[O8-1] 集中治療室における終末期医療に関わる看護師の困難感 ~積極的治療から終末期医療への移行の時期に焦点をあてて~
Keywords:ICU、終末期医療、移行、困難感、看護師
【背景・目的】
集中治療室(ICU)は、救命の場であり積極的治療が優先されるが、死を迎える患者もいる。そのような環境下で2014年に「救急・集中治療における終末期医療に関するガイドライン~3学会の提言~」が出され、看護師も医療チームの一員として終末期医療の判断に関わる必要性が謳われた。本ガイドラインが出されて5年を経た現在、ICUでの終末期医療への移行に伴う看護師の困難感は変化したのかを明らかにしたいと考えた。本研究の目的は、ICUにおいて積極的治療から終末期医療への移行に関わる看護師の困難感を明らかにすることである。
【方法】
本研究は、質問紙調査法を用いた量的記述的研究である。対象施設は、関東圏内の2次、3次救急(ICUが6床以上)を行う計170の病院とした。対象者は、対象施設毎に看護師長1名と看護師4名(ICU経験年数3年目以上、かつリーダー又はプリセプター経験がある)の計850名である。調査期間は、2019年7月~8月である。質問紙は、先行研究を参考にし、研究者間での討議を重ねて自作で作成した。調査内容は、①対象者の属性、②ICUでの看取りの経験と困難感の有無と内容、③ICUにおける終末期医療への移行に関わる介入の経験の有無と終末期医療への関心の程度について多肢選択と自由記載である。研究依頼を看護部長に行い、承諾を得た後に看護師長経由で看護師に質問紙と返信用封筒の配布を行った。
本研究は、神奈川県立保健福祉大学研究倫理審査委員会の承認(承認番号第17-13)を受けて実施した。依頼文書には、研究目的、自由意思による研究参加、匿名性の確保、同意頂けない場合も不利益はないこと、公表の方法について説明した。なお、質問紙の投函をもって、本研究への同意とみなした。
【結果】
対象者からの質問紙の回収数は 206件(有効回答率24.2%)であった。ICUで患者の看取りを経験した看護師は199人(96.6%)であり、終末期への移行に伴って困難感を感じたことがある看護師は、189人(94.0%)であった。また、困難と感じなかった看護師は11人(5%)であった。困難感の内容(10項目の選択式、複数回答可)のうち、回答数の上位3項目は、「環境を整えるのが難しい」「患者の意思に沿った死の迎え方が難しい」「家族が死への受容ができない」であり、先行研究と類似した結果であった。一方、最も困難であった場面として挙げられたのは、「医師との連携がとりづらい」、「終末期への移行の時期の判断が難しい」、「家族が死への受容ができない」であった。この、最も困難であった場面の自由記載について内容分析を行ったところ、222コードが抽出され、<治療か看取りかの迷い><医療チームとの連携のしづらさ>、<最期まで治療が優先への疑問・戸惑い>、<看取りの為の物理的環境の不足>の4つのカテゴリーに分類された。
【考察・結論】
本研究の対象者である看護師のほとんどがICUにおいて看取りを経験しており、また、終末期への移行に伴って困難感を感じていた。この結果をガイドラインが出される前の先行研究と比較すると、困難感が増加傾向にあると考えられた。これは5年を経てガイドラインに基づき看護師も終末期医療の医療チームの一員として、治療方針の検討や意思決定に参画しているのではないかと考えられる。困難感の内容分析でみると、迷い、疑問・戸惑いなどの感情の揺れや、目指す援助のしにくさが挙げられており、これらに看護師が対処していくためには、終末期医療における思考・判断力を育成する環境の整備が必要と考えられた。
集中治療室(ICU)は、救命の場であり積極的治療が優先されるが、死を迎える患者もいる。そのような環境下で2014年に「救急・集中治療における終末期医療に関するガイドライン~3学会の提言~」が出され、看護師も医療チームの一員として終末期医療の判断に関わる必要性が謳われた。本ガイドラインが出されて5年を経た現在、ICUでの終末期医療への移行に伴う看護師の困難感は変化したのかを明らかにしたいと考えた。本研究の目的は、ICUにおいて積極的治療から終末期医療への移行に関わる看護師の困難感を明らかにすることである。
【方法】
本研究は、質問紙調査法を用いた量的記述的研究である。対象施設は、関東圏内の2次、3次救急(ICUが6床以上)を行う計170の病院とした。対象者は、対象施設毎に看護師長1名と看護師4名(ICU経験年数3年目以上、かつリーダー又はプリセプター経験がある)の計850名である。調査期間は、2019年7月~8月である。質問紙は、先行研究を参考にし、研究者間での討議を重ねて自作で作成した。調査内容は、①対象者の属性、②ICUでの看取りの経験と困難感の有無と内容、③ICUにおける終末期医療への移行に関わる介入の経験の有無と終末期医療への関心の程度について多肢選択と自由記載である。研究依頼を看護部長に行い、承諾を得た後に看護師長経由で看護師に質問紙と返信用封筒の配布を行った。
本研究は、神奈川県立保健福祉大学研究倫理審査委員会の承認(承認番号第17-13)を受けて実施した。依頼文書には、研究目的、自由意思による研究参加、匿名性の確保、同意頂けない場合も不利益はないこと、公表の方法について説明した。なお、質問紙の投函をもって、本研究への同意とみなした。
【結果】
対象者からの質問紙の回収数は 206件(有効回答率24.2%)であった。ICUで患者の看取りを経験した看護師は199人(96.6%)であり、終末期への移行に伴って困難感を感じたことがある看護師は、189人(94.0%)であった。また、困難と感じなかった看護師は11人(5%)であった。困難感の内容(10項目の選択式、複数回答可)のうち、回答数の上位3項目は、「環境を整えるのが難しい」「患者の意思に沿った死の迎え方が難しい」「家族が死への受容ができない」であり、先行研究と類似した結果であった。一方、最も困難であった場面として挙げられたのは、「医師との連携がとりづらい」、「終末期への移行の時期の判断が難しい」、「家族が死への受容ができない」であった。この、最も困難であった場面の自由記載について内容分析を行ったところ、222コードが抽出され、<治療か看取りかの迷い><医療チームとの連携のしづらさ>、<最期まで治療が優先への疑問・戸惑い>、<看取りの為の物理的環境の不足>の4つのカテゴリーに分類された。
【考察・結論】
本研究の対象者である看護師のほとんどがICUにおいて看取りを経験しており、また、終末期への移行に伴って困難感を感じていた。この結果をガイドラインが出される前の先行研究と比較すると、困難感が増加傾向にあると考えられた。これは5年を経てガイドラインに基づき看護師も終末期医療の医療チームの一員として、治療方針の検討や意思決定に参画しているのではないかと考えられる。困難感の内容分析でみると、迷い、疑問・戸惑いなどの感情の揺れや、目指す援助のしにくさが挙げられており、これらに看護師が対処していくためには、終末期医療における思考・判断力を育成する環境の整備が必要と考えられた。