[O6-3] 灌流指数(Perfusion Index)と手術後初回離床時の起立性低血圧に伴う血圧の関連
Keywords:早期離床、起立性低血圧、Perfusion Index、手術後
【目的】
手術を受けた患者が早期離床に至るまでの灌流指数 (Perfusion Index,以下PI)と起立性低血圧の出現に伴う血圧低下の関連の有無を明らかにする.
【方法】
対象はA病院で全身麻酔による手術後,翌日に初回離床を行った患者とし,除外基準は手術後,挿管や安静度の制限により,数日間安静を要する手術患者,頭頚部の手術患者の2点とした.調査期間は,2019年3月から4月.方法として,仰臥位の血圧を基準に,30度・60度頭部挙上,端座位,立位を行い,その過程で起立性低血圧症状が出現した患者を起立性低血圧出現群 (以下出現群),症状が出現せず立位に至った患者を起立性低血圧なし群 (以下なし群)に分けた.出現群は,仰臥位時のPIを基準に起立性低血圧が出現した時点のPIの低下率を算出し,なし群は,仰臥位時から立位時のPIの低下率を算出し比較した.分析は記述統計で対象者の概要を算出した.次に,正規性の有無の確認後に,対応のないt検定で分析を行った (有意水準は5%).また,起立性低血圧が出現する可能性のあるPIの低下率に関するカットオフ値を得るためにROC曲線を作成し,Youden Indexからカットオフ値を算出した.これらに加えて,患者背景として性別,年齢,持続硬膜外麻酔(Epidural anesthesia,以下Epi)の使用状況などを収集した.
PIの測定は耳朶で行い,Masimo社製のパルスオキシメーター Radical-7を使用した.なお,本研究は所属大学病院臨床研究審査委員会の承認を得て実施した.
【結果】
手術前日に同意説明文書を用いて説明・同意を得た56名のうち,出現群27名,なし群29名であった.出現群27名の属性は,男性16名 (59.3%),女性11名 (40.7%),年齢64.7±12.6歳 (38歳~85歳),Epi使用患者は22名(81.5%)であった.一方で,なし群29名の属性は,男性9名 (31.0%),女性20名 (69.0%),年齢56.6±13.1歳 (34歳~80歳), Epi使用患者は9名(31.0%)であった.また,研究対象となった患者の診療科は,呼吸器外科23例,消化器外科23例,婦人科5例,泌尿器外科5例であった.
両群間で,PIの低下率と起立性低血圧の有無の関連について,対応のないt検定で分析した.その結果,出現群の方がPIの低下率が有意に高かった (p<.001).
起立性低血圧が出現する可能性が高いPI低下率のカットオフ値を算出した.その結果,23.5% ( AUC:0.921,感度:0.926,特異度:0.828)であった.これをもとに,臨床での活用を踏まえ,起立性低血圧が出現する可能性が高いPIの低下率のカットオフ値を20%に定めた.
【考察】
出現群となし群の起立性低血圧の有無とPIの低下率の平均を比較した結果,PIの低下率に有意差が見出された (p<.001).これは,起立性低血圧の有無をPIの低下率でモニタリングできる可能性があることを示唆している.つまり,離床中の起立性低血圧のモニタリングとして,PI測定が新たな観察項目として併用,もしくは代替ツールとなることを示している.また,今回,カットオフ値が明らかになったことで,PIの低下率がカットオフ値に近づいた場合に離床を中断するなど,起立性低血圧の予防にも活用することができる可能性が示唆された.
本研究では患者属性との関連は分析していないため,今後は属性とPIの関係を明らかにするため,コホート研究や症例集積を行う必要がある.
手術を受けた患者が早期離床に至るまでの灌流指数 (Perfusion Index,以下PI)と起立性低血圧の出現に伴う血圧低下の関連の有無を明らかにする.
【方法】
対象はA病院で全身麻酔による手術後,翌日に初回離床を行った患者とし,除外基準は手術後,挿管や安静度の制限により,数日間安静を要する手術患者,頭頚部の手術患者の2点とした.調査期間は,2019年3月から4月.方法として,仰臥位の血圧を基準に,30度・60度頭部挙上,端座位,立位を行い,その過程で起立性低血圧症状が出現した患者を起立性低血圧出現群 (以下出現群),症状が出現せず立位に至った患者を起立性低血圧なし群 (以下なし群)に分けた.出現群は,仰臥位時のPIを基準に起立性低血圧が出現した時点のPIの低下率を算出し,なし群は,仰臥位時から立位時のPIの低下率を算出し比較した.分析は記述統計で対象者の概要を算出した.次に,正規性の有無の確認後に,対応のないt検定で分析を行った (有意水準は5%).また,起立性低血圧が出現する可能性のあるPIの低下率に関するカットオフ値を得るためにROC曲線を作成し,Youden Indexからカットオフ値を算出した.これらに加えて,患者背景として性別,年齢,持続硬膜外麻酔(Epidural anesthesia,以下Epi)の使用状況などを収集した.
PIの測定は耳朶で行い,Masimo社製のパルスオキシメーター Radical-7を使用した.なお,本研究は所属大学病院臨床研究審査委員会の承認を得て実施した.
【結果】
手術前日に同意説明文書を用いて説明・同意を得た56名のうち,出現群27名,なし群29名であった.出現群27名の属性は,男性16名 (59.3%),女性11名 (40.7%),年齢64.7±12.6歳 (38歳~85歳),Epi使用患者は22名(81.5%)であった.一方で,なし群29名の属性は,男性9名 (31.0%),女性20名 (69.0%),年齢56.6±13.1歳 (34歳~80歳), Epi使用患者は9名(31.0%)であった.また,研究対象となった患者の診療科は,呼吸器外科23例,消化器外科23例,婦人科5例,泌尿器外科5例であった.
両群間で,PIの低下率と起立性低血圧の有無の関連について,対応のないt検定で分析した.その結果,出現群の方がPIの低下率が有意に高かった (p<.001).
起立性低血圧が出現する可能性が高いPI低下率のカットオフ値を算出した.その結果,23.5% ( AUC:0.921,感度:0.926,特異度:0.828)であった.これをもとに,臨床での活用を踏まえ,起立性低血圧が出現する可能性が高いPIの低下率のカットオフ値を20%に定めた.
【考察】
出現群となし群の起立性低血圧の有無とPIの低下率の平均を比較した結果,PIの低下率に有意差が見出された (p<.001).これは,起立性低血圧の有無をPIの低下率でモニタリングできる可能性があることを示唆している.つまり,離床中の起立性低血圧のモニタリングとして,PI測定が新たな観察項目として併用,もしくは代替ツールとなることを示している.また,今回,カットオフ値が明らかになったことで,PIの低下率がカットオフ値に近づいた場合に離床を中断するなど,起立性低血圧の予防にも活用することができる可能性が示唆された.
本研究では患者属性との関連は分析していないため,今後は属性とPIの関係を明らかにするため,コホート研究や症例集積を行う必要がある.