)に開始されたのは49%だった。ICUリハビリに関するチームの活動に関して、過半数のICUでリハビリに関するプロトコール使用(64%)、多職種回診(79%)、院内研修(53%)が実施されていた。ICU専任医師の63%がリハビリの早期開始を検討し、54%が他職種と意見交換をしていた一方、毎日の目標達成度を評価していたのは18%、計画立案時に患者や家族を含めるよう調整していたのは9%であった。
考察
人工呼吸器使用患者の14%に端座位より高いレベルのリハビリが実施されているという本研究の結果は、ドイツ、米国などの先行研究(3~24%)と同程度であり、またICU入室後2日以内の早期リハビリが実施されていた患者は約半数にとどまっていた。チームの活動としてプロトコールの使用や多職種回診は一般的に実施されていたが、先行研究で重要とされている毎日の目標達成度の評価、ICUリハビリの計画に患者や家族を巻き込んだ実践は不十分な実態が示唆された。近年、本邦においてエキスパートコンセンサスの発表や診療報酬の新設により早期リハビリが推奨されているにもかかわらず、本研究の結果から、ICUの現場でのリハビリの実践が進んでいないことが推察された。本研究における有効回答率は約16%と低く代表性の点で限界があるため、結果の解釈には注意が必要である。今後、スタッフ個人の知識や技術の向上を目指した教育やチームの活動を促進する働きかけ等、ICUリハビリを進める方策の検討が必要である。