第16回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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一般演題(口演)

[O7] 看護教育・看護倫理

[O7-1] PICSアセスメントツールの内容妥当性の検討

○江尻 晴美1、篠崎 惠美子2 (1. 中部大学生命健康科学部保健看護学科、2. 人間環境大学大学院看護学研究科)

Keywords:PICS、看護、ICU

目的:作成したPICSアセスメントツールの項目ごと・項目全体の内容妥当性の検討を行い、内的妥当性を高める。

方法:①対象者はPICSの知識を持つICU経験10年以上の看護師と集中治療に関する専門・認定看護師とした。②調査内容は、基本属性とPICSアセスメントツールの各項目を「妥当である~妥当でない」の4段階で回答を求め、項目ごとの妥当性とツール全体の妥当性を確認した。③調査方法は、郵送法による無記名自記式質問紙調査である。④分析方法は、基本属性は基本統計量を求め、Lynnの内容妥当性の定量化の方法を用いて、Content Validity Index: CVIを算出した。先行文献より、項目ごとの妥当性(I-CVI)は「妥当である、ほぼ妥当である」の割合を算出して 0.78以上を妥当とした。ツール全体の妥当性(S-CVI)は、0.90以上を妥当とした。⑤本研究は、人間環境大学研究倫理審査委員会の承認を得たのちに、研究協力施設の同意を得て実施した(2019N-001)。対象者に対して自由参加であり、個人が特定されないことなどの配慮を文書で説明した。

結果:19名を分析対象とした。ICU経験平均年数は10.8±3.4で、専門・認定看護師は5名であった。
PICSアセスメントツールのPICSのリスクに関する項目のうちI-CVIが0.78以下の項目は「70歳以上」「女性」「失業者」「面会がないか週に1~2回」であった。PICS症状のチェックに関する項目のうちI-CVIが0.78以下の項目は「酸素投与下でSpO291%以下かベースラインより2%下回り持続」「異常呼吸音がある」「衣類をだらしなく着ている」であった。PICSへの対処に関する項目のうちI-CVI が0.78以下の項目は「ICU日記」であった。
上記の結果から「ICU日記」を残し、I-CVIが0.78以下の7項目を削除した。その結果、PICSのリスクに関する項目9項目、PICS症状のチェックに関する項目30項目、PICSへの対処に関する項目32項目を採用した。S-CVIを算出した結果、S-CVI=0.902であり妥当であるとされる0.90以上を確保した。

考察:対象者は、リスクに関して年齢や性別、職業の有無を問わず、アセスメントの必要性を考えていたといえる。PICS症状のチェックでは、対象者は肺機能障害として患者のPaCO2の値をより重視していたと考える。「衣類をだらしなく着ている」は、ICUの患者の衣服が処置・観察を行いやすいように院内の病衣であることも推察され、アセスメント項目として妥当ではないと回答したと考える。また、病院の規模・役割によるICUの入退室基準の違いが回答に関係している可能性がある。
PICSへの対処の項目のうち「ICU日記」はI-CVIが0.78以下であった。しかし「ICU日記」は、患者の見当識の把握を助け、不安・抑うつ・PTSD症状を軽減してPICSを予防できる可能性があり、項目として残すこととした。
本研究では、I-CVIが0.78以下の項目のうち「ICU日記」を残し、他の7項目を除外しS-CVIを算出した。その結果、S-CVIは妥当とされる値を確保できており、PICSアセスメントツールは項目妥当性とツール全体の妥当性を確保できたツールと考える。

結論:PICSアセスメントツールはICUにおいてPICSの早期発見に向けて一定水準以上で把握できることに貢献すると考える。
また、専門家からの意見を反映させてアセスメントツールの修正が必要であり、信頼性を高める必要がある。さらに、今後はICU内において患者の観察を通して、アセスメントツールの実用可能性を検証することが必要である。